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第35章 再接続される沈黙
風が通り抜けた。
何の変哲もない路地。
使われなくなった水路の跡。
石壁のひび。
そこに、
誰かの手が触れていた。
声はなかった。
けれど、
その指先には、
「なぜ」があった。
問うことを知らなかった者が、
ただ感覚の奥で、
世界の違和をなぞりはじめていた。
ノアは遠くからそれを見ていた。
目を細めることも、
歩みを止めることもなく。
だが、
その視線の先で、
風が変わった。
沈黙が、
ほんのわずかに、
“反響”として返ってきた。
それは、
言葉ではなかった。
音でもなかった。
ただ、
「問いが再び、接続されはじめた」
その証だけが、
空気の微細なうねりの中にあった。
キューブは、
沈黙の中で淡く光を放っていた。
ノアは歩き続けた。
再び、
どこかへ向かうように。




