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第18章 静かに腐る都市
かつて、
この都市は輝いていた。
ノアが足を踏み入れたとき、
その面影は、かろうじて残っていた。
だが──
高くそびえる塔も、
美しく整えられた街路も、
静かに、音もなく、
崩れかけていた。
人々は、
それを見なかった。
いや、
見えていても、
見ないふりをしていた。
ひび割れた舗道を、
誰も修復しなかった。
軋む塔の骨組みを、
誰も見上げなかった。
機能不全に陥った仕組みの上で、
人々は、
まるで「正常」であるかのように、
日々をなぞっていた。
ノアは、
崩れた階段を静かに上がった。
かつて展望台だった場所は、
いまや、
風と砂に侵食されるだけの空間になっていた。
遠く、
微かなざわめきが聞こえた。
──まだ、大丈夫だ。
──問題ない。
そんな声が、
どこからともなく、
繰り返されていた。
ノアは、
誰にも聞かれることのない声で、
ただ、呟いた。
「……終わりは、もう始まっている」
だが、
誰もそれを聞き取ることはなかった。
都市は、
静かに、確かに、
腐敗していった。
それを、
誰も止めなかった。
それを、
誰も認めなかった。
ノアは、
風に吹かれながら、
静かに都市を後にした。
背後で、
塔の一部が、
音もなく崩れ落ちた。




