69. 真里さんの左肩が光った瞬間、私たちは抗争の中心にいた
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【サクラ視点】
美桜さんは、なぜかクロの顔をガシガシ触っていた。
「ちょ、ちょっと美桜さん? 何してるんですか?」
クロは大人しくしている。いや、たぶん大人しくせざるを得ないのだと思う。美桜さんの目が怖い。一方で、真里さんはテレビを見つめていた。画面には、天照院総長と羅刹組首領が向かい合う映像。真里さんの兄。天羽義道さんが、そこにいる。
「お兄様…」
真里さんの声が震えていた。私は、大丈夫という意味を込めて、真里さんの手を握った。その瞬間だった。真里さんの左肩が、一瞬だけ光った。
視界が白く弾けた。足元の感覚が消える。一瞬、体が宙に浮いたような気がした。そして次の瞬間。私は、見知らぬ屋外に立っていた。
「……え?」
周囲には、大勢のハンターらしき人たち。少し離れた場所では、天照院と羅刹組らしき集団が向かい合っている。隣にいるのは、真里さん。でも、クロがいない。美桜さんもいない。ここ、どこ?どうして?私がキョロキョロしていると、目の前の男が一歩近づいた。そして、剣を真里さんの首元へ突きつける。
「動くな」
背筋が凍った。
男は、真里さんを盾にするように立った。
「天羽総長、これ以上、抵抗しないでください」
天羽総長。それって、真里さんのお兄さんよね。いるの?ここに?私は視線を動かした。少し離れた場所に、片膝をついた男性がいた。たぶん、あの人が天羽さん。真里さんの兄。そのすぐ近くには、傷ついた大柄な男もいる。羅刹組の首領、鬼塚さんだろうか。突然、その男が怒鳴った。
「影臣ぃ! 貴様、何をやっている!」
影臣。目の前の男の名前らしい。
「首領、ここは私に任せてください」
影臣は、真里さんの首元に剣を当てたまま言った。
「これで、我が羅刹組が日本一のクランです」
何を言っているのか、分からなかった。いや、言葉は分かる。でも状況が分からない。
「さあ、ナンバーズよ。天照院に攻撃を」
その声に反応して、羅刹組側の数人が走り出した。ちょっと待って。私、ついていけない。どゆこと?その時、影臣の視線が私に向いた。
「そこの女。お前はなんだ?」
「なんだ、と言われましても…真里さんのお友達で……」
「まあいい。その女と一緒にそこに座れ」
影臣の目は笑っていない。
「抵抗したら、問答無用で斬る」
もしかしなくても、ピンチだった。
私は、言われるままその場に座った。真里さんも、剣を突きつけられたまま動けない。クロ。私は心の中で呼んだ。けれど、影の中にクロはいない。いつもなら、すぐそこにいるはずなのに。たぶん、私と真里さんだけがここに飛ばされたのだ。クロと美桜さんは、私のマンションに残っている。どうしよう。私一人では戦えない。真里さんを守りたいのに、動けば剣が動く。何もできない。クロ。どうしよう。なんで、今ここにいないの。
そんなことを考えていた時、目の前に一人の男が増えていた。大きい。ただ立っているだけで、空気が重くなる。羅刹組首領、鬼塚鉄心。
「影臣。おめぇ、何やってんだ?」
低い声だった。怒っている。でも、ただ怒鳴っているだけではない。影臣は、真里さんに剣を突きつけたまま答えた。
「首領、天下を取りましょう。羅刹組ならできます」
「あ?」
「こいつが手中にあれば、天羽を倒せます」
鬼塚さんが、一歩近づいた。
「それ以上近づけば、こいつを殺します」
「…てめぇ、俺がそれで止まると思ってんのか?」
「止まりますよ」
影臣は言い切った。
「あなたは、喧嘩を汚す者を嫌う。なら、人質を殺させるような喧嘩も嫌うはずだ」
鬼塚さんの足が、止まった。
「すみません、首領」
影臣の声が、少しだけ震えた。
「私は、尊敬するあなたに……羅刹組に、天下を取ってほしいんです」
それは、叫びに近かった。
「俺は、あなたに拾われた人間です。あなたに天下を。羅刹組に、日本一を」
影臣の目は本気だった。狂っている。でも、ただの悪意ではない。尊敬。恩義。忠誠。そういうものが、変な形にねじれてしまったように見えた。だけど。だからといって、真里さんを人質にしていい理由にはならない。その時、少し離れた場所から声が響いた。
「鬼塚ー!」
天羽さんの声だった。鬼塚さんが、わずかに振り向く。
鬼塚さんが、天羽さんの声に反応して振り向いた。ほんの一瞬。それだけだった。けれど、影臣はその一瞬を待っていた。彼の手元で、魔道具が光る。次の瞬間、黒い帯のようなものが地面から伸び、鬼塚さんの腕と体に絡みついた。
「なっ…!」
羅刹組側がざわめく。鬼塚さんの体が、わずかに沈む。あの鬼塚さんが、動きを止められている。信じられなかった。首領まで。自分が尊敬しているはずの人まで、影臣は止めた。
「これでいいんです」
影臣は、苦しそうに笑った。
「これで、羅刹組は勝てる」
私は息をするのも忘れていた。状況は、さらに悪くなった。
本編をお読みいただきありがとうございました!
サクラと真里が転移?どうして??
実は……気づいた方はいらっしゃいましたでしょうか?
この展開、わずか4話前の「第65話」で、あいつが【肩に触れた】瞬間に、すでにすべて仕込まれていたんです!
「あそこが伏線だったのか!」と思った方は、ぜひ第65話の該当シーンを読み返してみてくださいね。点と点が繋がる快感を味わえるはずです……!
次回は明日朝の更新です。
物語はここからさらに加速していきますので、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!




