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第17章 眠ることなき町
夜だった。
だが──
町は、眠っていなかった。
光は消えず、
音も絶えず、
すべてが止まらずに動き続けていた。
昼と夜の区別はなく、
誰もが「起きていること」を求められ、
時間という名のレールを、
止まらぬまま走っていた。
ノアは、
その町のはずれに立っていた。
遠くから、
高周波のような音が響いていた。
通知。
信号。
管理。
監視。
応答。
絶えず何かが、
誰かに届いていた。
そして誰も、
それを手放せなくなっていた。
眠らぬまま、
目を開き続ける町。
意識を閉じることは、
ここでは「拒絶」とみなされた。
眠る者は、
社会の回路から切り離されると。
ノアは、
静かに腰を下ろした。
目を閉じる。
何も応答しない。
何も反応しない。
光の粒子が、
ノアのまわりだけ、わずかに揺らいだ。
数分後、
近くにいた少女がつぶやいた。
「……いいな。
寝てみたいな、わたしも」
誰かが、
その少女を咎めた。
「ダメだよ。
止まったら、置いていかれる」
ノアは目を開けた。
立ち上がった。
何も言わず、歩き出した。
町の光は、変わらなかった。
だが──
その少女の足は、一歩だけ遅れた。




