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第20章 真実の消えた街

街には、言葉があふれていた。


標語。

宣伝。

通知。

呼びかけ。

命令。


あらゆる壁に、

あらゆる空間に、

あらゆる瞬間に、

何かが語りかけていた。


「信じろ」

「守れ」

「選べ」

「従え」


だが──


そのどれにも、

真実はなかった。


言葉は、

言葉のために存在していた。


意味は、

意味のために織り上げられていた。


誰も、

その虚ろさを問い直さなかった。


ノアは、

通りを歩いた。


無数の言葉が、

ノアを取り囲んだ。


問いかける声。

誘う声。

諭す声。

煽る声。


だが、

ノアは何も応えなかった。


一つの、

掲示板の前に立ち止まった。


そこに貼られていたのは──


「あなたは、正しい」


ただ、それだけだった。


ノアは、

少しだけ首を傾げた。


誰かが、

すれ違いざまに言った。


「大丈夫だよ。

 みんな信じてるから」


ノアは、

何も言わずに歩き出した。


背後で、

巨大な広告塔がきしみ、

わずかに傾いた。


誰も、それを見なかった。


誰も、それを指摘しなかった。


だが──

微かな音だけが、

街の喧騒の中で、確かに鳴り続けていた。

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