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MASTERY - マスタリィ【第1部】  作者: 洲澄英里
Period 2 LOVERS - 第2章 知られざる日々
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11.自覚

「参ったか、レ=オン」


玉座に鎮座している王は、重々しい声でレ=オンを迎えた。


「何事です、父上。玉座の間とは改まって」


「お控えを、殿下。御前ですぞ」


玉座の横に立っている、年老いた騎士が咎めた。

レ=オンがむっとしながらも跪こうとすると、ドルアーグは手招きして言った。


「まあよい。近う寄れ」


レ=オンは騎士を睨んで、王の前に進み出た。


「心して聞くがよい。お前の――」


咳払いを一つして、王は言った。


「お前の、妃が決まった。サーティス伯爵令嬢の、マルガレータだ」


レ=オンは目を丸くした。

聞き慣れない響きの言葉に、すぐには理解が及ばなかった。


王は構わず、話を続ける。


「伯爵といえど、サーティス卿は先々代の王からの血を継ぐ者。ことに魔力に色濃くそれを示し、マルガレータは教養も並々ならず、聡明にして嗜み深い。

未来の魔天王に相応しい、賢妻となろうぞ」


「い……」


ようやく、レ=オンの声が出た。


「いきなり、なんですそれは! 私に、き……」


動転して、まだ言葉が上手く続かない。


「妃など、まだ要りません!!」


「マルガレータでは不満か。面識はあろう?」


「そういうことを申し上げているのではありません!

何を血迷って、そのような……」


レ=オンの頭の中は、混乱した。

その中に浮かび上がってくる、一人の女の顔。


「前々から諸侯らと協議を重ねて、決定したことだ。誰も血迷ってなどおらぬわ」


ドルアーグは淡々と、返答する。


「私は何も」


「レ=オン! そなた、己が身分を忘れたか!」


突然、王の声が峻厳なものになった。


「そなたは王太子だ! この魔天王の位を継ぐ者なのだぞ!

不満を唱えれば、それでどうにかなるとでも思っているのか!?」


ドルアーグはますます声を荒げた。


「いつまでもふらふらと、自覚がないにもほどがある!

神妙に致せ!」


呆然となるレ=オンに、ドルアーグはまた、冷静な調子に戻って言った。


「発表は明朝、正午に婚約式を執り行う。――成婚の式は、ひと月後だ」


「な……!」


「今宵一晩、頭を冷やすがいい。望むなら、牢を提供するぞ」


「父上!」


「衛兵!」


騎士の声とともに現れた十数人の兵士が、あっという間にレ=オンを取り囲んだ。


「――失礼致します、殿下」


中でも屈強の男たちが二人、レ=オンの両腕を掴む。


「夜明けには出してやる」


王は冷然と言い放った。

レ=オンは俯いて、低く呟く。


「お仕着せの妃など、要りません」


「まだ言うか!」


「妻は自分で決めます。……私には」


レ=オンの体が、静かに光を帯びる。


「私には、想う女がいます!」


「――何!?」


風がレ=オンの周りを包み、辺りのものを吹き飛ばそうとする。


「うわっ!」


両脇の兵士の手が離れた瞬間、玉座の間が真昼のように明るくなり、レ=オンの姿が消えた。


「馬鹿な!」


王は驚愕し、立ち上がって周囲を見回した。


王宮は、転位などできないよう結界が張ってある。

だが、王宮内のどこにも、レ=オンの気配はなくなっていた。

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