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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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8/20

vs グランデ

「安置確保しましたー」

「ピンお願いしまぁす! 1人は周囲警戒をー!」


────用語解説


ピン


FPSまたはTPSで、複数人でマップを共有しているゲーム限定の機能。

無いゲームのほうが多いかもしれない。

ゲームによってはマップを表示して、目的地または非常時の集合場所などを指定して共有できるものがある。

この場合、自分の位置もまず表示されるはずなので、迷子対策としても利用される。



───────────



「ザッソウ、上に上りますよお」

「撃たれてないのを確認したら、すぐ戻っていいです」


 いつもと違う空気。

 いつもと違う行動。

 いつもと全く違う指示の飛ばしあい。


 初めてセオリーなるものを知っている人間が参加したのだ。

 そうもなろう。


「全員揃いましたね、それで今回、IGLはどなたなんですか?」

「…えっと」

「なにそれ…」


 ?

 みんなにこのマークが点灯しているのが見える。


「…あ…その…指示役とかリーダーは…まとめは、誰なんでしょうか」



────用語解説


IGL


インゲームリーダー(In Game Leader)

ゲームの中での、要はまとめ役。

戦術や方針が複数がぶつかるタイムロスをなくするなどの様々な要因で、指示が分散しないようあらかじめ役割を確定する場合、メインであるリーダーをこう呼ぶことがある。

チームで一番偉い人などとは違う場合もあるため、ゲーム内のリーダーと固定して呼ぶものだと思われる。


───────────


 言葉を探して、なんとか通じる努力をする、しくる。


「おらんが」

「いや、いないってことはないでしょ」

「居ないんだよ、とりあえず思い思いにやって、まとめと内容把握して回すのが想さん」

「えっ…」


 羽輝の語る現状に、頭が理解を拒むような気分になる、しくる。


「だいたい、ぱっと当てられるのが羽輝ちゃんくらいだから、あっちこっち飛んで生きてたらラッキー程度に相手の居場所を探りに打たれるまで突っ込んでみる、あとは倒せたらすごいうれしい…っていうのがいつもの私たちだから」


 想が当たり前に言い放つ。

 捨て駒って意味ですけど、大丈夫ですか。


「…なるほど……生き延びる手段を突き詰める気すらなかったんですね…」

「不意打ちにも強いから店長がそれで負けないなら、サポート重視でよかろうもんってなったよね、あれで」

「なのに持ってるのハンドガン…いや、元からレーダー持てるのは初期ガン限定なのか…腑に落ちない…」


 何で勝ててたんだよこんなやり方で、と、叫びたくなる、しくる。

 言えるわけはないが。


「とにかく、できれば拾ったものの融通をしながら全員生き残れるやり方も目指してみましょう」

「急にやり方変えると、むしろ負けが込んだりしません?」

「今回は、そのやり方じゃまずだめです…相手がどんな距離からでも狙おうとしているのがわかっていますから」

「詳しいんだねえ…」


 姫乃も玲も、謎に説得力があるしくるに興味しきり。

 それがどこから来るものかというと。


「出てる試合の録画すべて見返しましたが、スナイパーふたりを進ませるのに全力で前に出て、中央近くに陣取ってから俺のターンしてきます」


────用語解説


俺のターン


いわゆるミーム。

優勢の時、または時間の猶予が認められているときに自由に望むことをする、または展開する様子を言うらしい。

「ずっと~」「まだ~」などと合わせて使い、自分や相手がしたい放題の行動をしていることを茶化すのに使われるようだ。

語源はカードゲームの世界らしい。



───────────



「…用語が多いなあ」

「調べてるのか…」

「30分かからないくらいで、見つかったら即時で勝負かけられますから短期決戦のつもりで早めにこっちも位置取りしないといけません」


 ガチ勢っぽい言葉も端々に見えてくる。

 いつもやる戦術、そして特定の相手に対する研究。

 こう聞くと、相手もそんなことをしているから強いのかもしれない。


『会議中失礼、もう2チーム潰されましたから音くらいは警戒してくださいませね』

「已御さま、御忠言感謝でっす!」


 もう、相手の配置は終わったな?

 しくるが何となく確信した。

 録画によるパターン分析を重くとるなら、あとは遊びでやってる他チームを虫のように排除するだけ。

 今回は合計6チームの混戦だったはずだが、もうすぐみなと喫茶と敵認定しているそのチームだけになるだろう。



 コンカフェ グランデパーチ i.e.



 スペースを詰め込まない踊り場と吹き抜けのような内装が目を引き、予約必須となっている名店である。

 実際には割と普通の二階建てなのだが二階大半が透明床。

 だが店員用の透明床は液晶を挟み込んでおり、センサーで店員の立つスペースは店のロゴ表示となって下からは広く隠される。


 でも下からとても見たくなる。


 デザートも溜池山王のスイーツ専門の系列店からの仕入れで、かなり美味。

 参入してから短いのに一気に知名度を上げているのも頷ける。


『はぁやい!!! 接触したとたんに蹴散らしてしまったグランデパーチ!』


 中継のうるさいあれが、已御の通信越しなのか、みなと喫茶にも入ってくる。

 司会からすると、やはり有名で強いおみせの行動を追いかけるのが第一なのはわかるし、見どころも多いのだろう。


『もはや場を整えてメインディッシュを並べるような名店のおもてな!し!! 無傷なのは、お客様、みなと倉庫のみだぁ!!』


 向こうにも意識されてるのか?

 そう考えるのは、思いあがりすぎだろうか。


「あれ、已御さまぁ、今のナレーション聞くところですと、グランデ減ってます?」

『初期6人フルだったのが序盤の突撃で1人減ってますわね…前衛の鞘小路さんという方で、いまフォーメーション練り直し中みたいですわ』

「ありがとうございます」


 スナイパーの影響がないところが選べれば人数有利。

 ただし、タイマンで相打ち狙いできる戦力はなし。

 元プロ、ベルテは前衛側なので、人数は関係なく踏み込まれたら先制で終わるだろう。

 どう考えても、対等に勝負できる、そして勝てる計算ができない。

 たとえ対等に近距離の打ち合いで制圧できても、相手はまず、スナイパー付き。

 残り1でギリギリ勝利なら、その瞬間狙って終わりであり隠れても人数で勝利。

 グランデ側だってスナイパーから完全に狙えないところにホイホイ来るわけはなく、むしろ誘い出そうとするだろう。

 援護射撃できるところ、もしくは狙撃で脅しながらその点を面にすべく制圧するのはセオリーだ。


 ならば…。


「うわっいてっ!」

「え!?」

「見つかったかも、なんか撃たれたよ!」

「いや、いう前に下がって!」


 ゲーム内で呼ぶところのザッソウ、つまり玲の声に不意を突かれる。

 隠れていた建物の上に登ってまず様子見ると言ってたが、そういえばそこから姿は確認していない。


 まさか?


「どこから来てんだこれぇ! あっ私だめだ!」

「アホーーーーー!!」


 ずっと屋根にいたな?

 そんなのは絶対見つかるだろう、それ!


「…も、もう人数有利もない…」

「元からなくない!?」

「スナイプ担当が寄ってこない室内戦に持ち込めたらあったんです!」


 とりあえずずっと待機になって横にいる想が突っ込む。

 たとえ人数が倍であっても、有利になるかどうかには全く関係はないのだが。


『ま、落ち着きなさい、しくる』

「は、はい已御さま」

「今、ライフルで吹っ飛ばされた玲さんが落ちてきます」

「…でしょうね」

「玲さんは、その円錐の屋根のてっぺんに風見鶏のように乗ってました、あとはわかりますか?」


 そんな棒立ちしてたのか…。

 てっぺんに。

 人数は気持ち的な有利でしかないとしても、スナイパーの位置さえわかれば…。

 そして、スナイパーに1人見つかったなら、もうすぐにでも残りが踏み込んでくる。

 そいつの角度と位置が、1人だけでもわかるなら…。

 しくるはじっとり汗をかいて、1秒の思考を可能な限りめぐらせる。

 角度。

 狙われてやられたのが今。

 位置。

 今落下してきた味方…。

 

 そうだ。

 

「指示を出します、突拍子もないですが答えずに実行お願いします」

「あい」

「りょかい」



──────────────────────



「ごぉめんあそばせー!」


 蹴破られるドア。

 みなと喫茶の陣取った建物に入ってきたのは、もちろんグランデの制圧担当。

 開いたかどうかを確認したら即建物の中にマガジンひとつぶんぶち込む。

 屋根の誰かを仕留めて、すぐ建物を放棄するかと周囲に狙いを定めたが出る様子がなく、待ち構えるのだと判断。



 殴り込みに要した時間は30秒ほどだろうか。

 少し長くかけてしまったかもしれない。

 しかし、基本的にはゲームからして素人が集まるカフェ店員たちのゲーム。

 気は抜かないが、緩くなかったことはない。

 全員FPSガチ勢を揃えるのは、このくくりで不可能だろうとも思っていた。

 グランデに引っ張ってこられたベルテは、手抜きはしないが時間をひたすら突き詰める別種の遊びを自分に課す程度には舐め腐っていた。


「反撃なしです」

「2階に居るか見えるか、一応鞍辺に確認してね」

「はい」


 実に徹底している。

 ベルテの急ごしらえながら練習で持たせた役割は、しっかり機能している。

 IGLの後任として指導した鞘小路が真っ先に今回倒れたのだけ残念だったが、つぎはやれると思っていた。


「ほな、2人はすぐ入らないで私の左右見て何かいたら攻撃で」


 ベルテが言い終わらないうちに建物の中へ突撃。


 すると。


 物陰に何かが見えた。

 反撃がなかったけどビビッて棒立ちだったのだろうか。


 だが、違う。

 視認した「それ」は、見つけてすぐに、言葉を発したのだ。


『おかえりなさいませご主人様、こちらみなと倉庫喫茶、食品おとり口でございます』


 頭をすっと下げる、それは、しくるである。

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