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南太平洋戦記-間に合った世界  作者: 鴨下英二
第2部 マッカーサー・キャンペーン

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14/19

第2部 マッカーサー・キャンペーン 第7章 Navy Dept. of Dynamite Day

アメリカ合衆国 ワシントンD.C.

1943年 11月6日 11:00


 ブリスベンでSIGABA暗号化された電文は、ハワイ、サンフランシススコを経由

してワシントンD.C.の陸軍省の暗号課へ届き、直ちに翻訳復文され、「トップシー

クレット」と書かれた封筒に入れられると、参謀本部の太平洋担当官の元に送ら

れた。

 彼はその内容の重要性からみて、直ぐに参謀総長であるマーシャル大将に届け

るべきと判断し、封筒表に”緊急”のスタンプを押し、封筒はマーシャル大将の元へ

届けられた。


 マーシャル大将は、その電文が届けられたときに南西太平洋方面軍から送られ

てきたアイアン・ジョーズ作戦の戦闘速報に目を通していた。

 そこに、同じ南西太平洋方面軍から新たな電文が届いたため、届いた電文を先

に目を通した。

 一読した大将は眼鏡を外し、机の上で両手を固く組み、その拳を口元に当てて

考え込んでしまった。

 しばらくして、マーシャル大将は立ち上がり

「この電文を海軍作戦部長のキング提督に・・・」

言葉の途中でデスクの上の、ホワイトハウス直通の電話が鳴りだし、大将は最後

まで言わず電話を取った。

 電話は大統領軍事秘書官からで、ルーズベルト大統領が最も心配しているオーバ

ーロード作戦についてであった。

 電話は長くなり、大統領の繰り言の対応にまでおよんだ。

 秘書官は気をまわし、届いた電文の複写を海軍省作戦部長のアーネスト・キング

提督宛に伝書使に託した。

 電文は数ブロック離れた海軍省に届けられ、マーシャル大将からの配送という事

で直ぐにキング作戦本部長の元に届いた。

 

 ホワイトハウスからの長い電話が終わり、次の予定を思い出す前にキング海軍

大将から例の電文の件で、と電話が入った。

 しくじった事を瞬時に悟ったマーシャル大将は直ぐにそちらへ出向くと答え電話

を切った。コートを羽織りながら、さてどう説明したらよいか考えてみたが、良い

案は思い浮かばなかった。


 両者の会談は結果から言うと決裂した。

キングは眉間にシワを寄せ、怒りに燃えた眼と低い声で、母艦航空隊の大損害を

挙げ、そもそもマッカーサーの言う攻撃対象ブーゲンビル島は南太平洋軍すなわ

ち海軍の管轄であると吐き捨てた。

それに対してマーシャルは眉ひとつ動かさず平然としていた。

 また海軍作戦本部内も、マッカーサーの要求を知ると、反陸軍一色となり、

もはや両者の妥協は不可能であるかのように見えた。


 さらに、この日全米各地のハースト系新聞、地元ワシントン・タイムズ・ヘラル

ドなどの各新聞が、夕刊でマッカーサーがニューブリテン島の地図を前にして自分

の功績を誇っている姿の写真を載せたことで、海軍省全体が沸点に達した。


 史書は後にこの日を「Navy Dept. of Dynamite Day(海軍省が火薬庫と化した

日)」と記録している。

 



オーストラリア ブリスベン 南西太平洋方面軍 作戦指令室

1943年 11月10日 AM9:00


 AMPビルの8階、マッカーサー元帥の執務室に隣接した作戦指令室はテニス

コート3面ほどの大きさがある。

 その窓のない部屋の壁いっぱいに作戦進捗管理表が作られていた。

木のボードと漆黒の黒板で構成されたその複雑な仕組みに、方面軍司令部の課員

が群がり、手にしたクリップボードの内容を書き写していた。

 サザーランド参謀長は部屋の中央に立ち、その進捗を眺めていた。

部隊戦闘序列・配備一覧表の爆撃機は、彼がアイアン・ジョーズ作戦の前から手

を打っていたこともあり機数そのものは必要機数の7割程度揃っている。

 但し、戦備・稼働状況報告表を見ると搭乗員の充足・訓練は5割強程度といった

ところで、まだ実戦投入をできるだけのものではない。

 それ以外に関しては概ね揃ってはいないが、進捗率から見て何とかなるのでは

ないか、そう思える数字が並んでいた。

 次に彼が見たのは海軍艦艇についてセクションで、艦艇稼働状況表やタスク

フォース構成表といった表が並んでいたが、そこは数字どころか項目なども全く

記載されていない。

 要請電文を送っていらい、海軍いや、本土の陸軍中央からも何の連絡もない。

彼は、作業台に寄りかかりポケットからラッキーストライクを出すとジッポー

ライターで火をつけた。

 立ち昇る紫煙を見ながら考えた、おそらく揉めている。それは間違いないだ

ろう。

 揉めてうまくいかなかった場合どうするか、彼はマッカーサーに伝えていな

いプランB、プランC、という構想も胸中にあったが、それを表にだすのはまだ

早い。相手がマッカーサーだけの場合は早めに手札を出し、元帥に自身の決定を

迫るのが有効だが、別の相手がいる場合はまた別の話となる。

 他人力ではあるが、マーシャル大将の粘りに期待するしかないか。

そう思ったときに、彼は自分が歪んだ笑い顔をしているのに気づき、あわてて

煙草の火を消し、日本軍の最新状況報告板の方へ歩き出した。



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