表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MASTERY - マスタリィ【第1部】  作者: 洲澄英里
Period 3 FORTUNE - 第3章 二人の王
70/88

Part2 6.「影」の恭順

思った以上に洞窟は深く、意外に広い一本道がずっと続いていた。どこにでもありそうな、朽ちかけた鍾乳洞である。冷やりとした空気は澄んでいて、怪しげな気配も何もない。


「何も――でもないな。なさすぎる」


ガルシアは独り言ちた。洞窟に入ってから、虫一匹見かけない。気配を探りながら歩き、自身の魔力が封じられてはいないことも確認できる。


ひたすら歩いていくと、突然拓けた場所に出た。広場になっている、行き止まりである。

だが、洞内の水晶が微かに光を放っているため、奥の闇に人影のようなものを認めた。


「誰だ」


声を掛けてはみたが、人影らしきものは動かない。

ガルシアがゆっくりと近づいてみると、壁に彫り込まれたレリーフの人型だった。


背が高く長い髪の、一見すると男とも女とも見える。角はなく、特徴的には白魔族に近い。

「禁呪の主」は遠すぎる伝説のため、白魔族か黒魔族かも不明である。これが「禁呪の主」の誰かを模したものだとしたら、白魔族なのだろうか。


考えているガルシアの意識に、また声が響いた。


(こちらへ)


ガルシアは躊躇なく、レリーフに近づいた。


(お手をお貸しください)


「手?」


ガルシアは右手をレリーフの上に置いてみた。


その途端、ガルシアの手を中心に光が広がった。

――自分の魔力が壁に流れ込んでいく。ガルシアはその感覚を覚えつつ、手は離さなかった。


レリーフに(ひび)が入り、少しずつ崩れていく。

ガルシアは手を離して距離を取ったが、表面の崩落は止まらない。壁全体には広がらず、人型だけが浮かび上がってくる。

瞬間、埃が舞い上がり、壁の一部が砂となって散った。


「――ようこそ、おいでくださいました」


レリーフが消えた場所には、レリーフそのままの姿をした者が立っていた。

美しい面差しに、色の見えない瞳をしている。声はさして低くなく、高いようにも低いようにも聞こえる不思議な響きだった。


「お前が禁呪の主か」


ガルシアが問うと、その者は跪いて答えた。


「最後の生き残りにございます。我ら一族が滅ばぬよう、ここに封印されておりました」


「王国ができる前からか?」


ガルシアが笑い混じりに言うと、色のない瞳がまっすぐガルシアを見つめた。


「我らの力を間違いなく使える方が現れた時のみ、目覚めておりました。最後に封印されたのは――ちょうど魔天王国が誕生したのちでございます。御身(おんみ)と同じ名の王がおられたころ……」


「初代に仕えていたのか」


王国の初代魔天王は、ルーク・ガルシア・ラング・フォースである。ガルシアも当然、自分の名の由来は知っていた。


「御意。それが最後かと思っておりましたが、ドラゴンをも凌ぐお力が世界に現れ、ここに届きました。

これより、わたくしを影としてお使いください」


「……影?」


「わたくしはすでに人の身ではございません。禁呪のために命を永らえておりますが、わたくしを生かせるだけのお力を持つ方がおられなければ、その命も生きるほどには足りません。

あなた様の影としてお側にお置きください。あなた様の影の中にこの身を潜め、お呼びくださればいつでも手足となり、お仕え致します」


「禁呪を伝授するのではなく、お前自身を禁呪として使えということか」


「伝授しようとすれば、この身は塵となって消えゆきましょう」


「――なるほど。よかろう、ついて参れ」


ガルシアは笑って踵を返し、すぐに振り向いた。


「お前の名は?」


「フェンとお呼びください」


「フェンか。――もうひとつ、聞きたいことがある」


「ご随意に」


「ラルフがお前の主人になれぬのはなぜだ? あれの力は、私と同じだ」


「……わたくしがお仕えするのは、王たる方のみでございます」


フェンの答えに、ガルシアは納得して薄く笑った。


これが、ガルシアと彼の忠実なる影の出逢いであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ