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33. 週末ハンターの私、今度は天照院に誘われる

いつも応援ありがとうございます!

当作品は、【毎日 朝06:00 / 夕方18:00】の1日2回、定時更新でお届けしております。


最新話までじっくりお楽しみください!

【サクラ視点】

 真里(まり)さんたちのパーティーと一緒に、私たちは地上へ向かっていた。最初は少し警戒していた。以前、ダンジョン内で助けるふりをして近づいてきた人たちがいたからだ。でも、真里さんたちは普通に親切だった。こちらの歩く速さに合わせてくれるし、周囲の警戒も自然にしてくれる。ただ、気になることが一つある。クロだ。顔はいつもの黒狼のまま。何も喋らず、ただ私のそばを歩いているだけ。でも、魂が繋がっているから分かる。クロの中から、すごく柔らかい感情が流れてくる。薔薇色というか、幸せというか、懐かしいというか。…私といる時、ここまでじゃない気がする。ちょっとだけ、面白くない。


 そんな私の小さなモヤモヤを知ってか知らずか、真里さんは急に振り返った。

「あなた達、私のクランに入るといいわ!」

「え?」

「私がお兄様に紹介してあげるわ」

 あまりにも自然に言われて、一瞬返事に困った。クランに入る。それは、私みたいな週末ハンターにはかなり大きな話だ。しかも真里さんは、まるでお気に入りのお店を紹介するくらいの軽さで言っている。そしてクロからは、またふわっと嬉しそうな感情が伝わってきた。何なの?

 何がそんなに嬉しいの。ちょっと、いや、かなり気になる。


「お兄様のクランとは?」

 私が尋ねると、真里さんは待ってましたと言わんばかりに胸を張った。

「私の尊敬するお兄様は、天照院(あまてらすいん)の総長二代目なのよ!」

「天照院……」

 私は思わず聞き返した。天照院は、日本三大クランの一つ。正統派で、国家との繋がりも強い、日本最大級のクランだ。その総長二代目。つまり、真里さんのお兄さんは、日本のハンター社会でもかなり上の立場にいる人ということになる。

「すごいでしょ。オーッホッホッ!」

 真里さんは、今時どんなお嬢様でもやらないような高笑いをした。…少し、ひいちゃう。でも、なぜだろう。なんだか嫌な感じはしない。


「それはすごいざますわね〜」

 気づいたら、私まで変なお嬢様言葉になっていた。自分で言っておいて、ちょっと恥ずかしい。真里さんはなぜか満足そうに頷いた。

「そうでしょう?」

 通じるんだ。影のように隣を歩くクロから、ほんの少し呆れたような感情が伝わってくる。何よ。私だって、今のはちょっと失敗したと思ってるわよ。


「私は天照院で、天花隊(てんかたい)というパーティーに所属しているの。ここにいる皆がそうよ」

 真里さんが周りの仲間たちを紹介するように手を広げる。

「そうね…クランと言わず、私のパーティーはどう?」

 また来た。私は心の中でそう思った。この前は美桜さんに、月華楼の攻略へ同行してほしいと言われたばかりだ。そして今度は、天照院のパーティーに誘われている。少し前まで、私は土日に浅い階層へ潜るだけの週末ハンターだった。なのに、どうして急に三大クラン関係者から声がかかるのだろう。正直、全然ついていけない。


「すみません」

 私は少し迷ってから、頭を下げた。

「今はまだ、パーティー加入は考えていなくて…」

 真里さんの表情が少し止まる。

「普通に会社で働きながら、休みの日に少しダンジョンへ潜る程度なんです。だから、本格的な攻略パーティーに入るのは、今の私には難しいと思います」

 できるだけ丁寧に言った。真里さんが悪いわけではない。むしろ、心配して声をかけてくれたのだと思う。でも、できないことをできるとは言えない。

「お誘いは嬉しいです。でも、今回はお断りさせてください」

 真里さんは少しだけ目を伏せた。

「そう。それは残念ね…」


 真里さんは、なぜか私ではなくクロを見ていた。そして、少し寂しそうに笑った。その瞬間、クロからも似たような感情が伝わってきた。落ち込み。残念。それから、名残惜しさ。…ちょっと待って。“わ・た・し”のクロまで、どうしてそんなに落ち込んでいるの。私が断ったのよ?なのに、まるでクロの方が断られたみたいじゃない。なんだか、胸の奥が小さくモヤッとした。


 ただ、真里さんはそれ以上強く誘ってこなかった。

「無理にとは言わないわ。また気が変わったら、いつでも声をかけてちょうだい」

 そう言って、いつものお嬢様みたいな笑顔を見せる。その優しさに、私は少しだけ安心した。でも、クロから伝わってくる感情は、まだ少し沈んだままだった。真里さんも、時々クロを見ている。何かある。絶対に何かある。でも、今この場で聞くわけにはいかない。私はクロをちらりと見て、心の中で決めた。帰ったら、絶対に聞く。“わ・た・し”のクロが、どうしてあんなに嬉しそうで、どうしてあんなに寂しそうだったのかを。

本編をお読みいただきありがとうございました!


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