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14. 魔法を使えば、先に壊れるのはサクラだった

1日3話投稿、本日2話目です。

次回は本日18時投稿予定

 ヒールをかけ続けると、サクラの状態は少しずつ改善していった。負傷(中)から負傷(少)へ。そして、しばらくすると通常状態へ戻る。呼吸も落ち着いた。顔色も少しだけマシになった。だが、俺はまったく安心できなかった。問題は傷ではない。俺が魔力を込めた瞬間、サクラの内側が壊れかけたことだ。


 俺は改めて、サクラのステータスを確認した。負傷は消えている。そこはいい。だが、状態欄にはまだ見慣れない文字が残っていた。「魂糸共鳴」。そして、「※※※※※」。どちらも俺のステータスにも表示されている。魂糸共鳴は、クロに受肉する前にはなかったはずだ。そして問題は、もう1つ。「※※※※※」。今の俺の魔眼でも、こいつだけは読めなかった。


 俺は意識を集中し、「魂糸共鳴」を解析した。契約によって結ばれた魂の糸が、互いの存在を繋いでいる状態。魔力、権能、スキルを使用した際、その余波が魂糸を通じて契約者へ伝わる。契約者の格がもう一方を大きく上回る場合、弱い側の契約者に強い負荷が発生する。そこまで読み取った瞬間、俺は言葉を失った。なるほど。さっきの吐血は、敵の攻撃ではない。俺の魔力が原因だった。


「なんだこれは……」

 思わず声が漏れた。これでは、まともに魔法もスキルも使えない。重力魔法を少し練っただけで、サクラは吐血した。目から血まで流した。もし本気で魔力を流し込めばどうなる?悪魔の権能を使えば?戦闘用の大技を発動すれば?答えは考えるまでもない。先に壊れるのは、敵ではなくサクラだ。


「どうしたの?」

 目を覚ましたサクラが不安そうに聞いてきた。俺は少し迷った。だが、隠しても意味がない。これはサクラ自身の命に関わる話だ。

「俺とお前は、魂糸共鳴という契約の糸で繋がっている」

「契約の糸?」

「俺が魔力を使えば、その揺れはお前にも伝わる。普通のお前に合う召喚獣なら問題ない。だが、俺は大悪魔だ」

 俺はサクラのステータスを思い出す。レベル6。魔力44。あまりにも差がありすぎる。

「お前の魂には、少々重すぎるようだ」


「じゃあ、あなたが本気を出すと……?」

 サクラの声が小さくなった。俺は答えたくなかった。だが、答えない方が残酷だ。

「お前が先に壊れる」

 念通話が、少しの間止まった。サクラは何も言わなかった。俺も何も言わなかった。ただ、さっきまで安全圏に見えていたこの階層が、急にひどく狭く感じた。


 これからの戦い方を変える必要がある。大技は使えない。権能も危険。魔力の出力は最低限。なら、力で押すのではなく、頭を使うしかない。影狼の身体能力。隠密。誘導。小さな魔法。そして、魔眼による解析。千年生きた大悪魔が、今さら低燃費戦闘を学ぶことになるとはな。


 だが、まだ分からないものがある。「※※※※※」。俺とサクラの両方に表示されている、読めない状態。こいつがあるから、魂糸共鳴なんて厄介な状態で繋がったのか。それとも、魂糸共鳴とは別に、もっと面倒な何かが起きているのか。そもそも、俺は召喚されたわけではない。勝手に魔法陣が現れて、勝手にここへ落とされた。魂を回収した声。消えた魔法陣。読めない状態。分からないことが多すぎる。


 とにかく、今分かっていることは1つだ。俺は、気軽に魔法もスキルも使えない。使えば敵を倒す前に、サクラを壊す。ならば、やることは決まっている。魔力を絞る。スキルを選ぶ。戦う相手を選ぶ。逃げる道を常に残す。慎重に。慎重に、な。

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