5.似た者同士
そのあともたびたび、レ=オンは森にやってきた。
来る時はいつも、なぜかカミーユも一緒だった。
「お前、毎日ここに来ているのか?」
「そう容易く、外出はできません」
「その割には、よくかち合うな」
「たまたまですわ。――主が、お呼びになるのではありません?」
時にはクーガを追いかけて木に登り、枝の間でそんな風に話したりもした。
クーガは二人の様子を見て、愉しげに鳴いていた。
が、ふと気づくとその姿が見えない。
「クーガ? どこに……」
「レ=オン様、後ろ!」
「ギャギャーーッ!」
背後からいきなり現れたクーガに飛びつかれて、レ=オンはバランスを失った。
「わっ!」
「レ=オン様!」
バキッ、と枝が折れて、レ=オンは真下の地面に落ちた。
カミーユも慌てて、下に降りる。
「レ=オン様、大丈夫ですの!?」
「……っつ……この……」
魔力による自然防御で、怪我はしていない。レ=オンがむくりと起き上がり、カミーユはほっとした。
レ=オンは、上の枝にしっかりと止まっているクーガを睨んだ。
「クーガ! この無礼者!!」
「ギャッ?」
クーガはいつものとぼけた顔つきで、小さく鳴いた。
「――馬鹿にしているな!?」
「……っ」
カミーユが、クッ、と声を洩らした。
レ=オンが視線を向けると、俯いて必死に我慢しながらも、肩を震わせてくすくすと笑っている。
「……何がおかしい!」
「だ……だって、レ=オン様……」
「キイーッ、キイ、キイ!」
樹の上にいるクーガも、無邪気に高い鳴き声を上げている。
カミーユは堪え切れなくなって、大声で笑い出した。
「笑うな!」
「む、むきになって、そのような……っ、ふふっ、あははははっ!」
「カミーユ!」
カミーユはいつまでも、涙も滲むほどに笑い続けた。
――
面と向かった口の悪さは、双方変わらなかった。
だが一緒に過ごすうち、彼らの初見からの反目は、少しずつ共感に変わっていった。
「異母姉たちは皆大人しくて、早くに嫁いでいきました。
嫡出の私がそうでないのは、外聞の悪いことと父も嘆きますけれど……悪評のお蔭で縁談が来ないのなら、むしろ私には願ったりですわ。戦いを知らぬ女には魔力も無駄と、始めから決めつけられて、家に押し込められるのですから」
「確かに、お前には似合わぬな。魔力も屋敷を抜け出すには、役立つのだろう?」
レ=オンがからかうと、カミーユは膨れてみせる。
「我がままな王太子殿下と、それはご同様ですわ!」
――
「私にも兄弟は三十人近くいるが、皆庶出だ。同じ王妃たる母上から生まれた者は、私を含め、わずか二人だけ。その妹も、幼くして病死した。
私は長子ゆえ、残る弟妹たちとは滅多に顔を合わせることもない。――母上も、お側近く接することのないまま、亡くなられた」
「お母様が、恋しくていらっしゃるのですか?」
「私は乳飲み子ではないぞ!」
すぐむきになるレ=オンに、カミーユは笑いながら言う。
「女性に対する礼儀をご存じないのも、きっとそのせいですわね。お気の毒に存じますわ」
「カミーユ!」
子供のようにじゃれ合う二人とドラゴンの笑い声は、森に平和な時を刻んだ。




