12. 魔法陣は消え、階段の先には化け物がいた
本日3話目です。
次は明日の6時です!
「そうだ。俺は元地球人だ」
念通話だと、日本語を探さなくていい。だから、少しだけ話しやすかった。
「2025年、俺は日本でハンターをしていた。たしか5年目だったはずだ。ダンジョン攻略中に転移事故に巻き込まれて、下層に飛ばされた」
そこまでは、今のサクラとよく似ている。違うのは、その先だ。
「そこでモンスターに殺された。で、次に目を覚ましたら悪魔だった。笑えるだろ?」
「転生って、マジであるんだね」
サクラの反応は、思ったより軽かった。
「おいおい、こんな話を信じるのかよww」
自分で話しておいて何だが、俺なら信じない。元地球人で、ハンターで、死んで、悪魔になって、千年以上生きて、今は死んだ影狼に受肉している。文字にしたら、頭のおかしい経歴だ。
「信じるよ」
だが、サクラは真面目だった。
「クロの心と繋がってるからかな。あなたが嘘を言ってないの、なんとなく分かるの」
「それにしても、どうやら向こうで100年過ごしても、こちらでは1年しか経っていない計算になるな」
正確かどうかは分からない。悪魔の世界での時間感覚など、かなり曖昧だ。だが、俺の体感とサクラの言う2035年を照らし合わせれば、だいたいそんな比率になる。
「まぁ、向こうには神もいたしな。時間の流れが違うくらい、ありえそうではある。」
「神って、そんなことってあるんだね。話についていくのがやっとだよ。」
とはいえ、まだ決めつけるのは早い。ここが地球である可能性は高い。だが、地球に似た別世界という可能性もある。サクラがヴァルメリア側へ飛ばされた可能性だって、完全には消えていない。
「実際、今ここが地球じゃない可能性もある。確認を取りたいな」
俺は周囲を見回した。まず調べるべきは、俺が現れた魔法陣だ。
俺は意識を集中させた。
「魔法解析」「魔眼・真理看破」
クロの目を通して、周囲の魔力の流れを読む。だが、結果は芳しくなかった。魔法陣はすでに消えている。残滓も薄い。普通なら、これだけ大きな転移現象が起きたなら、もう少し痕跡が残るはずだ。それが、まるで最初から何もなかったように消えている。
仕方がない。消えたものを睨んでいても答えは出ない。俺たちは、まず1つ上の階層を目指すことにした。クロの体は思ったより便利だった。視線は低いが、嗅覚と聴覚が人間の比ではない。石壁に染みついた血の匂い。遠くで擦れる爪の音。空気に混じる濃い魔力。そして、その先に――やたらと重い気配があった。
階段を登ると、広い空間に出た。しかし、フロアには入らず、階段から様子を伺う。いた。巨大な獣が、そこに横たわっていた。岩のような皮膚。太い四肢。呼吸のたびに揺れる床。ただ眠っているだけなのに、空間全体がそいつのものになっている。ベヒーモス。名を知らなくても分かる。これは、普通に相手をしていいモンスターではない。
俺は静かに魔眼を発動した。
名前:ベヒーモス
レベル:72
状態:普通
HP:8,800
MP:1,200
魔力:1,500
筋力:5,800
耐久:7,200
敏捷:1,150
器用:480
運:30
スキル:
【巨獣の生命力】【大地震脚】【岩鎧】
【突進崩壊】【咆哮圧】【巨体圧殺】
うん。バケモノだ。
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