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第12章 正答を求め続けられる町
風が、乾いた大地を撫でる。
ノアは、またひとつの町に辿り着いていた。
整然と並んだ家々。
よく磨かれた広場。
無駄のない動きで行き交う人々。
だが、
町に満ちているのは、
静けさではなかった。
どこか張り詰めた空気。
答えを探し続けるような、焦燥の気配。
広場の中央に設けられた掲示板には、
びっしりと正答らしき文章が貼られていた。
「この行動が正しい」
「この選択が最適だ」
「この思考こそが正答である」
無数の正しさが並び、
無数の誰かが、それに必死で従っていた。
誰も問いを発していなかった。
ただ、
「何が正しいか」
だけを、追い求めていた。
ノアは、無言のまま、
広場を横切る。
右手のキューブが、微かに脈打った。
けれど、ノアは何も言わない。
正しさを求め続けた町は、
やがて、
自ら問いを発する力を失っていた。
ノアは立ち止まる。
一歩、
また一歩、
砂を踏みしめながら、
掲示板の前に立つ。
そして、
何も貼られていない一隅に、
そっと指を伸ばした。
そこに、
たった一文字だけ、
何も求めない小さな「問い」を、
静かに刻んだ。
──
ノアはまた歩き出す。
振り返ることはない。
後ろで、
誰かが微かに立ち止まる気配だけが、
砂に吸い込まれていった。
風が、乾いた広場をさらっていった。




