表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/118

47. 真里さんといる時だけ、クロの機嫌が良すぎます

いつも応援ありがとうございます!

当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


最新話までじっくりお楽しみください!

【サクラ視点】

 クロが出掛けて、しばらくして帰ってきた。でも、なんだか暗い。いつものように偉そうでもないし、文句を言うわけでもない。ただ、部屋の隅に伏せて、じっと黙っている。どうしたんだろう。聞いた方がいいのかな。でも、聞かない方がいいのかな。そんなことを考えていたら、気になって仕方なくなった。え〜い、聞いちゃえ!

「ね〜クロ、どうしたの〜?」

「クロではないんだが…」

「で〜?」

 私がじっと見ると、クロは少しだけ目をそらした。


「どうやら、昔の俺を知っている人間に会った」

「昔のクロを?」

皐月(さつき)と呼ばれた」

 胸が少しだけ跳ねた。皐月さん。美桜(みお)さんが探している人。若葉(わかば)さんのお兄さん。そして、クロかもしれない人。

「それで?」

「逃げてきた」

 クロは短く言った。その声は、少しだけ苦そうだった。

「そっか」

 私は、それ以上責められなかった。たぶん、クロの人型は皐月さんと同じ容姿なのだ。だから、昔の知り合いに気づかれた。

「どうしたもんかね〜。もう言っちゃう?」

 私が聞くと、クロは黙った。

「……」

「だね」

 私も、それ以上は言えなかった。


 本当は、聞きたいことがたくさんあった。どんな人だったのか。何を言われたのか。美桜さんに連絡されそうになったのか。でも、クロが今にも沈んでしまいそうな顔をしていたから、私はそれ以上聞けなかった。これは、私が急かしていいことじゃない。クロが向き合って、クロが選ぶことだ。それに、私だってまだ覚悟ができていない。だから、その話には触れないことにした。そうして、あっという間に日々は過ぎた。


 そして土曜日が来た。今日は、私のレベル上げとクロの調整のために、ダンジョンへ行く予定だ。でも、その前に寄りたい場所があった。スイーツ店。今日、ずっと気になっていた新作スイーツが発売されるのだ。人気商品だから、オープン前に並ばないと売り切れるかもしれない。これは大事。ダンジョンと同じくらい大事。いや、さすがにそれは言いすぎかもしれない。でも、私にとってはかなり大事。私は少し早めに家を出て、スイーツ店へ向かった。


 店に着くと、すでに行列ができていた。やっぱり人気商品だ。早めに来てよかった。そう思いながら列を見ると、先頭の方に見覚えのある縦ロールが見えた。

「オーホッホッホ。早くオープンしないかしら〜」

 げっ。真里(まり)さんだ。素でもあんな感じなの?私はとっさに顔を隠し、なるべく気づかれないように列の最後尾へ向かった。すると、足元の影から、ふわっと嬉しそうな感情が流れてきた。クロだ。真里さんを見て、明らかに嬉しそうにしている。……腹が立つ。なんでそんなに嬉しそうなのよ。本当にマリーさんなの?


 そんなことを考えていたからだろうか。私は、自分の足に自分の足を引っかけた。

「わっ」

 次の瞬間、盛大に転んだ。痛い。恥ずかしい。そして、ものすごく目立つ。行列に並んでいた人たちが、一斉にこちらを見る。当然、真里さんも振り返った。でも、後ろ姿だし。一回しか会ってないし。きっと気づかない。そう思った私は、甘かった。

「大丈夫ですの?」

 真里さんは、ものすごい速さでこちらへ来た。そして、私の腕を取って起こしてくれた。めっちゃ良い人。それは前に会った時も分かっていたけど。来た。絶対にバレる流れだ。


「だ、大丈夫です…」

 私はなるべく顔を見られないように、うつむいた。でも、真里さんの目はごまかせなかった。

「あら。あなた様は、たしかサクラさんでしたわね」

 バレた。完全にバレた。

「ありがとうございます、真里さん…」

「いえいえ、とんでもございません」

 真里さんは私を立たせると、服についた砂やほこりを丁寧にはたいてくれた。

「お怪我はありませんこと?」

「はい、大丈夫です」

「よかったですわ。お友達ですもの、当然です」

 友達。私、友達認定されてた。ありがたい。でも、少し距離の詰め方が早い。


「私も列を飛び出してしまいましたから、後ろに並び直しますわ」

「えっ、だめですよ! みなさんに説明して、前に戻してもらいましょう!」

「いいえ。お友達と一緒の方が楽しいですもの」

「でも、真里さん、先頭の方に並んでましたよね?」

「構いませんわ」

「構いますよ! 私が転ばなければ、そのまま買えたんですから!」

「人を助けて列が後ろになるくらい、たいしたことではありませんわ。私は人々を守るハンターですもの」

「か、かっこいい…けど、申し訳ないです」

「気にしないでくださいまし」

「じゃあ、せめて奢らせてください!」

「それこそ不要ですわ」

「でも!」

「いいえ」

「そこをなんとか!」

「ふふっ、サクラさんは意外と頑固ですのね」

「真里さんもですよ」

 真里さんは楽しそうに笑った。

「では、こうしましょう。今日は一緒に食べる。その代わり、次にどこかでお茶をする時は、サクラさんおすすめのお店を教えてくださいまし」

「…それなら」

 なんだか、次の約束までできてしまった。


 オープン時間になり、無事に新作スイーツを買うことができた。せっかくなので、真里さんと一緒に近くの席で食べることになった。新作スイーツは見た目は可愛い。香りも甘い。一口食べると、疲れが少しだけ溶けていく。最高。なのに、足元の影からは、ずっとご機嫌な気配が流れてくる。クロ。本当に分かりやすい。真里さんといるのが、そんなに嬉しいの?本当にマリーさんなの?私が少しプリプリしていると、真里さんが首を傾げた。

「どうしましたの? 欲しいものが買えませんでしたの?」

「い、いえ。転んだ自分が恥ずかしくて、自分にイライラしてしまって。あはは……」

 我ながら苦しい言い訳だった。でも、真里さんは優しく微笑んだ。

「転ぶことくらい、誰にでもありますわ」


 そこからは、なぜかハンターあるあるの話になった。初心者ダンジョンでスライムに靴を溶かされた話。ゴブリンは弱いけれど油断すると面倒だという話。オークの臭いは本当にどうにかならないのかという話。可愛いスイーツを前にしているのに、会話の中身はまったく可愛くない。花はない。でも、不思議と楽しかった。真里さんはお嬢様みたいな話し方をするけれど、ハンターとしての経験は本物だ。話していると、強い人なんだと分かる。それでいて、人を見下す感じがない。だからだろうか。最初は逃げたかったはずなのに、気づけば普通に話していた。


 その時、真里さんのスマホが鳴った。真里さんは画面を見て、少しだけ姿勢を正した。

「あら。お師匠さまですわ」

「お師匠さま?」

「ええ。私に剣を教えてくださった、大切な方ですの」

 そう言う真里さんの表情は、どこか誇らしげだった。本当に尊敬している人なのだと分かった。真里さんは電話に出る。

「はい、真里ですわ。…ええ。…今、ですの?」

 少しだけ、真里さんの声の調子が変わった気がした。

「分かりましたわ。すぐに向かいます」

 電話を切ると、真里さんは申し訳なさそうに私を見た。

「ごめんなさい、サクラさん。少し用事ができてしまいましたわ」

「大丈夫です」

「また、今度ゆっくりお茶をしましょう」

「はい」

 真里さんは優雅に一礼して、足早に去っていった。足元の影が、ほんの少しだけ揺れた。

「クロ?」

 返事はない。ただ、さっきまでご機嫌だった気配が、少しだけ静かになっていた。

本編をお読みいただきありがとうございました!


一気読みしてくださった方も、毎日追ってくださっている方も、本当にありがとうございます!

面白い、続きが気になる!と思ってくださったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけると、3章執筆の凄まじいエネルギーになります!


実はX(Twitter)にて、サクラや大悪魔の【AI生成イラスト】や、作品の世界観をイメージした【オリジナルAI音楽】、執筆の裏話などを投稿しています!

ぜひ、お気軽に覗いてみてくださいね!

【https://x.com/WaiWair99】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ