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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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19/20

この洗いを作ったのは誰かよく聞く人ではなく -日常 その なな-

 メイド服を着ての銃撃戦を楽しむゲーム。

 遊びの見世物としてはイマイチ、何処に受けるのかわからないながら参加していた羽輝たち。

 商品目当てではあるが、正直、元々の趣味でゲームや射撃等していたわけではない人間がほとんどなので飯より楽しいとはいいがたい。


 しかし、その一方、今回のオフィシャルズ入りの効果は、確かにあるらしい。

 多数の影響を含めて、いろいろな効果があるのなら、だんだんとどれもこれも、楽しめては来るかも…知れない。

 



「…じゃあご主人様、パーティセットとアイスティーでございます」

「ほんとだご主人様だよ!」

「屋根の上までジャンプして構えるあのポーズ今できる?」

「できるわけねえだろ」

「きっ…棋律さん写真撮って…いい?」

「店内撮影禁止でぇす」


 たぶんクラスメイト。

 このゲームが学校の中で知名度が出てきたという証なのか、玲目当ての客は確かに増えた。


「しくるさん、窓側のおきゃ…ご主人様、お名前オムライスですからお願いしまーす」

「はぁいお姉さま!」


 そして、メイドカフェのことを理解している客も、ついに来るようになった。

 しぶしぶ再開させたガスも、使う機会に困ることはなさそう。

 コンカフェに沿った新メニューも大量導入した成果も、今後見せる機会は増えることだろう。


 赤字、なくなるといいね。


 元々来ていた近所のお客さんを含めても席が埋まることはまだないが、ここに変化があるとやる気にはなる。

 ここ数日は、それなりに充実するカフェ店員生活をみんな実感していた…と、思う。

 




「…なんだよぉ、やかましいよ…だれかとめてぇ…」


 そんなある日の朝。

 トンカントンカン、といった叩く音で目を覚ました羽輝。


 時刻は朝5時。

 さすがにまだ寝ていたい時間。

 近所迷惑だろ、やめてくれと願って、それでも止まらないので、窓から文句言ってやろうかとあける。

 みる。


「……しくる?」

「おはようございます店長さん」


 初めて見る、私服姿のしくる。

 登場から、店に来る時、帰宅までずっとメイド服だけだから、他に衣装がないのかとまで思ったが、そうではないらしい。

 それが、大きな音を立てて、いったい…。


「なにしてんの…」

「プランター台を作っているのですが」

「…うーん…ごめん、全く意味がわからないのと、この時間周囲の人すべてに迷惑だから、やめろ」

「だって、お店の勤務中にできないし、暗いとできないじゃないですか」

「休日くらいやるよ! お前の自宅の趣味を店の真横でやるのやめろ!」

「おみせのものですよぉ?」

「…うん、もっと意味がわからない」


 説明を長く聞く必要がありそうだ。

 一度店に入って詳しく聞くと、どうにも植物の栽培が趣味らしい。

 さらに聞くと、それともまた違うともいえる…なんてややこしい。


「…ということで、バジルは自家栽培に限ります、いやほんと」

「…東京の大きな店の話なのに、ずいぶん家庭的っちゅうかこじんまりしたことを…」


 ありていに言うと、正面以外の店の横でプランターを多めに置きたいのだと。

 果物や根菜は数日で調理済みまで劇的に変わるものばかりではない。

 ただ香草だけは採れたてでないといけない。

 これを、しくるは譲らない。

 働いていた店の方針でもあったのだろうか。

 ただ、シソとバジルは効率と手間の比率で絶対必要。

 レモングラスも個人的に絶対だが、店内栽培は店に止められたらしい。

 ほかにもいくつか、栽培候補が挙げられたが、正直覚えてられない。

 生えている時点で香りが強いものだと、それだけで近所迷惑だし虫も寄ってきて店どころじゃなくなるかもしれない。

 なので、みなと喫茶でもハーブは厳選して虫が寄ってこなさそうな数種のみと決めた。


「とりあえず私が持ってきたのがあります」

「どこに入れて持って来たんだよ」

「…ま、まぁ何でもいいんです、食べてみてくださいよ!」


 言いながら、珍しく恥ずかしそうにおなかやスカートのあたりを抑えるのか整えるのか、そんな行動をする、しくる。

 服の中か、スカートに香草袋でも入ってるのか?


 そして、手早く始めて作られるオムレツ。

 まぁ、ガスがあると手早いものだし、手並みも確かに鮮やかだ。

 やるな、メイドさん。


「…いかがですか、香りは料理にとって味よりも強い調味料だと、店長ならおわかりいただけると信じてますよ…!」

「………ふむぅ」

「どうですか」


 コンテストの審査待ちなのか、テレビのCM中なのか。

 ずいぶん熱を込めた目で、食べる羽輝を整った待ち姿勢でみつめる、しくる。


「うまい…確かにすごい、香りが強くて食欲が増すね…」

「でぇすよねえ!?」


 勝った!

 そう言いたげな満面の笑み。


「あと、これですね、この間に温めたフライヤーでちょっと失敗した、チーズの天ぷら」

「そんなんメイド喫茶で出るメニューだっけ…」

「まぁまぁ、そういわず」


 手際がいいのを通り越していつそんなもの用意した。

 衣の材料なんて買った覚えがないぞ。

 羽輝もさすがに不可思議な目を向けるが。

 天ぷら用の小型マシンは、そういえば使ったことがないだけで存在はしてた。

 あまりに家庭用のやつが。


「…うわ、油はくどいのわかるのに爽やかな臭いで脳バグるわ」

「どぉーぅですか!」


 青シソを巻いて揚げたチーズ。

 この香りの強さがなくてはたしかに、腕のカバーはできないかもしれない。

 羽輝も納得。

 そして、しくる、胸を張ってもはや王者の風格。

 腰にこぶしを当てて鼻息が見える勢い。


「…あまいなシロウ、お前はしょせんその程度だ」

「えっ誰!?」


 言ったのがだれか、ではない。

 シロウって誰だよ。

 食べ物の匂いに釣られたのだろう、横で寝ていた姫乃が横にちゃっかり座っている。

 そして、もう食べている。

 羽輝は2口程度しか食べてないが、オムレツもう半分ない。


「香りだけで味の真価を全くお前は見れていない」

「…だからだれだよシロウ、誰に話しかけてるの…」

「みろ、このオムレツ、ジューシーなようで半熟に仕上げてはいない」

「………あれ?」


 羽輝が、言われてみれば、と、見直す。

 薄焼きを丸めてオムレツにしている。

 たしかに半熟でもなさそうだが、とろりとした気はしたはず。


「ゼラチンだ」

「ゼラチン!?」

「この料理人、冷蔵庫に牛脂、鳥の煮汁、ミルクのゼラチンを作り置きしているのだ」

「毎日冷蔵庫チェックしてるのね姫乃さん…」


 つまみ食い常習犯でもあります。


「熱で溶けるように細かくされたものを餃子に入れれば肉汁たっぷりなように錯覚し、ハンバーグに入れればジューシーと感じる、これはその応用だ」

「ど、どういうことだ!?」

「フフフ、しっていましたか」


 何か知らないが、両方妙な世界に引きずり込まれているようだ。

 ちなみに食には何か執着のある姫乃さん、趣味は料理系の漫画を読むことらしい。


「これはスイーツ向けに作られた作り置きで、バター香料と甘みを足したミルクをゼラチンで固めている…わからなかったろうシロウ、このオムレツにバターなど使われていない!」

「なにぃ!?」


 それは全く考えてもいなかった。


「うちは健康用の良い油しか使わないのでね!」

「おいぃ!? それはそれでどこで買って来たんだ、うちの採算にあわないんじゃないの!?」

「香草のあとにふんわり感を重視した生地、溶けだしたゼラチンから出てくるミルク感とバターの香りが後から楽しませ、健康にも配慮した仕上げ、実に配慮の行き届いた料理だ」

「ありがとうございます」


 なんだ、ここは料理のコロシアム的な何かなのか?

 評論家が大挙してくる、そんな店か?

 ちがうよな?


「ま、まぁ、うちのメニューにいろいろ技術注いでくれることに関しては悪い事じゃないわけよね」

「あっちにお店のメニューを大体取り込んでるだけですけどね」

「……まぁ、うちはそもそも調理してなかったから、驚くことばかりだよねぇ、実際」

「私から見ると、そこだけでもいまだ信じられませんが…」


 お互い、別々の意味でちょっと気が重い会話。


「それでですねぇ、やっぱり駄目なんですかあパセリとペパーミントとルッコラとタイムと、あとレモングラスとクウシンサイ」

「自分でお店ひらけよ…あと虫が来そうなのは絶対ダメだから、シソとバジルだけでもかなり妥協したんだぞ、これでも」

「じゃあヨモギとニンジン…」


 いくら増やすつもりなのか。

 放置してたら周囲が広大な畑になりかねないような、欲望がこの瞬間まき散らされている。


「ヨモギはその辺に生えてるだろ……あとニンジンだって売ってないスーパーないだろ…」

「売ってないですよ、はっぱ付いたニンジンなんて普通ないです」

「そりゃ食べないしな」

「いえ!!!!」


 声を荒げる、しくる。


「あれはもう、玲和の大トロなんですよ! きわめて新鮮でないと使えないから世に出ない、使われないだけであれを使ったソースはうちの自慢なんですから」

「そこまで大声出さないでいいよ…」


 ニンジンの葉っぱにそこまで熱弁をふるう人間、羽輝は初めて見た。


「なら!」

「でもダメ、どうしてもなら近くの農家と交渉してきなさい、山ほどいるから」

「むぅ…」


 割と引く気はない姿勢。

 そこまで強く、無理する気はないので、しくるが折れざるを得ない。


「それとね、ガチで苦情来るから、あれは休みの日か昼休みにでもして」

「…しゃーないですねぇ」


 それでも、うまいと言わせただけでも確実に一部優位に立てたと気分的には思える。

 お互いの落としどころとしては、満点だろう。


「さて、もうちょっと作りますか?」

「まだたべられるのお!?」

「…いや、私はいらんよ」

「あら」


 姫乃が身を乗り出すのを頭抑えて、羽輝はまたダウナー気味に一言。


「ここで腹いっぱい食べたら、あとのこともあるし太っちゃうよ」

「あー、そういえば…」


 うてるも、やる気になっていたが、すぐ思い出す。


「仕入れに走る前に腹いっぱいにしたくないのもちょっとあるけど、やっぱ…已御がねぇ」

「今日も、たぶんやりますよね」


 何をするのか、というと。

 今明かしてしまうと、試作である。

 新メニューの。


 分量を手加減するわけでも、少量だけを心掛けるわけでもないので、とんでもない量がたまにできる。

 今のうてるの行動といい、飯が浮くのは悪くないと言いたいが、基本みなと喫茶の支出と已御のポケットマネー。


 なんでも已御が出して恩の比重で自分がつぶれないよう、羽輝だって多少出さなくては言い逃れできない事態がいつか起きる。


 そう思うと、そこの支出もやむを得ないのである。


 そのいっぽう、已御は自分の店舗の新規開拓と羽輝の協力体制に笑顔が止まらない様子。

 周辺を走り回って地場の特産を再研究させたり、持ち帰ったり、提携出品の手続きをしに東京を行き来したり、バイトらしいことをした記憶があまりに薄い。

 そして数日に一度、可能なら毎日、試作メニューを作って店員に食べさせる。


 ここというより、東京の自分の店舗向けのものなのは間違いない。

 しかし、隙あらばセクハラを狙う已御に付きまとわれるよりは羽輝にとっては今のほうがいいのだ。

 が。


「それでさ…」

「なんでしょうか店長」

「…白状しろ、あの見える範囲に止めてある、でっっかい車両、あれ已御だろ」

「気付いていたのですね…」

「わからないわけないだろ」


 朝から、本当に迷惑が尽きない職場である。

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