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第13章 戦う理由なき国
赤く染まった空の下。
ノアは、また歩いていた。
眼下に広がる大地には、
いくつもの砦と、
いくつもの旗が立っていた。
国と国が境界を作り、
誰もが、
「敵」と「味方」を識別するためだけに、
武器を持っていた。
だが──
その誰もが、
なぜ戦うのかを知らなかった。
生まれたときから、
敵がいて当然だった。
守るべき旗があって当然だった。
理由は、
とうの昔に失われていた。
それでも、
剣を下ろす者はいなかった。
境界を消す者もいなかった。
ノアは、
草むらを踏みしめ、
静かに歩き続けた。
右手には、
何もない。
キューブも、
剣も、
言葉も、
今はなかった。
ただ──
足元に広がる乾いた土に、
わずかに、
静かな風が流れていた。
一人、
また一人。
砦の影から、
誰かが、
そっと武器を地に置いた。
互いに向き合い、
ただ、
黙って、
見つめ合った。
何も叫ばず、
何も誓わず、
ただ静かに。
理由のない戦いは、
理由のないまま、
少しずつ、
ほどけ始めていた。
ノアは、
境界を越えた。
誰の許可も、
誰の理解も、
必要とせずに。
砦の影が、
静かに背後へと流れていった。
風が、ひとつ、
境界線を越えて揺れた。




