50. サクラを守るため、大悪魔は本気を使わない
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名前:征士郎
レベル:45
状態:洗脳
HP:1,180
MP:390
魔力:360
筋力:1,080
耐久:920
敏捷:1,240
器用:1,050
運 :7
スキル:
【天照流剣術】【縮地】【陽炎歩法】
【斬影】【闘気纏い】【剣気感知】
征士郎のステータスは見た。まず目についたのは、状態異常。洗脳。なるほどな。こいつは洗脳されているのか…しかし、こいつは強い。天照院の次期総長を自称するだけはある。今の俺、影狼クロのステータスでは、正面からやり合って勝てる相手ではない。本来の力が使えれば話は別だ。だが、俺の力はサクラに繋がっている。魂糸共鳴。俺が無理に力を使えば、サクラが壊れる。まったく。面倒な体になったものだ。
名前:クロ
レベル:9
状態:不完全受肉/影狼の器/契約者:佐倉サクラ/魂糸共鳴/深層適性者
HP :780
MP :1,820
魔力:1,650
筋力:680
耐久:730
敏捷:1,050
器用:520
運 :3
とりあえず、黒狼のステータス内で戦うしかない。俺は影を走らせ、征士郎の足元を縛ろうとした。だが、捕まらない。奴は影が動く前に、すでにそこから消えている。速い。目で追えない。いや、目で追おうとするから遅れるのか。奴の剣が横を掠めた。黒い毛が数本、宙に舞う。ちっ。かなりまずい。このままでは、俺はともかくサクラと真里が危ない。俺が少しでも崩れれば、奴はすぐにサクラを狙うだろう。いや、すでに狙っている。
「クロ!」
サクラの声が聞こえた。
「私に気を使わないで、魔法を使って!」
その言葉に、俺は一瞬だけ動きを止めそうになった。気を使うな、だと。無茶を言う。俺が気を使わなければ、お前が死ぬ。だが、状況は悪い。このまま黒狼の力だけで戦えば、先に崩れるのはこちらだ。
「すまない。そうせざるを得ない状況だ」
俺は征士郎から視線を外さずに言った。
「少し耐えてくれ」
サクラが息を呑む気配がした。俺は目を閉じた。視覚では追えない。なら、魔力で追う。
征士郎の魔力の流れを探る。速い。だが、魔力感知なら追える。右。次は左。いや、踏み込む。俺は魔力を極限まで絞った。大質量を放てば、サクラは耐えられない。だから、極小。腕の幅ほどの重力点を、一瞬だけ作る。狙いは、右腕の上腕。
「ブラックホール」
黒い点が生まれた。それは音もなく征士郎の右腕を食い潰す。
「うぐっ!」
征士郎の声が、初めて歪んだ。右腕が、肩から先を失う。当たった。だが、同時にサクラが膝をついた。
「サクラ!」
サクラは四つん這いになり、口から血を吐いた。目元からも、耳からも、赤いものが伝っている。くそ。やはり、負荷が大きすぎる。
今なら追撃できる。右腕を失ったなら、奴の戦闘力は大きく落ちる。殺す必要はない。頭を打ち抜くのではなく、失神させればいい。俺は低級魔法を選んだ。ストーンバレット。小石を弾く程度の魔法なら、サクラへの負担も少ないはずだ。そう思って魔力を練った瞬間、サクラが苦しそうに体を折った。
「っ…!」
俺は魔法を止めた。駄目だ。今のサクラは、低級魔法の余波すら耐えられない。なら、肉弾戦しかない。俺は床を蹴り、征士郎へ突撃した。だが、奴はすでに距離を取っていた。片腕を失っても、動きが鈍りきっていない。奴は傷口を魔道具で焼き、強引に止血していた。
「まさか、ここまで強いとはな……」
征士郎の声が、訓練場の奥から響いた。
俺は征士郎の気配を探った。どこだ。そう思った瞬間、背筋が冷えた。振り向く。征士郎は、サクラの横にいた。片腕を失い、顔色も悪い。それでも、奴の目はまだ死んでいなかった。
「動くな」
征士郎は、残った左手をサクラの首元へ添える。
「動くと、この小娘を殺す」
サクラの体が強張る。俺は動けなかった。
「小娘。召喚獣を解除しろ」
征士郎は冷たく言った。なるほど。こいつは見抜いている。俺の弱点が、サクラだということを。なら、使うしかない。解除させるフリを。
『サクラ、解除するフリをしろ』
念話で伝える。サクラは血の混じった息を吐きながら、わずかに頷いた。
「…解除、します」
サクラの声は震えていた。俺はその言葉に合わせて、影へ沈む。征士郎から見れば、召喚獣が消えたように見えただろう。だが、俺は消えていない。影の中で、人型へ変わる。人型になれば、俺本来のステータスを引き継げる。問題は時間だ。普通の人間から見れば一瞬かもしれない。だが、プロハンター相手には、その一瞬が遅すぎる。だから、影に隠れて変わる。そして使うのは、魔法ではない。威圧。俺の存在そのものを叩きつける。これなら、サクラへの負担は比較的少ないはずだ。片腕を失い、魔力も乱れている今の征士郎なら、落とせる。
影から出る。黒狼ではなく、人型で。角と翼は封じたままだ。征士郎が振り向いた。その顔に、初めてはっきりとした恐怖が浮かぶ。俺は威圧を放った。
「おい」
声が、地下訓練場に低く響く。
「誰の女に手を出している」
言った。勢いで言った。だが、今は訂正している場合ではない。大悪魔としての威圧を、征士郎へ叩きつける。片腕を失い、魔力を乱し、油断していた奴に耐えられるものではなかった。征士郎の膝が落ちる。目が見開かれ、呼吸が止まる。そして、そのまま床へ倒れた。気絶。生きてはいる。俺はすぐにサクラへ駆け寄った。「サクラ、大丈夫か?」
サクラは血のついた口元を押さえながら、弱く笑った。
「うん…アナタの女は無事です……」
おい。そこを拾うな。いや、俺が言ったのだが。俺は一瞬だけ返答に困った。だが、サクラが冗談を言える程度には意識がある。それだけで、少しだけ息ができた。
「無事には見えんがな」
「そこは、かっこよく大丈夫って言うところですよ」
「黙っていろ。今は治療が先だ」
俺はそう言いながら、征士郎の方を見た。
征士郎をこのまま放置するわけにはいかない。近くに転がっていた拘束魔道具を拾い、奴の体に巻きつける。片腕は失っているが、まだ生きている。殺すのは簡単だ。だが、こいつには聞かなければならないことがある。洗脳。真里の兄。まだ終わっていない。
「サクラ、動けるか?」
「…ちょっとだけなら」
「無理はするな」
俺はサクラを支えながら、真里の元へ向かった。真里はまだ拘束されたまま、こちらを見ていた。その目に残っている恐怖を見て、胸の奥が冷たくなる。マリー。いや、真里だ。今度は、間に合った。そう思いながら、俺は真里の拘束へ手を伸ばした。
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【設定裏話:天照院のテーマ曲】
本日のお昼に、作中に登場する正統派クラン「天照院」のイメージテーマ曲をAIで作成・公開しました!
タイトル:『白き翼の誓い』
――信念は刃に、誇りは盾に。
迷宮の闇を照らし、未来を守るために進む。
気高く熱い彼らの戦闘や、組織としてのプライドをイメージした楽曲になっています。彼らが活躍するシーンの裏で流れるBGMとして想像しながら読んでいただけると、より深く世界観を楽しんでいただけるはずです!
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