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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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9/20

全滅よりも怖いこと

 聞きたいことがある。

 その一瞬の考えが、いろいろと判断を遅らせた。

 そして、何を言われたのか理解もしきれなかった。


「ベルテさん、なんともないですか?」

「…あ、何もないよ大丈夫…アクティブデコイまともな用途で使ってるの、初めて見ちゃったから」



────用語解説


アクティブデコイ


この(小説内架空の)ゲームでのみ存在するアイテム。

数秒の録画をゲーム内で流す機能があり、みためはキャラ1人を立体映像で投影する形となる。

ちなみにゲーム内通貨で使うには、とんでもなく高い。

…が、チーム戦チュートリアルでスターターの中に必ず1つだけ支給されるので、一度は全チーム手にするアイテムでもある。

チュートリアルで本来の指示通り使ってしまう場合、遊びで使う場合を含めると、本来残らないはずなのだが、みなと喫茶はチュートリアルが半端なままなので手元にあったのを、しくるが開始直前に発見した。


───────────



 実際驚いた。


 自分より先に、後ろにいた二人のマシンガンがデコイの映像を攻撃したのだ。

 油断しすぎと言われても仕方ない遅れだった。

 その一方、手ほどきをした店員さんたちがしっかり上達してくれているのはうれしい。

 ベルテも、バイトとして登録されてはいるが、ずっといる可能性は低いと思っている。

 その後を考え、他が伸びてくれるのを見るのは単純に喜ばしい。


 一方で。


「2階、逃げてる報告がないなら確実にいるから階段を…」

「ところがどっこい!」


 ベルテが言い終わる前。

 確実にいると思われていた建物の2階から、踏み込む段取り確認の前に何かが落ちた。


「離れて!!!」


 さすがにその判断は早い。

 爆弾、焼夷弾、発光目つぶしなど、いろいろなものが可能性で即座に思いつく。


 数秒後に出された正解は、煙幕。


 しくるが想に、投げ損ねても死なないし、上で間違って破裂しても下も巻き添えにできると渡していたブツ。

 上手い相手なら、これとタイミングを合わせて全体的な掃射をしてくるだろうか。

 しかし、落とした想は降りても来ない。


 代わりに。


「ベルさん矢筒ちゃんもっと離れてっ!」

「外かよっ!」

「こちらにも事情がありまして!」


 煙幕に合わせてやったのは、上の階から外に出ること。

 それを見せないように、想は、数発一気に煙幕を出している。

 ゲームの仕様上、壁も突き抜けて一部広がる煙幕が、遠くから狙いすましたスナイパーの目も一旦曇らせる。

 そして、出てくるほうに狙いを澄まして、しくるが奇襲。

 そのパターンもあると読めてもよかったが、油断したかもしれない。


「2面攻撃じゃないの!? その目立つ武器で!」

「そこまで息合わせる時間がございませんでぇ!」


 外からの、しくるの攻撃は、初期武器の中でも威力があるビーム式ハンドガン。

 多少他より威力はあるが、いかんせん射線そのまま表示されるうえに目立つ。

 しくるは、むしろビームかっこいいというロマンのためにあえて選んでいる。



 なお。


 煙幕に隠れられるように打ってはいるが、その外にいるグランデの人にはそのビームのせいで場所もわかる。

 グランデの店員1人にダメージは与えたが、そのせいで煙幕の中でも数発むしろ貰ってしまったらしい。

 時間で煙幕が消えるころには、グランデもみなと喫茶も1人ダウンという結果に終わった。


「ひとつ聞きたいことがあったけど、今じゃないわよね」


 ベルテが一応、なおも警戒しながら、しくるに近寄る。


「矢筒の蘇生、そこでしてあげていいよ」

「ベルさんお1人でいいんですか?」

「あと3人のはずだけど、また散ってるパターンなら鞍辺と手綱に建物の周りをもう一段集中して見張ってもらうだけだから」


 ダウン。


 このゲームの場合、即死までいかない超過ダメージが少ないキャラは一定時間ダウンとしてゲームにいることができる。

 その間に回復されたら復帰し、無理に動けば死ぬ。

 武器は使えない。

 グランデ側は、このダウンとそれを回復させる誰かが作業中となって一定時間戦闘できなくなるので、手薄になる。



 そこで、警戒を遠距離のスナイパー2人に任せ、自分も注意はしながら作業のサポート。

 ついでに…。


「……あなた、アクティブデコイの子だよね、ずいぶん手慣れた真似できてたじゃない」

「好きなことには、全力できるタチでして」

「でさ、あとのお仲間はまとめて呼べない?」

「いや、呼ぶまでもなく来ますのでじっくり待っても…」

「そーは、行かないのよね、ワッチ時給じゃないから~」

「いやぁ、気絶までゆっくり話相手してくれてもいいじゃないですかぁ」

「な・め・ん・な」


 ダウン中のしくるの眉間に銃をあてるベルテ。


「さすがタレント、笑顔のままでえげつない」

「早く帰ってお風呂したいのと、入りながらネトゲしたいのよワッチ……わかるでしょ~?」

「私たちも、あまり褒めてくれないみたいですねぇ、残念だなぁ」

「だって君たちに減らされてないもんなぁ、実際のところ」


 そろそろ撃っとくか。

 こういうタイプは嫌いじゃないが、しょせん回復作業が終わるまでの気晴らしだ。


 が。


「きゃぁぁぁぁ!!!」

「ベルテさん、手綱が攻撃されてます、ちょっと、え!?」

「鞍辺さん!?」


 通信で聞こえる悲鳴。

 何があったのだ。


「こっちも報告きこえましたよぉ、スナイパー、きっちり頂きました…ごちそうさまですぅ」

「……おまっ!?」


 二人のスナイパーがほぼ同じタイミングで通信不能。


 まさか、やられてる?

 別行動組がいて、それに?

 どうして場所が、それぞれ離していたはずなのに両方やられるのか。


「うちの風見鶏をそのまま撃ち殺したのが悪いんですよぉ……死亡時、このゲームノックバックけっこうしますからねえ」

「それか!?」


────用語解説


ノックバック


主にアクションゲームでよく使われるゲームの仕様。

ダメージを受けるときに、受けた方向と反対の側へ少し押し出される現象を言う。

体当たりをされたとき吹っ飛ぶことを想像すると、理解が早いかもしれない。

この(小説架空の)ゲームは主に死亡時にはダメージによっては大きく吹っ飛ぶ仕様がある。

しくるは、玲の死んだ状態を観察し、吹っ飛んだなら逆方向にスナイパーがいると方向だけを確定させたのだ。

もちろん、真のスナイパーは一度目的を終えるごと場所移動するものだが、それが指示されていなかったので今回のようなことが成立してしまったのだろうか。


───────────



 畜生。


 そういう勢いで、ベルテはそこから即、しくるを撃ち殺す。

 だが、さらに次のタイミングで…。

 響く銃声が聞こえた。


 ターン、ターン、ターン。


「矢筒!」


 動けないままで蘇生作業していた2人が、遠くから撃たれて即死。

 なんてことだ。

 スナイパーを仕留めてすぐにライフルを取って、動けないやつを正確にスナイプしたやつがいる。


「あ゛ーしょうがないなぁ」


 ベルテは建物の中に侵入、そのまま2階へ。


「……あ……どしよ…」


 どうしようじゃねえよ。


 真下でずっと戦闘しているのに、何でメイドがほっこりしたような無警戒で座っているんだ。

 銃を構えてもいなかった想は、そりゃもう瞬間でヘッショ食らった。

 

 

 


──────────────────────


 

 

「こっちの方向にまっすぐって言われただけだったけど、敵がちゃんといてよかったぁ」

「今回頑張ったねぇ姫乃さんは」


 変わって、みなと喫茶の生き残りはこの2人。

 ダメ元で煙幕に紛れて建物から脱出してから、スナイパー探しのため突進した姫乃。

 もはやコードネーム呼びの「ユリ」なんて忘れられているらしい。

 ちらちら隠れながら、遠くから見張る2人の監視を逃れたのは、それだけでえらい。


 よくやれたものだ。


 そしてもう1人。

 ずっと別動隊として、レーダー片手にスナイパーを捜して狩る目的で回り道を続けた生き物。


 羽輝である。


 大体同じタイミングで仕留めたのは偶然というほかない。

 聞くだけ色々な内容は聞いていたので、仕留めてすぐスナイパーライフルで止まってるのを狙撃。

 ひとまず逃げ勝ちできる今にもっていったのも、羽輝だ。


 このまま、姫乃だけ限界範囲ぎりぎりに待機させてスナイパーの弾が切れるまで相手を苛つかせるか隙ができるのを待つという手もある。


 あるが…。


 ゲームをリアルタイムで公開してる最中に、ただ時間かけるのもなんだ。

 あと、相手はスナイパーの位置を配置指定してわかっているのだろうし、あまり時間稼ぎにはならないだろう。



 と、いうことで。


「んじゃ、できれば挟撃って感じで突っ込みますか、姫乃さん」

「まってましたぁ!」


 割と迷わず、そのまま突っ込む。


 一応、たまに隠れながらこそこそ近づいているつもりだが、全く相手の動きが見えないのが怖い。

 根負けも勝負のうちと耐えられるのが、強者なのだろうか。

 そのまま建物の壁にたどり着いてしまった。

 ふたりとも。


「…じゃあ、できれば同時には狙えないようなタイミングで行きたいね…」

「じゃあわたしがさきー!」

「ドアホー!?」


 姫乃が軽いノリ出入り口にすっと踏み込むと、案の定一撃で終わった。

 しっかり待ち構えているのは、想定済み。

 その姫乃の陰から…。

 いや、完全に死体を盾にした形だが、羽輝は一気に踏み込む。

 




「…ひとつだけ、聞きたいことがあったんだけど、今いい?」

「恋人がいるかどうかなら、今、不自由してないからお断りしようかしら」

「悪いけど…スマイルとジョークは今うちのメニューにないのよね」


 睨みあう。

 お互い、最高の至近距離で、お互いの眉間に銃口が突き付けられていた。


 アニメかドラマくらいでしか見ないようなポーズで、お互い強く睨んだまま、交わされる言葉だけは軽い。

 まぁ、一度離れようという気持ちにならないことだけは、わかる。

 アバターを通して、ゲーム越しに見る顔同士だが、わかる。


「「それじゃ、さよなら」」


 重なる銃声。

 おそらく、同時。

 そのままゲームセットの表示があった。

 

『決着ぅぅぅぅ!!! どうやら運営判断的に、これは両社同時と発表されそうです!』


「確実に勝ったんだけど」

「なんかズルされたきぶーん」


 別の場所で、当の2人はお互いに悪態をつく。

 しかし、実況はなかなかの盛り上がりだったらしい。


『先日、わーたくし自身が、オフィシャルズ含め完全決着しかありえないと申しましたが、今まさに、システム上を確認しても同時と出たようでございます! つまり引き分け!』


 実況も力が入る。


『この大会始まってから、史上初めて!! 同時KO決着という奇跡の場に立ち会われた皆様にも、参加した皆様にも、私は惜しみない賛辞と謝意を! おくりた!い!!』





「どうでもいいですが、投票でこれ…優位になってる気がしませんわ…どうしたらいいんでしょう今日の努力は」

「努力はいいけど、当たり前に試合の最中までずっと店にいようとするなよ…近くに部屋借りたんだろ?」

「まぁまぁ、念のためですし、泊まるのはここでもいいので」

「かえれ」


 已御がヘッドセットしている間に異様に近づいているのを察して、押しのけるのに必死でゲームがすでにどうでもよくなった羽輝。

 虫の居所がタダでも悪いのに、こんなのに抱き着かれて終わるのは絶対に嫌だ。


「あーのぉ、已御さん…でしたっけぇ」

「助けてよ姫乃さんーっ!」

「…うてちゃんの薬指は、前から私のものですよ?」

「お前も今日から私の横で寝ないで! 怖いよ!!」


 今日のすべてが吹き飛ぶホラーを羽輝は今、味わった。

おそらくベルテの出番はここまで。


JKたちは『AHO』なことをしています

という自分の小説からのゲスト出演ですので、もしこのキャラにご興味があれば、そちらを見てくれるとさらに嬉しいです

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