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第16章 役割に縛られた地
朝焼けの中、
ノアは、静かに門をくぐった。
そこは、
整然としていた。
誰もが、
同じ制服を身にまとい、
決められた動きを繰り返していた。
挨拶の言葉、
歩く速さ、
目線の高さ──
それぞれが、
与えられた「型」の中に収まっていた。
この地では、
「自由」は存在していた。
だがそれは、
「役割の中で許された行動」
として、整備されていた。
役目を果たす者だけが、
価値ある存在とされた。
何者であるか、
ではなく──
何を担っているか、だけが問われた。
ノアの姿を見て、
一人の青年が声をかけた。
「あなたの役割は?」
ノアは、
何も言わずに首を傾げた。
青年は、少しの沈黙ののち、
微かに笑い、
道を譲った。
「役割のない人間も、
一応、観察対象にはなるそうです」
ノアは、歩き出した。
通りを過ぎるたび、
人々の視線がわずかに揺れた。
それは、
“定義されない存在”への違和感。
この地にとって、
最も脅威となるのは──
未定義のまま存在する者だった。
だが、
ノアはそれを、
ただ受け止めていた。
定義されないまま、
沈黙のまま、
ただ存在していた。
風が、ほんの少しだけ、
この地の空気を乱した。




