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MASTERY - マスタリィ【第1部】  作者: 洲澄英里
Period 2 LOVERS - 第2章 知られざる日々
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5.似た者同士

そのあともたびたび、レ=オンは森にやってきた。

来る時はいつも、なぜかカミーユも一緒だった。


「お前、毎日ここに来ているのか?」


「そう容易く、外出はできません」


「その割には、よくかち合うな」


「たまたまですわ。――主が、お呼びになるのではありません?」


時にはクーガを追いかけて木に登り、枝の間でそんな風に話したりもした。

クーガは二人の様子を見て、愉しげに鳴いていた。

が、ふと気づくとその姿が見えない。


「クーガ? どこに……」


「レ=オン様、後ろ!」


「ギャギャーーッ!」


背後からいきなり現れたクーガに飛びつかれて、レ=オンはバランスを失った。


「わっ!」


「レ=オン様!」


バキッ、と枝が折れて、レ=オンは真下の地面に落ちた。

カミーユも慌てて、下に降りる。


「レ=オン様、大丈夫ですの!?」


「……っつ……この……」


魔力による自然防御で、怪我はしていない。レ=オンがむくりと起き上がり、カミーユはほっとした。

レ=オンは、上の枝にしっかりと止まっているクーガを睨んだ。


「クーガ! この無礼者!!」


「ギャッ?」


クーガはいつものとぼけた顔つきで、小さく鳴いた。


「――馬鹿にしているな!?」


「……っ」


カミーユが、クッ、と声を洩らした。


レ=オンが視線を向けると、俯いて必死に我慢しながらも、肩を震わせてくすくすと笑っている。


「……何がおかしい!」


「だ……だって、レ=オン様……」


「キイーッ、キイ、キイ!」


樹の上にいるクーガも、無邪気に高い鳴き声を上げている。

カミーユは堪え切れなくなって、大声で笑い出した。


「笑うな!」


「む、むきになって、そのような……っ、ふふっ、あははははっ!」


「カミーユ!」


カミーユはいつまでも、涙も滲むほどに笑い続けた。


――


面と向かった口の悪さは、双方変わらなかった。

だが一緒に過ごすうち、彼らの初見からの反目は、少しずつ共感に変わっていった。


異母姉(あね)たちは皆大人しくて、早くに嫁いでいきました。

嫡出の私がそうでないのは、外聞の悪いことと父も嘆きますけれど……悪評のお蔭で縁談が来ないのなら、むしろ私には願ったりですわ。戦いを知らぬ女には魔力も無駄と、始めから決めつけられて、家に押し込められるのですから」


「確かに、お前には似合わぬな。魔力も屋敷を抜け出すには、役立つのだろう?」


レ=オンがからかうと、カミーユは膨れてみせる。


「我がままな王太子殿下と、それはご同様ですわ!」


――


「私にも兄弟は三十人近くいるが、皆庶出だ。同じ王妃たる母上から生まれた者は、私を含め、わずか二人だけ。その妹も、幼くして病死した。

私は長子ゆえ、残る弟妹たちとは滅多に顔を合わせることもない。――母上も、お側近く接することのないまま、亡くなられた」


「お母様が、恋しくていらっしゃるのですか?」


「私は乳飲み子ではないぞ!」


すぐむきになるレ=オンに、カミーユは笑いながら言う。


「女性に対する礼儀をご存じないのも、きっとそのせいですわね。お気の毒に存じますわ」


「カミーユ!」


子供のようにじゃれ合う二人とドラゴンの笑い声は、森に平和な時を刻んだ。

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