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55. 正義と金と暴力が、同じ卓についた

いつも応援ありがとうございます!

当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


最新話までじっくりお楽しみください!

 【登場人物】

 天照院(あまてらすいん)

 ダンジョン攻略を第一目標にする正統派正義クラン

 総長:天羽義道(あもうよしみち)

「正義と攻略」


 月華楼(げっかろう)

 美と金で女性ハンターを守る、現実主義の資源商クラン

 楼主:九条椿姫(くじょうつばき)

「美と金」


 羅刹組(らせつぐみ)

 強さこそ正義と信じる、実力至上主義の武闘派クラン

 首領:鬼塚鉄心(おにづかてっしん)

「力と暴力」


 ハンターギルド総帥:

 御剣宗一郎(みつるぎそういちろう)

 戦うハンターをどう動かすかを決める人。

 ・元Sランクハンター


 ハンターギルド事務次官:

 久我玲司(くがれいじ)

 ハンター社会をどう維持・管理するかを決める人。

 ・官僚



【本編】

 月に一度、ハンター社会の中枢では、三大クランとハンターギルドによる定例会談が行われる。参加者は限られている。S級クラン、天照院(あまてらすいん)月華楼(げっかろう)羅刹組(らせつぐみ)。それぞれのトップに加え、ハンターギルド総帥、そして司会進行を務める事務次官。たった5人。だが、その5人の判断ひとつで、日本のハンター社会は大きく動く。この日も、会議室には重い空気が流れていた。いつものことだ。三大クランは協力関係にある。ただし、仲良しという意味ではない。


 天照院からは、総長である天羽義道(あもうよしみち)。正統派クランの長らしく、背筋を伸ばし、余計な言葉を口にしない男である。

 月華楼からは、楼主の九条椿姫(くじょうつばき)。優雅な微笑みを浮かべているが、その内側にある圧は決して柔らかくない。

 羅刹組からは、首領の鬼塚鉄心(おにづかてっしん)。机に肘をつき、堂々と座る姿は、会議室というより戦場にいる方が似合っていた。

 そしてハンターギルドからは、総帥の御剣宗一郎(みつるぎそういちろう)。ハンターをどう動かすかを決める者たちの頂点。その隣に座るのが、事務次官の久我玲司(くがれいじ)。ハンター社会の制度と管理を担う、実務の頂点である。

 この5人が、今回も同じ円卓についた。


 今回の最初の議題は、先日起きた天照院の謀反未遂事件だった。天照院本部の爆破。天花隊(てんかたい)の洗脳。真里の拘束。総長襲撃未遂。どれも一歩間違えれば、三大クランの一角が崩れていてもおかしくない事件である。司会を務める久我玲司が、資料を確認しながら口を開いた。

「天羽さん、報告ありがとうございました。皆さんにも先に資料を渡した通りになります。何か意見はございますか?」

 最初に口を開いたのは、九条椿姫だった。

「洗脳と書いてありますが、目星はついているのかしら?」

 その声は柔らかい。しかし、質問は鋭い。天羽は静かに首を振った。

「いえ、全く。なので、これ以上は今のところ何もできることがありません」

 会議室の空気が、少し重くなった。


「おいおい、そんなんで大丈夫なんかよ?」

 鬼塚鉄心が、遠慮のない声で言った。天羽は表情を変えない。だが、内心では思っていた。一番怪しいのは、お前のところだ。洗脳道具。ナンバーズらしき男。手の甲に刻まれたNo.。羅刹組の影は濃い。だが、証拠がない。証拠がないまま羅刹組を責めれば、この場は一瞬でただの喧嘩になる。時間を無駄にするだけだ。

「天羽」

 御剣宗一郎が口を開いた。

「お前のことだ。油断していないことは分かっている。うまく収めろ」

「はい。皆さんにはご心配をおかけしました」

 天羽は静かに頭を下げた。事件は収束した。だが、火種は消えていない。


 久我は場の空気を切るように、次の資料へ視線を落とした。

「次に、今月新しく発見されたダンジョンについてです。新規発見は5件。いずれも地方に発生しており、現時点では浅いダンジョンと見られています」

 5件。世界にダンジョンが出現してから、すでに15年。それでも、新しいダンジョンは増え続けている。

「現在、調査隊を派遣しております。詳細は資料をご覧ください」

 三大クランのトップたちは、それぞれ資料に目を通した。新規ダンジョンの発生は、珍しいことではない。しかし、珍しくないからこそ、問題なのだ。


「続いて、今月攻略されたダンジョンについてです」

 久我の声が、わずかに低くなった。

「今月、攻略が確認されたダンジョンは2件。先月と比べ、大幅に減少しています」

 会議室に、別の重さが落ちた。ダンジョンは増える。しかし、攻略は進まない。その差が広がれば、いずれスタンピードや資源不足、周辺地域の魔素汚染へつながる。

「皆さまの現状を教えてください」

 最初に答えたのは、天羽だった。

「天照院は中規模ダンジョンのスタンピード対応に当たっていました。その後、今回の謀反未遂事件が発生し、攻略活動は停止せざるを得ませんでした」

 次に、九条が口を開く。

「月華楼は先月発見したダンジョンの資源確保中です。間もなく、そのダンジョンを攻略する予定です」

 そこで鬼塚が笑った。

「はっはっはっ、相変わらず金に目がねぇな」

 次の瞬間、九条の殺気が飛んだ。

「…鬼塚さん?」

「すまねぇすまねぇ。お前にはかなわねぇな」

 鬼塚はまったく悪びれずに笑った。


 鬼塚は椅子の背にもたれながら言った。

「羅刹組は、ちょっと色々ごたついて攻略できなかった。まあ、番外(ばんがい)が言うにはもう大丈夫だ」

 番外。羅刹組首領直属の補佐、黒瀬影臣(くろせかげおみ)。粗暴な者が多い羅刹組において、例外的に頭脳を任される男である。

「来月には動いてもらえるのですか?」

 久我が確認する。鬼塚はニヤリと笑った。

「おう、任せておけ!」

 その言葉がどこまで信用できるかはともかく、羅刹組が動く意思を示したことだけは確かだった。


「ああ、そうでした」

 久我は資料の一部をめくった。

「今回攻略された2件ですが、資料にある通り、1つは百層の大規模ダンジョン。もう1つは15層の超小規模ダンジョンです」

 その場の空気が、わずかに変わった。百層。それは、三大クランでも簡単に攻略できるものではない。

「どちらも、攻略者はクラン無所属です」

「なに?」

 天羽が顔を上げた。

「俺は聞いていないぞ。素晴らしいことじゃないか」

 九条も資料へ視線を落とす。

「1つはアタシのクランのメンバーが個人で参加して攻略したわ。でも、大規模ダンジョンを無所属なんて…凄いわね」

 それは間違いなく異常だった。15層の小規模ダンジョンならまだ分かる。だが、百層の大規模ダンジョンを無所属が攻略する。そんなことは、普通ならありえない。


「詳細は、公開できる範囲でまとめてあります」

 久我はそう言って資料を配った。個人情報は伏せられている。所属も、名前も、詳細な能力も明かされていない。しかし、三大クランのトップたちは、それぞれの情報網を持っている。何も気づかないはずがない。九条は静かに資料を見つめていた。天羽は、妹を助けた一人の女性と黒狼の姿を思い出していた。鬼塚は豪快に笑う。

「なーに、次は俺さまが攻略してやるよ」

 それが本気なのか冗談なのかは分からない。だが、この瞬間、三大クランの視線は、無所属の攻略者へ向き始めた。こうして、今回のトップ会談も進んでいく。表向きは、いつものように。だが、水面下では確かに何かが動き始めていた。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださった方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

いよいよ始まった第4章、ここからさらに物語は加速し、熱い展開へと突入していきます!


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