表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/121

65. クラン抗争より納期が怖いので、会社に荷物を取りに行きます

いつも応援ありがとうございます!

当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


最新話までじっくりお楽しみください!

【サクラ視点】

 天照院(あまてらすいん)羅刹組(らせつぐみ)の抗争は、私の会社の近くで起きていた。ニュースでは、周辺地域の企業に休業要請が出されたと報道されている。さらに、外出自粛の通知まで届いた。つまり、今日は会社が休み。よっしゃー!……と、思った。思ったのだけれど。私には今週納期の仕事があった。しかも、必要なパソコンと資料は会社に置いたまま。休みになったからといって、納期が消えてくれるわけではない。現実は、モンスターよりしつこい。私は深くため息をついた。

「会社に、荷物取りに行かなきゃ…」


 私が外出の準備を始めると、真里(まり)さんもなぜか立ち上がった。

「何してるんですか?」

「お出かけですよね? 付いていきますわ」

「いやいやいや。真里さんは危険なんです。ここで待機していてください」

「何を言っていますの?」

 真里さんは、きょとんとした顔で言った。

「サクラさんこそ危険ですわ。私も一緒にいた方が良いに決まっています」

「でも、真里さんが狙われたら…」

「だからこそ、一人でいるよりサクラさんと一緒の方が安心ですわ」

 そこから、しばらく問答が続いた。けれど、真里さんは折れない。お嬢様の芯は、思った以上に強かった。私は最終的に、肩を落とした。

「仕方ないか…」

 こうして、私は真里さんを連れて会社へ向かうことになった。


 外に出ると、街の空気はいつもと違っていた。人通りは少ない。店のシャッターもいくつか閉まっている。遠くではサイレンの音がしていた。真里さんは、静かに周囲を見ている。私もできるだけ早足で歩いた。何事もありませんように。そう願いながら会社へ向かう。結果として、何事もなく職場には着いた。会社の中には、思ったより人がいた。みんな考えることは同じらしい。納期。締切。取引先。抗争が起きても、仕事は消えない。分かる。すごく分かる。


 資料をまとめていると、後ろから声をかけられた。

「サクラさん、おはよう。納期関係?」

 振り向くと、藤堂(とうどう)さんだった。今日も爽やかスマイル。こんな状況でも眩しい。

「おはようございます。そうです。今週末が納期で、パソコンと資料を取りに来ました」

「そうだね。あそこの会社は納期にうるさいからね」

 藤堂さんは苦笑した。

「それにしても、早く帰った方がいい」

「はい。すぐに帰ります」

 藤堂さんの視線が、私の隣へ向く。

「えーっと、そちらの方は?」

「えーっと…友人の、ハンターでして。二人なら安心かもって」

「そっか。サクラさんもハンターやってたね」

「私は趣味程度ですが…あはは」

 そう言って、私は荷物を抱えた。

「それでは帰ります。お先に失礼します」


 私と真里さんが背を向けようとした時だった。藤堂さんが、軽く私の()()()()()。そして、真里さんの()()()

「ハンターさんには、いつもお世話になっております」

 そう言って、いつもの笑顔を浮かべる。

「二人とも、気をつけてね」

「ありがとうございます」

 私は軽く頭を下げた。ほんの少しだけ、肩に残る感触が気になった。でも、それは一瞬のことだった。この状況で心配してくれたのだろう。そう思って、私は会社を出た。


 会社を出て、家へ向かって歩き出す。真里さんは、少し楽しそうに言った。

「とても良い人でしたわね」

「そうね。お世話になっている先輩で、うちの課の主任でもあるの」

「まあ。もしかして、サクラさんの想い人かしら?」

「ち・が・い・ま・す!」

 私は即答した。

「あら、そうですの? お似合いですわよ」

「さすがにタイプじゃないというか……」

「では、どんな男性が好みですの?」

「え?」

 その瞬間、頭の中にクロの人型が浮かんだ。黒い翼も角も隠した、白いシャツ姿のクロ。いやいやいや。私は慌てて頭を振った。今のなし。消えろ、頭の中のクロ。そして、私は言い切った。

「好きになった人がタイプです!」

 真里さんは目を丸くして、それからふわりと笑った。

「あら。それも素敵ですわね」


 その時、真里さんのお腹が小さく鳴った。真里さんは、少し頬を赤くする。

「それにしても、お腹が空きましたわ」

 早い。昨日、あれだけピザを食べたのに。

「あそこで、おにぎりをテイクアウトしていきませんか?」

 真里さんが指差した先には、おにぎりとからあげの店があった。テイクアウト。うん。いいけど。真里さん、お金持ってないよね。しかも、たくさん食べるよね。そう思ったところで、私は思い出した。私、一応ダンジョン攻略でけっこうお金があるんだった。よし。

「買っていきますか!」

「そうこなくっちゃ! ですわ♪」

 真里さんの顔が一気に明るくなった。


 帰ってから、真里さんはおにぎりを10個、からあげを20個、ぺろりと食べた。ぺろり。本当に、ぺろりだった。食べ方は綺麗だ。上品だ。でも量がおかしい。私が呆然としていると、真里さんは少し恥ずかしそうに笑った。

「なんだか、食べられない時の恐怖があるのですわ」

「食べられない時の恐怖?」

「はい。理由は分かりませんの。でも、食べられる時に食べておかないと、落ち着かないと言いますか…」

 その言葉に、私は少しだけ笑えなくなった。真里さんはお嬢様だ。食べ物に困る生活をしてきたとは思えない。なら、この感覚はどこから来ているのだろう。マリーさん。その名前が、頭に浮かんだ。真里さんの中にある、前の誰かの記憶。もしかすると、その影響なのかもしれない。私は何も言えず、ただ空になったおにぎりの包みを見つめていた。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださった方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

いよいよ始まった第4章、ここからさらに物語は加速し、熱い展開へと突入していきます!


面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、第4章を突っ走る凄まじいエネルギーになります!

(星は1つからでも、ポチッと気軽に押していただけると大喜びします!)


【公式X(Twitter)&活動報告で世界観公開中!】

Xにて、サクラや大悪魔の【AI生成イラスト】、作品の【オリジナルAI音楽】、執筆裏話などを投稿しています。

1タップで直接聴きにいける試聴リンクは、マイページの【活動報告】にも用意してありますので、読後の余韻に浸りながらぜひ覗いてみてくださいね!

X公式アカウント:https://x.com/WaiWair99

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ