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18. 一人でS級ダンジョンを攻略したと言ったら、ギルドが固まった

1日3話投稿、本日3話目です。

次回は明日6時投稿予定

「お待たせしました。サブギルドマスターの(あさひ)です」

 旭と名乗った女性は、サクラの向かいに腰を下ろした。声は丁寧だ。だが、目は笑っていない。

「なんでも、ダンジョンを攻略した方を知っているとかで。お教えいただいてもいいですか?」

 その言葉に、サクラの表情が固まった。俺はサクラの影の中から、そのやり取りを見ていた。影の中からでも外は見える。声も聞こえる。ただし、少しくぐもっているので、細かい声色までは拾いにくい。


 それにしても、いつそんな話になったんだ?サクラは受付で「ダンジョンのことで報告がある」としか言っていない。おそらく受付職員が、勝手にそう判断したのだろう。目の前のサクラは、どう見ても駆け出しに近い若いハンター。装備は傷み、顔には疲労が残り、強者特有の圧もない。そんな彼女が、S級ダンジョンを攻略した。普通は信じない。だから「攻略者本人」ではなく、「攻略者を知っている人物」と判断したわけだ。


「えーっと、実はなんですが……」

 サクラは膝の上で手を握りしめた。言うしかない。ここで嘘をついても、あとで余計に面倒になる。

「ダンジョンを攻略したのは、私でして……」

 個室の空気が止まった。旭は、ほんの一瞬だけキョトンとした顔をした。だが、すぐに表情を整える。さすがサブギルドマスター。驚きはしても、取り乱しはしないらしい。


「失礼ですが」

 旭は言葉を選びながら口を開いた。

「該当ダンジョンはS級に指定されています。攻略には高ランクハンターの大規模パーティー、あるいは大手クランによる準備が必要です」

 旭の視線が、サクラの装備を静かに確認する。

「とても、駆け出しに見えるあなたが攻略できるものとは思えません」

 サクラの顔が赤くなった。怒りではない。焦りと恥ずかしさだ。まあ、旭の反応は正しい。俺だって事情を知らなければ信じない。


「あの、本当なんです!」

 サクラは慌てて身を乗り出した。

「最初は跳ばし鬼に私だけ飛ばされて、その後に他のハンターに襲われて、逃げてる途中で変な階段を見つけて、そこを降りたら最下層にいました!」

 一息で言った。そして、言い終わったあとに自分でも気づいたのだろう。かなり怪しい説明だ、と。跳ばし鬼。他ハンターからの襲撃。変な階段。最下層。単語だけ並べれば、もはや遭難者の証言というより、混乱した新人ハンターの妄言に近い。


 旭はしばらく黙っていた。サクラを馬鹿にするような顔ではない。だが、信じた顔でもない。

「申し訳ありません。あなたを疑いたいわけではありません」

 旭は静かに言った。

「ですが、S級ダンジョンの攻略報告です。証言だけで処理できる内容ではありません。もし誤報であれば、ギルドだけでなく行政、警察、自衛組織まで動く可能性があります」

 そこまで言って、旭はサクラを真っ直ぐ見た。

「何か、証拠はありませんか?」

 サクラは一瞬、固まった。証拠。ある。ありすぎる。迷宮核そのものが、今サクラのマジックポーチに入っている。

「そうだ、写真! ベヒーモスとか迷宮核とか撮ってあります!」

 あれ?いつの間にベヒーモスの写真を撮ったんだ?と思ったが、俺が魔法をしようとした時にしっかり撮っていたようだ。


 サクラは慌ててスマホを取り出した。指先が少し震えている。旭の目つきが変わった。ここから先は、ただの新人ハンターの怪しい話ではなくなる。もし写真が本物なら。もしそこに、S級ダンジョン最下層の証拠が写っているなら。サクラの報告は、ギルド全体を揺らす。サクラは画面を開き、旭の前にスマホを差し出した…

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