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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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水着回と温泉回と正月が一度に来たみたいだぜ -日常 そのあと-

「私…生きてたんだな…生きてたんだなぁ…」

「店長、何その感想」


 想、玲、姫乃。


 少しづつ、この薄給の中で余裕のあるお金を出し合うとして。

 何かプレゼントか、気のすむような旅行でもできるかと数日話し合った結果。

 機嫌がずっと悪い羽輝の希望を叶えたうえに、満足が得られる何かを用意するのに無理があると判断。


 しょうがないから、出た提案から可能な妥協点を求めて検索。

 定山渓はあきらめて、〇いねプールに急遽、社員旅行となりました。


 帰りに朝里もあるからついでで日帰り温泉もできるだろう、たぶん。


 と、いうことでやってきて、水着レンタルはないらしいと慌てて已御にお金を借りて駅前で買って。

 こうなりました。

 ちなみに、これだけ大人がいて普通免許所持者ゼロだと発覚しました。

 羽輝が持ってるのは二輪だけでした。


 …今更だが、どうしたらいいんだこれ。


「言うと恥ずかしいんだけど…スライダーも流れるプールも初めてなんだ…」

「わたしもなんだ…」

「わたしもー」


 おそらく已御以外、みんなそうなんだろうと伺える。

 近いようで、特に興味がないまま一生使わない施設なものって多いのだろうなと思わせる。


「でも、私はスライダーやんないよ」

「なにゆえ!?」

「何かあったら怖い…」


 想は腰のヒモをちょいちょい触って言う。

 返すことを期待しないことを条件に已御の指定をある程度聞くと言ったら、全員ビキニにされたからだ。

 ちなみにきついけどこれがいいと学校で使う水着を所持していた玲はとんだ裏切り者である。

 そこを怒る誰かなどはいるはずはないのだが。



 思い思い。

 そうやって楽しんだのが、楽しみすぎて閉園までしっかり過ごしてしまった。


 なお、一番用心していた想はレンタルの浮き輪でぷかぷか漂っている間にいたずらでもされたのか、帰り際にプールで裸を晒す醜態を演じた。

 

「撮影された? ねえ撮影された?!」

「さっきから同じこと言ってるけど心配ないよ、ネットで晒されたりしないって…想さんはまったく」


 すっかり機嫌を直した羽輝は、想をからかう余裕くらいは出たらしい。

 温泉前に軽食している時点で何度目か知れないほど繰り返されたが、場は明るい。

 なんだかんだ言っても、友人として羽輝のために計画して資金も出し合ってくれた一日だ。

 ドローン含めて撮影のためならトラブルも辞さない已御の空気感に少しピキッとした人間が居ながらも、なんとか抑えて楽しくしなくてはいけない。


 存在感がない時の已御は、ないのではない。

 何かしているから、こちらからは見えないのだ。

 たまにその、別の何かがこっちに関わりが大きすぎて意図的に消したことも、あるのだが…。

 どちらにしろ、こちらが操作できない深淵であることだけは確かだ。


 この食事でも、おそらくは自分用の食事は決まっているのだろう、飲み物以外注文しやしない。

 そして、水着は切るがプールサイドでずっとスマホし続けるだけだった気がする。


 それはそれとしておいて…。


「予定時間からだいぶ過ぎてるけど、風呂だぞヤローどもお!」

「っしゃー!」


 当初「脱いだり触ったりしないと機嫌は直らないのか?」という点からスタートしたこの計画。

 ならみんな平等にお風呂に。

 なら気分転換も兼ねて旅行に。

 なら滑り台で涼しく。


 色々と混ざって、平均値と予算の限界をプラスすると、こうなる。


 なお滑り台は目的と何の関係もないが、どこから出たものか。

 ちなみにこの温泉、ホテルの当日日帰りでも使用できる施設ということ。

 玲の周囲から聞いたという評判的にも、料金以上にかなり満足度は高い。


「浴場以外この時間でも貸し切りみたいです! なんて幸福感!」


 しくるの心からの喜びの声が沁みる。

 そこから離れたとある部屋では。


「サウナ別料金する所がほとんどないんですもの、この地方は商売っ気がないといいますか…」

「むしろ聞いたことないが、別料金って…」


 にっこにこの已御と対面で、できるだけ丸くなる羽輝。

 理由はまぁ、顔を見ればわかる。

 よだれ垂らして見るな、サウナくらいおとなしくしてろ。

 羽輝も、公衆のネットであれだけされて、よくここまで許した雰囲気で接することができるようになったものである。


「…とはいえ、こんな小市民的な日帰り旅行によく一日つきあったね、已御も」

「羽輝さまがいるなら当然です、永久保存版ですから」

「…おかしな単語が混ざったな」

「あと水着の代金は羽輝さまの着たそのままの水着を買い取ることでトントンなのを飲んでくれるなんて、玲さんは値段交渉もとても良心的で…」

「玲ちゃあん……ちょっと今すぐお話ししよっか………洗って返すって言って持ってったよなぁ今日の水着!」

「あらあら、言わないほうがよかったでしょうかしらウェヘヘ」


 そしてサウナをふらりと出て行った羽輝と、すぐに聞こえる「なんなんですか」と「辞めるぞ」の混じった悲鳴。

 その直後起きた大浴場全裸取っ組み合いが已御の隠し撮影のために仕組まれたことを知る者は少ない。

 このへんは、じゃれあい程度ですぐ終わるとみんなスルーなのだが…。


「…でだ、玲くんよ、そこの裏切り者に対してなんか言うことないかね」

「気になっちゃいましたけど、ここで出しますか」


 ふたりの視線のど真ん中にいる、しくる。

 何のことかというと。


「お前は風呂のルールをわかっていない」

「マナー違反程度で済ませるから黙ってたんじゃないんですね店長」

「水着で温泉とか動画撮影中の気分かてめえ!」

「浴場にはつかりませんよお!」

「かんけえねえ! 玲ちゃん捕まえろ! 剥げ!」

「剥げ!?」

「もうあがりますから許してくださいよお!」

「逃げるな卑怯者ぉ!」


 別に貸し切りじゃないです。

 ただやりたい放題なだけです。

 皆さんは公衆浴場では迷惑がない程度に静かに入りましょう。

 そうして、たのしい日帰り小旅行は過ぎたのであるが…。


「またそうやってえ!」

「まぁまぁ、あーちゃんを心配して集まった日に、そんな怒らなくていいから」

「ンなこと言ったって…!」


 ラスト。


 なにかと言い合いになることはある想と羽輝。

 ストレスや感情の発散という理由のある計画とはいえ、結局全員とぶつかって終わる結果になった感。

 そこまで怒りっぽいのが羽輝ではないとはいえ、突っ込み過剰な気はするのが羽輝。


 なるべく避けてはいたつもりだが、やっぱり想がそんな旅行を計画しながら、あれからずっとプールの写真のことばかりで輪から外れてたのに、どうにも納得しきれなかった模様。

 他にもちょっと、いつもから重なったものがあったりもしたが…。


 結局、睨みあって解散となってしまった。

 

「…あした、あやまろ…」

「そうしたらいいよ」


 姫乃に頭をポンポンされて、すこし後悔で悲しげな羽輝はそのまま布団にもぐる。

 



 一方、想は。


「玲ちゃん実は帰り道そんな違わないのかぁ」

「ここまで一緒で今になってなのは不思議ですよね」


 玲と一緒に店の前から旅行を終えた帰り道。


「…ま、これで本当に普通に戻るでしょ」

「想さん、でもなんか気まずくないんですか店長と結構言い合ってましたけど」

「あー、それは別に、あんなのしょっちゅうだし内部では仲がいいの確認してるようなものだから」

「…大人だなぁ」

「…それより、家で妹に説明どうしようかが今きついんだ…」

「あれ、家が近いってことは、妹さん私と同じ学区だったりしますかね」

「それはどうなんだろうね」


 特に引きずる様子はなし。

 何事もなく明日からまたカフェをしていくのだろう。


「ああ端に寄るね、自転車だ」


 最近そこそこ見る、レンタルの自転車で往来する観光客。

 いつものものと、並んでいた二人もよけるのに慣れた対応。


「それで…」


 前後になって、少し歩きながら、もう日暮れの細い道での雑談。

 前側が想で、ふつうに会話を続けていた玲。

 そこで。

 想が、屈んだように見えた。


「あれ」


 自転車のすれ違いでちょっと、ライトでまぶしくて細目だったのもある。


「どうしんですか」


 触ると、倒れているのがわかる。

 声らしい声も出ないで、少しびっくりして体を触ると、濡れている。


 ぬるりと。

 そこで初めて匂いがあるのに、玲は気付いて。


 そこで手元に置かれるように、なにかがあるのを確かめながら…。

 近くの街頭でわずかに見える状況に、玲は言葉が出ずに震えた。


 叫ぶことはできず、口だけが震え、そして体も震えた。


 想が。


 今目の前の人が。

 血まみれで倒れて動いていない。


 誰かが自分の手に置いて去ったのか、ナイフがあるのも理解できない。

 わからなかった。


 そしてそのまま。

 誰かに呼ばれた救急車かパトカーの音を聞き…。

 玲は、重要参考人として家には帰れなかった。

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