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13. ベヒーモスより先に、サクラが血を吐いた

1日3話投稿中!本日1話目。

次は本日12時頃投稿!

 おいおい、なんてステータスだ。レベル72。筋力5,800、耐久7,200。しかもスキルは、見るからに正面から殴り潰すためのものばかり。今の俺がまともに受ければ、普通に潰される。いや、クロの体ごと床の染みになる可能性すらある。このダンジョン、想像以上にヤバいな。まぁ魔法で何とかするしかないな。


「よくあんなのから逃げ出せたな?」

 俺がそう聞くと、サクラの感情が念通話越しに小さく沈んだ。

「転移先が、階段のすぐ前だったの。クロが私を庇ってくれたから……」

 そこで言葉が途切れる。その先は聞かなくても分かった。クロはサクラを逃がした。そして、自分は逃げられなかった。


「そうか。それは運が悪かったのか、良かったのか……」

 俺はクロの奥に残る感情を探った。言葉ではない。記憶でもない。ただ、強い想いだけが残っている。守りたかった。守れてよかった。それだけだった。

「少なくとも、クロは庇ったことを後悔していないぞ」

 サクラは、喜んでいるような、悲しんでいるような顔をした。クロは死んだ。だが、その最後の選択だけは、今もサクラを守っていた。


 ただ、危険な相手ほど、倒した時の見返りは大きい。ベヒーモスほどのモンスターなら、経験値も素材も相当なものだろう。何より、ここで俺がどの程度戦えるのか試しておきたい。この先、同格以上の化け物が出ない保証などないのだから。

「少し試す。サクラは動くな」

 俺は階段から、そっとフロアへ前脚を出した。


 俺は得意の重力魔法に魔力を込めた。ベヒーモスの巨体を、上から押し潰す。起きる前に動きを封じる。それが狙いだった。だが、魔力を練った瞬間。

「あっ……痛い!」

 サクラの声が、念通話越しに弾けた。

「頭が、痛いっ……!」

 俺は一瞬、ベヒーモスではなくサクラの方へ意識を向けた。


 サクラは頭を抱え、その場に膝をついた。最初は頭痛だけだった。だが次の瞬間、口元から赤いものがこぼれた。血だ。

「サクラ?」

 呼びかけた直後、今度は目の端からも血が流れ落ちた。尋常じゃない。俺は即座に魔力を止めた。ベヒーモスどころではない。


 だが、遅かった。ベヒーモスの瞼が開いた。黄色く濁った巨大な目が、こちらを捉える。次の瞬間、床が揺れた。立ち上がっただけで、空気が押し潰されるような圧が来る。

「まずい」

 ベヒーモスが咆哮した。音というより、衝撃だった。俺は戦う選択肢を捨てた。


 サクラは動けない。抱えて逃げるには遅すぎる。なら、影だ。俺はクロの能力を引き出し、サクラの足元に影を広げた。

「サクラ、少し我慢しろ」

 返事を待たずに、彼女の体を影の中へ沈める。次の瞬間、俺は階段へ向かって全力で走った。背後で、ベヒーモスの突進が床を砕く音が響いた。


 元いた階層まで戻ると、俺はすぐにサクラを影から出した。彼女は床に崩れるように倒れた。顔色は悪く、唇にはまだ血が残っている。

「ヒール」

 淡い光がサクラを包む。傷は塞がる。出血も止まる。呼吸も少しずつ整っていく。だが、安心はできなかった。外傷ではない。何かが内側から彼女を壊しかけた。


 俺はサクラのステータスを確認した。

 名前:サクラレベル:6

 状態:負傷(少)/魂糸共鳴/※※※※※

 HP:32

 MP:58

 魔力:44

 筋力:15

 耐久:18

 敏捷:26

 器用:49

 運:9

 契約獣:影狼クロ


 低い。あまりにも低い…。

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