Part1 6.拒絶
「早くしろ、侍女が来る!」
寝室に忍び込んでいた男の一人がそう言った時、開いた扉の向こうにカタリナがやってきた。
「だ、誰!?」
見知らぬ男たちと、その手に持っている剣を見たカタリナは、慌てて叫んだ。
「だ……誰かぁー! 怪しい者が、奥様のところにーっ!!」
「チッ、言わんこっちゃねえ!」
一人の男が振り向いて、腰にいくつも下げている短剣を手にした。
「すぐに奥様も送ってやるよ!」
「ひっ!」
投げられた短剣は、逃げることもできなかったカタリナの目の前で何かに弾かれ、跳ね返って床に落ちた。
「な、なんだ!?」
いつの間にか、その横にラルフが立っていた。白いローブが、返り血に紅く染まっている。
「ラ、ラルフ様!?」
「あいつら、こんなガキ一人殺り損ねたのか!?」
怯みながら、男はまた一本の短剣を構えた。
「お逃げください!」
ラルフはカタリナの言葉など聞こえていないかのように、黙って男のほうを睨む。
「ほらよ!」
ラルフに向かって男が投げた短剣は、今度はその目前で粉々に砕け散った。
「――え!?」
ラルフの体から、光の粒が現れる。光は男に向かって飛び、胴を突き破って弾けた。
「ぐぁっ!」
男が倒れると、その向こうでウィストリアの胸に剣を突き立てようとしていたもう一人の男が、異変を感じて振り返った。
「母上に手を出すなーっ!!」
ラルフの叫びとともに、突風が部屋中に吹き荒れて、奥の窓がひとりでに開いた。
「うっ……うわわっ!?」
男の体が宙に浮き、凄まじい勢いで窓の外に投げだされる。男は庭の先に立つ樹木まで吹き飛んで、幹に叩きつけられた。
「がはっ!」
男と同時に、天高く飛ばされていた剣が落ちてくる。剣は意志を持つかのごとく鋭く動き、男の胸を斜めに貫いた。
「――っ!!」
心臓を正確に射抜かれ、断末魔の悲鳴も上げることなく、男は息絶えた。
ラルフはじっと、その最期を見守っていた。
敵の始末を終え、ラルフは母に歩み寄る。寝台のウィストリアは眠っており、どこにも怪我はなかった。
母の無事を確認して安堵し、ラルフは廊下を振り返った。
「あ……」
カタリナは座り込んで、震えていた。
「……カタリナ」
ラルフが視線を向けると、侍女は充血した目を大きく見開き、後ずさるしぐさを見せた。
「ひいっ!」
「カタ……」
「こ、来ないで!!」
近づこうとして、ラルフは歩みを止めた。
信じられぬ光景を目の当たりにした、カタリナの精神は限界に近かった。
「い……嫌ぁーーーっ!!」
あの時の母と同じ、狂気の叫びを上げる侍女を前にして、ラルフは呆然と立ち尽くしていた。




