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第19章 夢なき村
村には、朝がなかった。
太陽は昇っていた。
だが、誰もそれを見上げなかった。
目を覚ました人々は、
ただ静かに作業場へ向かう。
子どもたちは、
遊ばない。
走らない。
問いかけない。
村には、
「未来」がなかった。
それは失われたわけではない。
初めから、存在しなかった。
誰も、
何かになろうとしなかった。
何かを願おうともしなかった。
夢を語れば、
「非効率」と言われた。
願いを語れば、
「無意味」と切り捨てられた。
ノアは、
村の広場に立っていた。
そこには、
壊れた時計塔があった。
針は動かず、
鐘は鳴らない。
だが人々は、
そこに時間が刻まれていると信じていた。
「誰が止めたのか」
「なぜ鳴らないのか」
誰も問わなかった。
誰も、
「その必要はない」と思っていた。
ノアは、
広場の中心に座った。
ただ、空を見上げた。
光が、
静かに石畳に落ちていく。
子どもが一人、
ノアのそばに腰を下ろした。
何も言わず、
同じ空を見た。
やがて、
その子が呟いた。
「……あれが、空か」
ノアは、
何も答えなかった。
だが、
その子はもう一度、
空を見上げた。




