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最強VR-fpsゲーマーがメイドカフェから発見されたようですが今のところ無害です!  作者: くるま


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玲のじかん -日常 そのろく-

「見てみて、ほら、玲ちゃんのこの、学校の姿らしいこの写真」

「なんでそんなの持ってるの…」


 遠くで何やら冷たい空気の接客が行われているころ。

 キッチンでは、その他全員が、片付けしながら溜まっていた。

 そこで不意に生まれる会話たち。


「履歴書に貼ってたのスマホに取り込んだだけだからちょっと荒いけど、まず別人の写真貼ってるのか聞いちゃったもんね」

「履歴書って…ああ、そうか一応バイト面接したんだもんね」

「これはなんか…すごいね…真面目そうだね」

「生徒会らしいよ、詳しく聞いても話してくれないけど」


 想と羽輝の会話に、いつの間にか全員が囲んで聞いている。

 片づけはどうした。


「メガネ……メガネだ…」

「どうしたの指導役、眼鏡に何か嫌な思い出でもあるの?」

「居なかったですよね…この中に」

「いやいるって話してるじゃん今まさに」


 羽輝はさっと流すが、しくるはずいぶん真剣な目をしていた。


「でも羽輝ちゃん、あの子が眼鏡してるの見たことないけど、私も」

「面接の時点でずっと外してるから、私もそんなには見ないけど、学校ではしてるっぽいのよねえ」

「いったいメガネに何が…」

「うーん」

「おい!!」

「「「うわっ!?」」」


 長話している間に、さすがに玲が戻ってきた。

 お前ら仕事しろと圧をかけに来たかのようである。


「お湯湧いてるの? 商店街大福セットと紅茶なんだけど」

「あるある、そこすらやらないわけがないじゃない、はははは」

「…使い切ったよさっき」

「おいぃ!?」


 当然というべきなのか、不用意というべきなのか。

 給仕の基本として、ポットに入れる温度、注ぐときに下がる温度、理想の温度などをしっかり手本入りでやり続けていたのがついさっき。

 そう、もうさめたお湯はあっても、それぞれが使って試した分は使い切っているのだ。


「……えー、そんなわけで、あと15分、頑張って」

「それだいぶんイジメだよねえ!?」

「大福セットに玲ちゃん用のモチ1つとわらび餅もつけるからさぁ、時間稼ぎ…じゃないお客さんとちょっと話しておいでよ」


 どんな店だよ。

 玲お得意の「辞めてやろうか」を取り出そうとしたが、客…学校の誰かの前でやりたくないのだろう、なんとか抑えた。


「あと…やってませんでしたよねえ、メ・イ・ド」

「う゛っ」


 しくるがゆらりゆらりと体を揺らしながら立ち上がるのと同時に、容赦なくダメ出し。


「このタイミングは、いらないんじゃ…ない?」

「やってください」


 例外はない。

 已御が見ている手前、結構ヤル気を見せる気になっているのだろうという気持ちもありの、しくる。

 ただし、その已御は客の気配でもう奥に引っ込んでいる。

 やりたいことは何でもするが、人見知りのきらいがあるようである。


「お手本を見せたように、ちゃんとやってくださいね…見てますからね…」

「こんな時に全くさぁ」


 席に座るとき、メニューを取るときの応対は、素っ気なくで何とかなっていたのに。

 玲は何とか抵抗したいが…まぁ無理と感じる。

 仕方ない。


「ご注文のセットでございます、ごし…ご主人様」

「え!?」


 そりゃ驚く。

 途中から態度変わるのだから。


「…どうしたの」

「いえいえ、最初からこんなですよぅご主人様」

「なわけないだろ」

「…はい、紅茶がもう少しかかりますので、お時間よろしければこちらもお召し上がりください」


 言葉遣いだけなら、丁寧に言えばいいだけなので何とかなる。

 しかし、相手が乗ってくるわけでもスルーするわけでもないのが、つらい。


 とても、つらい。


「…あの、皿もう2つあるけど」

「これは私の分で…」

「なんで!?」

「…本当になんででしょう…」


 ここだけは本当に唐突で意味がわからない。


「…もしかして、その、取り分けて口に…とか…」

「あーオプションは可能ですけどえげつない追加料金取りますからねぇご主人様」

 学校の知人が、まさかという期待のまなざしをむけたが、そこだけは金で跳ね返した。

「…イエローカードだな…」


 が、しくるにとっては、違反行為だったようだ。


「…も、もうちょっと、お待ちくださいねご主人様…」


 そうこういう間もなく、玲とお客さん…ご主人の空気は重い。

 会話の糸口が特にない。


 さすがに、バックヤードのほうに目を向けて助けを請おうとするが…。

 レジカウンターに隠れるように顔をちらちら出す、しくるからは、両手で横に手を行き来させるジェスチャーが来るだけ。


 (伸ばせ)。


 そういう意味だ。

 助けは、来ない。

 くそが。


「…な、なんでしたら私も横で食べますね、人もいないですし」

「なんで!?」


 客からすると、本当にわからないだろう。

 本来…いや、最低でも今までの、この、みなと喫茶の振る舞いとしては放置が正しいのだ。

 客に細かく応対などする空気などはなかった。

 …まあ、普通の喫茶店の範疇で、横で店員も食事しますなんてことがそもそも有り得なさそうだが。

 なお、あと10分は余裕である。


「…えっと、クラスは違いますよね」

「がっ、学年は同じです…その、生徒会のお仕事でちょっと、手伝ってもらったことは…」

「あ、そ、そうなんだ」


 あんまり細かく、関連を聞いたり、学校内の行動を掘り出して晒したくない。

 しかし、同じくらいの年の子が来る以上、学校関連しかないだろうし。

 会話の設計に、大変苦労する玲。

 一方、バックヤード側、レジとその裏のキッチンでは…。


「あれは確実に惚れてるやつですね」

「それで、調べてバイト先まで!?」


 んまー!

 羽輝が口を押さえて、ちょっと嬉しそうにする。

 ストーキングの理論を前提にキャラ付けをしようとするなよ。


「部活の予算希望で書類集めているとき…とかで…」

「あぁ、調査で各部室回ってたなぁ手分けして…面倒だったなぁあれ」

「あの時はメガネをかけてたからすごい堅い…人だと…」

「実際固いんだけどね」


 早くも、メイド式を完全に忘れた。

 普通に学校内の会話だよこれ。

 しくるも、即座にダメ出しをするか…と、思われたが。


(ギャップだと…!? お堅い姿を普段見せてのギャップ萌えだと!?)


 何か違うことを考えているようだ。


「でも、よくそんな1人でここ来る気になったよね」

「まぁ、その…一緒に来る人がいたんですけどドタキャンで」

「そりゃそうだよねぇ、部活の終わりで反省会やるくらいしか、学校のやつ来たことないもの」


 学校での宣伝が不足なのか、そんな気持ちの玲。


「まぁ、なかなか少人数で来る勇気は…」

「……悪い噂でも流れてるの私って…」

「!!いえ! その、敵認定されるっていうか、抜け駆けが許されないっていうか…」

「…なんだそれ」


 一方キッチン。


「なになに、クラスみんなに実は告白のタイミングで警戒されてるって事お!?」

「おいおいクラスのアイドルかよ玲ちゃん」

「なかなかここで見るイメージと違うねえ」


(学園のマドンナ、もしくはアイドルだと…?!)


 ニヤニヤしながら羽輝や想が妄想をはぐくんでいる横で、しくるは真顔。

 別な何かを見ているかのよう。


「納得いかないなぁ…」


 学生組。

 いや、メイドとご主人様は、もう完全に世間話のターン。

 設定などは、もはやどこにもない。


「でもさ」

「なんでしょう…」


 もはやメイドのほうが態度でかい。


「こんな、きなこたっぷり食べて喉かわかないのすごいよね」

「いえ、割とぱさぱさですが…」

「…あ」


 サービスのつもりで出しているわらび餅。

 なぜか二人で食べるように店員が用意した、近くのお店で1kg180円の特売品。

 きなこがけ。


 玲が完全にバイト中なのも忘れたように一緒に食べだすと、当然、水も飲まないと口が乾く。

 そこで思い出したのは…。


 お冷だ。


 普通最初に出す水も出してないよ、この店。

 玲が気が付いたその瞬間、レジのあたりに隠れていたほかの店員も同時に気が付く。


 シンクロニシティ!


「持ってく! もってくよ!」

「ここは私ですよ!」

「まかせた!」


 羽輝が水道から取ったそのままで渡すグラス2つを、しくるに。

 そして、しくる…手本の立場では禁じられた行為、お盆にすら乗せず運搬の暴挙!

 さらに、立ち上がって確認しようとした玲、しくるが衝突する。


「「ぎゃぁ!?」」

「うわ!」


 転倒。

 ご主人様にちょうどかかる。狙ったのかと思うほどに。


「も、申し訳ございません!」

「どうしよ!?」

「今タオル、タオル…ちょっとタオルぅ!」

「はぁい!!」

「てか滑るんだけど!? ここコンクリうちっぱなしだったっけ!?」

「違うけど、元々ここ倉庫だから…」


 おおそうどう。


「床の雑巾じゃなくタオルだよお! お客さんにかかってるの!」

「うわっ! ほんとすべる!」

「ちょっと、玲ちゃん、スカート腰までめくれてるって!」

「…言わなきゃわかんないのに!!!」


 ほぼ丸出しを見られたご様子。

 だが彼女は逃げない。

 負けたと思うまで人間は負けないから!


 それとタオル渡しに来た想も拭かずにかえったから。

 ちなみに、うてるはすでに逃げました。


「…じゃ、『ご主人様』は任せたよぅ玲ちゃん」

「…くっそー」


 玲は、羽輝から手渡されたタオルをにらむしかない。

 割と捨てきれない己のキマジメさが憎かった。


 そこで…。

 そうなると…。

 見ざるを得ない。


 同じ学校の、いわゆるご主人様を。

 改めて。


 さっきの色々を見たんだろう、顔が赤いままだ。

 …見やがったんだな、ちゃんと。

 問いただしたかったが、さすがに恥ずかしかろう。


「…じゃあ、お拭きしますご主人様」

「よろしくお願いします…」


 そんな改められると、むしろ何の示し合わせなんだろう。

 だが、ポイとタオルを捨てるわけにもいかず。

 しゃがんで、すっかり浸み込んだお客さんのズボンの水気を拭く。


「気持ち悪かったらいってね」

「いやその、その流れでどういうのが正しいんですかそれは」

「…あとちょっと待って、うまいこと見えないからメガネかける」

「は、はい」


(高圧忠実癒し系ドジっ子メガネメイドだとお!?)

 しくるは、遠くで何か衝撃を受けているようだが、誰にも共感は得られそうにない。


「雰囲気いいじゃん?」

「これはもう甘酸っぱいなんてもんじゃないなぁ」

「いけーッ! 押し倒せ―!」

「店内で犯罪させようとしないで!?」


 レジ裏に隠れて盛り上がっている一同だが…。


「……全部丸聞こえなんだよヘボメイドォッ!!」

「「「ソーリー」」」


 何か青春っぽい雰囲気は、よくない大人たちによってあっさり崩されたようであった。

 お互い顔は赤いが、なんとかそのせいで一定の距離と冷静さは持っているようである。


「…じ、じゃあ、美味しかったです…今度は一緒の予定だった彼女にも、雰囲気がいい店だったって伝えて一緒に…来ますね」


「なんだよ彼女モチかよ!」

「殴っていいぞぉ!むしろもう一回水かけちゃれ!」

「こーろーせ!こーろーせ!」

「だから丸聞こえだって言ってんだろ!」


 紅茶の代金は、もちろん取りませんでした。

 

 

「…で、今日の講習の結果ですが」


 閉店後、ちょっと残ってもらって特訓の話と総括が待っていた。


「店長、羽輝さん…20点!」

「えー」

「裏方も接客もなめ腐ってますよね! 経験者ですか!?」

「今までそれでやってきたもんさぁ」


 赤字なんだよ、それ。


「店員、想さん…50点! 採点的には不可です」

「そんななのぉ」

「この中では上達はいい部類ですが、演技っぽさしかなくて妙に胡散臭いです、お茶や食器の扱いは悪くはないです」

「辛らつだねえ」


 割と覚えたのがうわべだけなのが見て取れたようである。


「で、バイトの姫乃さん、もちろん0点!」

「そかー」

「なんで寝ているんですか! でもそのキャラ付けを生かすほうで、オリジナリティを感じますので頑張ってください…こっちでも考えます」

「なんか親切う」


 点数の割に、なにかちょっと評価高目な姫乃さん。

 いまいち不公平を感じる。


「…最後に玲さん」

「う゛…何言われるんだ、これだけ最悪の日にされて…」


 色々ありすぎて、流石にちょっとへこんでる玲。


「あの、このままでいいです、ばっちりです」

「いってること違うよ!? 他となんか違うよ!? むしろ怖いよお!?」


 才能を感じた日だった。

 自分では決して得られない輝きを持つもの、それに、しくるは妬ましさ以上のものを感じた。

 しくるはこの日を、きっと忘れないだろう。

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