22. 【番外編】弱い私が、それでもハンターを名乗りたかった理由
番外編3本、3話目ラストです。
次の投稿予定は本日の12時です!
【サクラ視点】
私は20歳の会社員だ。平日は普通に起きて、普通に会社へ行って、普通に仕事をして、普通に疲れて帰ってくる。別にその生活が嫌いなわけではない。会社の人がみんな嫌な人というわけでもないし、仕事だってできないほど苦痛ではない。ただ、ふとした瞬間に思うことがあった。このまま、ずっと同じような毎日が続いていくのかな、って。
子どもの頃から、ハンターには憧れていた。テレビの向こうで、ダンジョンから帰ってくる人たち。傷だらけなのに笑っていて、怖い場所へ行ってきたはずなのに、どこか誇らしそうだった。剣士もかっこよかった。魔法使いも派手だった。でも、私が一番惹かれたのは召喚士だった。自分だけの相棒を呼び出して、一緒に戦う。ただ命令するだけじゃない。一緒に考えて、一緒に進んで、一緒に帰ってくる。その姿が、私にはとても眩しく見えた。
だから私は、週末ハンターになった。平日は会社員。土日だけ、浅いダンジョンへ潜る。大手クランに所属しているわけでもない。強い師匠がいるわけでもない。ものすごい才能があるわけでもない。でも、浅層なら私でも潜れる。無理をしなければ素材も集められる。少しずつなら、レベルも上げられる。そして何より、召喚士として自分だけの相棒を育てられる。週末だけ、私は普通の会社員をやめる。それが、少しだけ誇らしかった。
でも、現実はそんなに格好よくなかった。私は弱い。レベルも低い。戦い方もまだぎこちない。咄嗟の判断も遅い。装備だって、強いハンターたちが持っているような高級品ではない。所属クランもないから、何かあった時に守ってくれる大きな後ろ盾もない。ダンジョンに潜るたびに思う。私、本当にハンターって名乗っていいのかな、って。
それでも私は、非日常に憧れていた。強くなりたい。特別になりたい。自分だけの相棒と一緒に、誰かに胸を張れるような冒険をしてみたい。でも、本気で命をかけるほどの覚悟はない。会社員の生活を全部捨てて、ハンター一本で生きていく勇気もない。危険な深層に潜るなんて考えただけで怖い。ダンジョンで死ぬのは、当然だけど嫌だ。憧れているのに、踏み出しきれない。そんな自分が、時々すごく中途半端に思えた。
それでも、何もしないまま終わるのは嫌だった。憧れているだけ。動画を見ているだけ。すごい人たちを眺めて、「自分には無理」と言って終わるだけ。そんな自分にはなりたくなかった。英雄になれなくてもいい。天才じゃなくてもいい。使命に燃えていなくてもいい。週末だけでもいい。浅層だけでもいい。安全第一でもいい。それでも、自分で非日常へ踏み出したかった。
だから、私の目標はとても小さかった。平日は会社員として普通に働く。土日だけ浅層ダンジョンへ潜る。召喚士として相棒を育てる。無理はせず、安全に素材を集める。少しずつレベルを上げる。そしていつか、誰かに聞かれた時、「私もハンターです」そう胸を張って言えるようになる。世界を救いたいわけじゃない。最強になりたいわけでもない。でも、そのくらいの夢なら、私にも持っていい気がした。
私は英雄ではない。天才でもない。強い使命感に燃えているわけでもない。でも、普通の毎日に少しだけ物足りなさを感じていた。会社と家を往復するだけの毎日で終わるのも嫌だった。憧れだけを抱えて諦めるのも嫌だった。もちろん、ダンジョンで死ぬのはもっと嫌だったけど。それでも私は、自分だけの相棒と一緒に、“普通じゃない週末”を手に入れたかった。だから私は、週末だけハンターになる。普通の子でも、非日常へ踏み出していい。そう、自分に言い聞かせながら。
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