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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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4/19

メイド目隠しコース お色気添え

「…あぁのお……この状態なんですが……」

「ウェヘ……なんでしょう」


 ウェヘヘって言ったな今?

 困惑した阿田葉羽輝の声、そしてもう一人女性の声が、しばらく狭い部屋でずっと交錯している。

 いや、そういう仮定で、実際は場所は不明であり、会話と言えるキャッチボールは一度として成立していない。


 どういう状況なのか?


 羽輝にわかるのは、今がゲーム中であることくらいだ。

 マウントディスプレイではどう見渡しても暗いままで、何してるのかわかったものですらない。

 横に出ているログ上では…

 



 接触ダメージ  0

 移動が制限されています

 移動が制限されています

 移動が制限されています

 移動が制限されています

 移動が制限されています

 敵対対象からのターゲットロックを検知しました

 接触ダメージ  0

 接触ダメージ  0

 接触ダメージ  0

 移動が制限されています

 移動が制限されています


 といったログが続いている。


 一応、説明は求めるべきだろう。

 可能なら運営に……。



 しかし、戦闘中として周囲は普通に進行している模様。

 オペレーターからの通信すらないのも異常とはいえ、そこはそれ。

 ジャミング装置のような通信遮断もアイテムで買えるのは羽輝も知っている。

 だがそれが運営へのバグリポートなどへも通じたら、そりゃおかしいわけで。

 異常はないとして無視されてる可能性が高いわけだ。


 なんだね、ずっと暗いままになる機能って。

 拷問かね? ゲームという名の新しい。

 いやなんですが、そんな見世物。


 そう、口には出さずに毒づく羽輝。

 何か微妙に息遣いのようなものが聞こえる気がする、この暗い中で迂闊にいろいろ一人会話はしたくない。

 なんとなく。


「思った通り」

「なんて?」

「何度見ても、思った通り、完璧なんじゃないでしょうか?」

「何を見て言ってるのか、わたし今、全くわかってないよお?」

「あぁ、失礼しました、私だけで楽しんでいるのは、楽しくないのですよね…ウェヘヘ……」

「だからその笑いナニィ!?」

「……あぁ、いえ……あなた様と対面で勝てると思っていないので、わたくしたち、最初に催眠ガスを最初に使いまして…」

「は?」


 そういえば、ゲーム開始から数分。

 打ち合わせで場所確認などを悠長に毎度していたあたりで急に暗くなったのを記憶している。

 羽輝たち、つまり、みなと倉庫の面々が移動する前にガスを使われたことになる、のだろう。

 おそらく。


「…そういえば、ゲームの仕様を眺めていた時、想さんとそれ見つけて笑ってたような気がするなぁ」

「いま、ほかの女の話はしないでもらえると嬉しいです…」

「あ、ごめんね」


 何を言われたんだ今。

 羽輝には理解しがたい。



 しかし…。


 笑っていた理由が思い出せないのはなんでだろう。

 使うことはないねと、想が言っていたことを薄ぼんやり思い出しかけたが、あいまいだ。

 そして、それと同時に、知らん彼女が言うことがすべて真実だとして、だ。

 見えないけど近い範囲でいるのではないのか?

 うちのチーム全員が。


 羽輝はそこがむしろ気になってしょうがない。

 それで何も話さないのはどうなのか。


 あと…。


「それで君は一体誰なんだっけ」

「已御と申します…やみちゃんと一度呼んでもらえると……ウェヘヘヘ」


 邪悪すら感じる笑いには不安しか感じない。


「んじゃあ、やみちゃん、私はさぁ、全く今の状況読めてないわけですよ、かわいそうに思わない?」

「……あぁ……! 幸せです…呼んでいただけて…」


 聞いちゃいねえ。

 何をしているか羽輝には全くどうでもいいが、状況と仲間については違う。


 当たり前だ。


 今回のゲームが終わるまで知らなくていいだろうと放置するなら、もう装着ディスプレイ外していいぐらいにヤル気が失せているようなもの。

 羽輝自身は、限りなく絶望的でも自分が生きてる限りは捨てる真似はしない主義。

 ならば、黙って待つのにも限界はあるのだ。


「…あと5分で、きっと皆さんも楽しくなれますので、大丈夫ですよ」

「いや、楽しむじゃなく、今どうなっているかをだな」

「それはそれで、お楽しみですウェヘヘヘヘ」

「だからその笑いって素なのかどうなのかも、だなぁ?」


 時間で、と言われても困る。

 手遅れの可能性のほうが高く思えるからだ。

 そして時間を指定されると、ことさらに思惑を感じて…焦る。


「なんだろうね、この腑に落ちないような、好きなことされてるような違和感ときたら」

「大丈夫です…こわくなぁいですウェヘヘヘヘ」


 先に進もうとしない会話。

 壁かボタンを押すと録音を流す袋のおもちゃとでも話しているんだろうか?

 羽輝はゲーム中とはいえ、機嫌が少し悪くなりそうなのを抑える。


 ネット公開というのはどれでもそうだろうけど、全世界中継で公開されている都合上、人をただ不愉快にさせる行動は避けるほうがいいという自制心くらいはあるわけで。

 焦り、イライラ、暗いという不安、相手の不気味さ。

 こんな苦行は、羽輝の人生で久しく味わっていない。


 そこで。

 

 トントントン。

 羽輝の肩に触れられる感触がある。

 ゲームの錯覚ではなく、明らかにリアル的なもので。

 とっさにミュート。

 


────用語解説


ミュート


主に声をゲームソフトの仕様やPCマイクなどの設定によってOFFにする、またはしていること。

一時的なOFFかどうかの区別はなく使われる。

全体会話を使用するゲームでプライベートな会話を一時的にしたい時、急に聞かせたくない音が入りそうな時などには、宣言してミュートするといった行動がよく見られる。


───────────


「……んぇ、想さん?」

「あ、大丈夫そう?」

「ミュートはしてるんで、ちょっとなら」


 同じゲームをしている最中のナノハナ…儚樹想。

 ゲーム用のヘッドセットを少しずらして、羽輝は中をすぐ確認できるような形で外を確認する。


 不思議な状況である。

 ゲーム中に当たり前みたいにラフに接触する、しに来る違和感。


(ゲームのマナー的に、内外で好きなように使い分けながら会話するのは避けようって言ってたの想さんのほうだよね…)


 そんな小言も言いたかったが、羽輝はとりあえず抑える。

 表情も、行動も、なんかおかしいのだ。


「あーちゃんさ…」


 割と使い分けているようで、仕事がらみで羽輝ちゃん呼びとあーちゃん呼びは想の態度も明確に違う。

 上下を考えない友人の距離だと、あーちゃんである。

 そこはいいのだが。


「聞く範囲だと状況全く知らないよね…気持ちとしては教えないほうが友達として正しいって気がするんだけど…ね…」

「な、何その語り?」

「今の私たちのゲームの公式配信、いつか見ることになるから知らせとこうと思って…」

「まぁ見るけどさ」


 想の手に取ったスマホを覗いてみる。

 ちょうど、自分の試合が映っているのだろうけど、音も気にしているらしく音は消したまま。

 撃ち合いらしいものは、今流れてないらしい。


「………な!?」


 そのぶん、よりアップで自分がずっと映っていた。

 ゲーム用に作った、いわゆるアバターなんだと理解はしているが。



 なんだこれは。



 遅延があるから、実際のところ羽輝の数分前の反応や言動が流れているのだが…。

 


────用語解説


 遅延

 

 ネットでの配信というものは電話などによる通話と違い、多数の視聴者に映像をお届けするために複数のサーバーを経由したり、大本の映像のエンコードの都合により発信元とタイムラグなく映像が届けられるわけではない。

 有名な大手などでは生放送とはいえ最速でも5~10秒ののラグ、または遅延があると言われる。

 ゲーム大会の生放送などでは、それに加えてさらに実際と数分、リアルタイムとずらして流れるということを意図的に行うことがある。

 これはリアルタイムの多数の視点をゲーム中の参加者や視聴者が見ることで本来ゲームの中で得られない情報を得る、伝えるという、場合によっては違反と定義される行為の類を防止するために行われる措置である。

 この場合は、だいたいは発信元から「〇〇くらいの遅延(配信のラグ、時間差などの違う用語も使用される)があります」等、事前通知が行われる場合が多い。

 なお、ラグという用語についてはゲーム内の反応に対しても使われる用語であるため本項とは別にまた出てくる機会が発生するかもしれない。


───────────

 

 羽輝が見てしまったその配信…だが。


「エロ動画サイト……か?」

「いや本放送ですよ」


 自分が映っているし、自分が言ったことも覚えているからわかるが…。

 それを自分が言いながら。

 



 腕を縛られ。


 吊り下げられて。


 スカートはずり降ろされ。


 脱がされかけのメイド服の腋やスカートを別のメイドが丹念になでたり顔をうずめたりしている。



 えっ、何?


「ゲーム、こんなことそもそもできるわけないのでは…」

「吊り下げあたりはアイテムでしっかりできるの売ってるんだよ…誰も買わないけど」

「……ごめん、いろいろ考えが落ち着くまで情報増やさないで」

「わかるよ」


 想が優しくしているのか、内心笑っているのかも判断ができない。


 そもそも、本当に。


 撃ち合いなど対戦ゲームをする話で参加したのに、なんで私は性的搾取されてんだい今現在。

 それくらいしか、羽輝の理解できる範囲ではない。

 そして、そんな仕様ないはずのことがどうして…。

 とはいうが、実際のところ、ダメージで彼女たちの着る服がボロボロになっていくシステムはのちで使われれるために作られていたりするので、メイド服をいじったりすることや「服の下の中身」があるのは仕様だったりする。


 知らされてはいなかったが。


 …で、羽輝は色々な脳内の迷子の末にたどり着いた考えがある。


 そうだ。

 さっきまでずっと話していた、あの笑いの女、これじゃないか。

 許すのか、これを。

 そこだけで、十分である。

 今は。




「よう」

「ウェヘヘヘ……マイクちょっと使ってないのさみしかったですが、リアルご事情は大丈夫でしょうか…」

「悪いけど理解…できたわ」

「あらあら、ばれてしまったんですかウェヘヘヘ…まぁ、あと…20秒ほどですけど」


 そして、今まであまり気付いていなかったが、横にタイマーらしいステータスが出ているのを羽輝は知る。

 もうカウントダウンするまでもない。


 ゼロ。


 視界が復活する。

 それに合わせてキスしてるのかというくらい、視界にドアップで見える、声の主。

 初めてそのものをゲーム内で見ることになる、已御。

 羽輝はとりあえず無言だ。

 手にあるハンドガンは仕様上取られてないのを確認し、想に知らされている特殊限定アクションで縛られている頭上の縄を切る。

 そして、抱き着いている已御を確認。


 即ヘッショ。

 


────用語解説


 ヘッショ

 

 ヘッドショットの略称。

 そもそもヘッドショットとそのまま呼ぶほうが多く、HSと略して書かれる場合もある。

 胴体、足など個別で判定を別にしているゲームがFPS、TPSでは多く、特に頭はピンポイントにそこに当たるとダメージが高いよう設定されることが実に多い。

 FPSのお約束に近いものとなっているといえるかもしれない。

 過去には超有名ロボットが題材のFPSゲームにも一律で頭が急所とされるものがあり話題となった時期があるようだ。


───────────

 

「あぁ、素晴らしい…」

 満足げに、なんかきれいに死んでいくようにすら見える已御。

 勘違いするな、お前がやったのは淫行だ。

 そうする間に、周囲には、同じように睡眠させられて放置されたみなと喫茶の全員が起きて、そろっていた。

「…確認するまでもないと思うけど、右のゲージを確認して早めに解決すること、わかったね」

「ほーい」

「みゃー!」

 口頭で確認。

 ついでのように、ユリ…姫乃以外が、死体である已御に数発弾丸を叩き込む。

 死体撃ちだ。

 

────用語解説


 死体撃ち


 もう反応がないとわかっている、反撃不能な敵の成れの果てを、効果がないとわかっていて射撃、または攻撃すること。

 禁止と明記するところもあるくらいには、煽り行為、ノーマナー行為として周囲に悪感情を抱かせる劣悪行為とみなされる行動。


───────────

 

 なお。


 何の確認をしたかと、この睡眠ガスがなぜ多用されないかの解説をしたい。

 かつてみなと倉庫のメンツでも、あるのを確認して笑っていたという話の説明だ。

 チーム丸ごと動きを止めて反撃できないアイテムなど、バカみたいに高くても反則的に強いんじゃないか?



 そりゃ強いのだ。


 …が。


 このゲーム内では、この睡眠時間は最大20分と明記されている。

 ゲーム中の試合終了20分前になると使用できなくなり、効果は延長できない。

 ゲーム終了10分前には睡眠効果は必ず解除される。

 移動は一部(この場合は使用された吊り下げ用の縄を指す)を除き不可能。


 それと、下に書かれているもう一つの備考。



 使われたプレイヤーはその時点から「40分の完全無敵時間を得る」。



 つまり、動きが止まるのはいいが、最低でも10分、使われたみなと喫茶の面々は…。

 攻撃だろうが落下だろうが移動制限エリア判定だろうが…。

 すべて無効で暴れられるのである。

 さらに時間が経過して戦闘エリアそのものも縮小し、逃げ場も減り続けている。


 これは、ただの使用者がペナルティを食らう足かせアイテムでしかないのだ。

 罠といってもいい。


 もちろん已御は納得のうえ使っているだろうが。


 そこからは、怒りの力というものが嵐のように降り注いだ。

 ほか3人が当てにくく手ごわいと言われたところに羽輝がいって即殺。


 羽輝以外は独自に単独斥候状態で倒せたら倒すを念頭に動き回り、仕事を実に効率的にこなす羽輝。

 無敵時間が終わる前に、まごうことない完全制圧を成し遂げた。


 結果…。

 ステルスレーダーの使用制限が、もっと強めにナーフされた。


────用語解説


 ナーフ


 ゲームの開発、管理側から、(主に)仕様変更の通知とともに機能の縮小、弱体化などを行われることをこう呼ぶ。

 ネットワーク接続可能なゲームでのアップデートとともに起き、だいたいは武器等に対してよく使われる。

 バランス調整により不当と言われるほど強い武器を取り上げる強制的な変更と捉えるプレイヤーからはこの用語とともに有らん限りの怨嗟がぶちまけられることがある。


───────────


 最低の行動をしたと、みなと喫茶も相当に界隈であとから言いたい放題になるかと一部には心配されたが…。

 元々の人気と知名度が伸び悩んだためか、それほど影響はなかった…らしい。

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