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MASTERY - マスタリィ【第1部】  作者: 洲澄英里
Period 3 FORTUNE - 第3章 二人の王
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Part1 5.覚醒

ラルフはまた、森の中で鳩と戯れていた。


――父上も、私がお嫌いなのだ。


どれほど久しぶりであっても、素っ気ない会話で追いやられた。


自分は、いつでも一人。一人でしかいられない。

自分を愛して、必要としてくれる人など、どこにも存在しないのだろうか。

小さな丸い頬を、涙が伝った。


突然、鳩たちが一斉に飛び立つ。


「いたぞ、早く!」


聞き慣れない男の声が、どこかで叫んだ。


光弾(レ・ブン)!」


呪文とともに、木々の間から飛んできた光の矢が、ラルフの胸に命中した。


「あっ!?」


激痛が全身を走り、ラルフはその場に倒れ込んだ。


「仕留めたか!?」


二人の男が現れて、ラルフの体に近寄る。すると、その体が、光を帯び始めた。


「何!?」


「う……っ」


ラルフはゆっくりと、手をついて起き上がった。その胸には、なんの傷痕もない。


「……防御壁(ロウ・シールド)か。魔力の自然防御が、働きやがった」


「こんな子供が!?」


山賊のようなぼろぼろの服を纏った男たちが、呆然と自分を見つめている。

その隙に、ラルフは屋敷に向かって飛翔した。


「待て!」


(……追いかけてくる!?)


何がなんだかわからず、ラルフは必死に翔び続けた。しかしまた、男の声が響いた。


呪縛(バイス)!」


細い光の輪が自分の体を取り巻いて現れ、手足と胴を締めつけた。


「うわあああっっ!」


ラルフは真っ逆さまに落下した。そのまま地面に叩きつけられ、意識が薄れていく。


「……あの高さから落ちても、息があるぞ」


「気は失ってるようだな」


意識の遠くで、声がする。


「好都合だ、確実に息の根を止めてやる」


男の一人が、腰の剣を抜いた。


「あばよ、小僧!」


その剣を振り下ろそうとした瞬間、男の頬を何かが掠めた。


「……山鳩!?」


あっという間に無数の鳩たちが飛んできて、男たちの体に纏わりつき始めた。


「う、うわっ!」


「く……やめろ、このっ!」


ラルフの目が、ぼんやりと開く。


「炎撃焦破!」


男の一人が叫ぶと、鳩たちの体がかっと燃え上がり、体内から爆発するように翼がもげて飛び散った。

そこら中に茶色の羽が舞い、焦げた匂いが広がる。声も上げず吹き飛んだ鳩の、首の一つがラルフの目の前に落ち、返り血が頬に掛かった。


ラルフの目は、大きく見開かれた。


呪文を放った男は、忌ま忌ましげに唾を吐く。


「一体なんだってんだ……ったく、面倒な」


「お、おい!」


ラルフを縛り上げていた光の輪が、一瞬にして弾け飛ぶ。


「――な、何!?」


「よく、も……」


ゆらりと立ち上がる、ラルフの蒼い瞳が鈍く光る。


「ば、馬鹿な!」


「――っ!?」


次の瞬間、男たちの体が音もなく爆発し、肉片となって散り散りに吹き飛んだ。


ラルフは無表情で、屋敷の方角に目を向けた。木々の彼方、見えるはずのない邸内が、はっきりとその眼に映る。

意識のない母に忍び寄る、二つの影があった。


(――母上!!)

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