16. サクラが最下層に落とされた理由
今日から1日2話投稿、本日1話目です。
次は本日18時投稿の予定でしたが…
やはり本日も3話投稿します!次回は本日12時投稿です!
「サクラ、この迷宮核を入れるマジックポーチか収納魔法はあるか?」
俺が尋ねると、サクラはスマホをしまいながら、腰につけた小さなポーチに手を当てた。
「うん。なんとかギリギリ入ると思うよ」
見た目は普通のポーチだ。だが、魔力の流れを見る限り、内部に空間拡張がかかっている。便利なものだ。
サクラは恐る恐る迷宮核へ近づいた。1歩進むたび、空気が重くなる。迷宮核から漏れる魔力が、波のように広がっていた。俺は魔眼で周囲を探る。罠らしい魔力反応はない。モンスターの気配もない。だが、静かすぎる。こういう時の静けさは、だいたい何かある。
サクラの指が、迷宮核に触れようとした。その瞬間だった。
「おめでとう!」
声が響いた。俺の耳ではない。頭の中だ。念通話とも違う。もっと深い場所に直接流し込まれるような声だった。
「私は大賢者と呼ばれた者だ。少しお話をしよう。※※※※※の資格を持つものよ」
肝心な部分だけが、音にならない。文字にすれば、まさに「※※※※※」。読めない。聞き取れない。認識できない。
「何て言った? ※※※※※の資格とは何だ? そして大賢者とは何者だ? ここはヴァルメリアなのか?」
俺は一気に問いを投げた。相手が誰であれ、こちらの情報を握っている。しかも、俺の魔眼ですら読めない状態異常らしきものを知っている。警戒しない理由がない。
「待って待って、質問は1つずつ。ちゃんと答えるから。まぁ、答えられる部分だけだけどね」
声はやけに軽かった。その軽さが、逆に気に食わない。
「まず、君たちが聞き取れなかった※※※※※は、深層適性者のことだよ」
「深層適性者?」
サクラが小さく繰り返す。
「ダンジョンの魔素に適応する体質。普通の探索者より深層の魔素に馴染みやすい。だから、ダンジョンからも認識されやすい」
大賢者の声は続く。
「罠、モンスター、転移異常、そして最下層。そういうものに引き寄せられるんだ」
その言葉で、サクラの顔色が変わった。なるほど。サクラが転移異常で最下層に飛ばされた理由は、それか。最下層に落ちたのは不運ではない。もっと悪い。理由があった。
深層適性者。言葉だけ聞けば、特別な才能のようにも思える。だが、説明を聞く限り、祝福というより呪いに近い。深層の魔素に適応できる。だから深層に引き寄せられる。生き残れる可能性があるから、より危険な場所へ呼ばれる。実に迷惑な才能だ。
「なぜダンジョンは深層適性者を最下層に呼ぶ?」
俺が問うと、大賢者は少しだけ沈黙した。
「それは、まだ答えられない」
「まだ、だと?」
「ただ言えるのは、ダンジョンコア――君たちで言えば迷宮核は、星のエネルギー、生命を吸っている。それは知っているね?」
「知っている」
地球でも、その仮説はあった。ダンジョンは資源を生む一方で、地上の自然を枯らす。なら、どこかからエネルギーを奪っているはずだ。
「それに近いものだよ」
近いもの。その言い方が、ひどく嫌だった。
「じゃあ、ここはヴァルメリアなのか、地球なのか。どっちだ?」
俺が問うと、大賢者はあっさり答えた。
「地球だよ」
その言葉で、サクラが小さく息を吐いた。俺は逆に、少しだけ黙った。地球。2025年に俺が死んだ星。千年以上の果てに、俺が戻ってきた場所。それが、ようやく確定した。
地球だと分かった。それは大きな前進だ。だが同時に、疑問は増えた。
なぜ、地球の迷宮核に大賢者の声がある?
なぜ、深層適性者のことを知っている?
なぜ、俺とサクラがここに来ることを想定している?
何より――「大賢者。お前は、味方なのか?」
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