26/36
第26章 意志なき労働
音があった。
機械の駆動音に似た、
単調な律動。
人々は、動いていた。
整然と、滑らかに。
止まることも、
迷うこともなく。
そこに、
意志はなかった。
ただ、
割り振られた役目を、
淡々と遂行するだけだった。
ノアは、
一つの流れの中に立っていた。
誰も、
労を誇らず、
誰も、
苦を訴えず、
誰も、
疑問を抱かなかった。
キューブは、
沈黙のまま、
脈動をわずかに刻んでいた。
だが、
世界は、
その鼓動を必要としなかった。
ノアは、
静かに流れを見送り、
また、歩き始めた。
機械のような労働の律動が、
遠く、
微かに、
世界を満たしていった。




