表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【資金ショート即敗北】陸自エリートと米軍SEALsの異世界代理戦争。絶対不可侵のボッタクリ村で日雇い農業から始める極限サバイバル  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/25

EP 20

絶望の道化師と50kgの盾(死蟲軍強襲)

「キィィィィィィィッ!!」

ポポロ村の中央広場に、ガラスを引っ掻くような耳障りな咆哮が響き渡った。

地割れから這い出してきたのは、体長3メートルを超える巨大な蟷螂カマキリの怪物たち——『死蟷螂しとうろう型・死蟲機』。鋼鉄の装甲と、あらゆるものを両断する大鎌を備えた殺戮兵器だ。

『さぁ、最高の手品ショーの始まりだ! 悲鳴を上げろ、絶望の顔を見せてくれ!』

穴の底から浮かび上がった道化師の魔人・ギアンが、巨大な鎌を振り回しながら狂ったように哄笑する。

平和な農業の村が、一瞬にして地獄の底へと突き落とされた。

「……ッ! 全隊、射撃開始オープン・ファイア!!」

呆然とする村人たちを背に、いち早く動いたのは現代地球の精鋭たちだった。

エリアス・ソーンの冷徹な号令と共に、SEALsの隊員たちが一斉にアサルトライフルを構え、統制された十字砲火クロスファイアを放つ。

ダダダダダダッ!!

5.56mm弾の雨が死蟷螂型の甲殻に降り注ぐ。

しかし——。

「硬ぇ……! 弾が弾かれやがる!」

義正が舌打ちをする。通常の魔獣なら蜂の巣になるはずのライフル弾が、死蟲機の呪われた甲殻に火花を散らして弾き返されたのだ。

『ヒャハハハ! 無駄だ無駄だぁ! ギュスターヴ・ル・ボンは言ったぜ、「群集は常に極端から極端へと走る」ってな! お前らのそのちっぽけな鉛玉じゃ、俺の可愛い虫たちの装甲は抜けねぇよ!』

ギアンが指を鳴らすと、死蟷螂型の一体が、逃げ遅れた村の子供(犬耳族の少年)へと大鎌を振り下ろそうとした。

「させんわァァッ!!」

ドンッ! と地面が爆ぜる音と共に、坂上信長が神速の『縮地』で割り込んだ。

振り下ろされる死蟷螂の巨大な鎌を下から『夕日丸』で斬り上げ、強引に軌道を逸らす。

「重ッ……! なんちゅう馬鹿力じゃ! 赤城! 村人を地下シェルターへ誘導せい!」

「隊長! でもこの『旗』が……ッ!」

赤城鷹人は、背中に50kgの『黄金の旗』を担いだまま身動きが取れずにいた。

今、この旗を地面に置けばどうなるか。乱戦の最中、もし敵の手に渡りでもすれば、国家の命運を賭けたオーパーツ『世界樹の霊水』を手に入れる権利を永遠に失う。

「……置くな、赤城。それは単なる重りじゃない。……『純金製の質量兵器シールド』だ」

冷静な声と共に、エリアスが赤城の背後に滑り込んだ。

「私が合図したら、旗の柄を軸にして、お前の全体重を乗せて振り回せ!」

「はぁ!? 50kgの金塊を振り回す!? 腕が千切れますよ!」

「アドレナリンと闘気を出せ! 来るぞ!」

キシャァァァッ!!

別の死蟷螂型が、赤城たちを串刺しにしようと突進してくる。

「今だ(ナウ)!!」

エリアスの叫びと同時、赤城が死に物狂いで50kgの黄金の旗を遠心力に乗せて大回転させた。

そこに、エリアスがCQCの要領で赤城の背中を蹴り上げ、旗の回転速度に「自身の脚力」という追加の運動エネルギーを付与する。

ゴガァァァァンッ!!!

大質量×超加速。

50kgの純金の塊が、死蟷螂型の顔面に直撃。銃弾すら弾く強固な装甲が、圧倒的な物理の暴力(ハンマー投げ)の前にひしゃげ、怪物は緑色の体液を撒き散らして吹き飛んだ。

「……マジかよ。50kgの旗が、対物ライフル並みの鈍器になりやがった」

赤城が肩で息をしながら笑う。

「……フッ、素晴らしい応用力だ。だが、虫の数はまだ多いぞ!」

信長が夕日丸に闘気を纏わせ、二体目の死蟷螂の脚を両断する。

『チッ……鬱陶しい猿どもめ。「ハムレット」でも読んどけ! 狂気には狂気で返すのがセオリーだ!』

ギアンが苛立ち、両手の指をピアノを弾くように動かした。

シュルルルルッ!

ギアンの指先から、魔力で編まれた透明な『操り糸』が放たれ、逃げ惑う村人たちの首筋に絡みつこうとする。

村人を操り人形で同士討ちさせ、極限の絶望パニックを引き起こすギアンの最も得意とする外道戦術だ。

「……させませんよ」

——シュッ!!

空気を切り裂く音と共に、数枚の『和紙』が飛来し、ギアンの魔力の糸を中空でスパーンッと見事に切断した。

『あぁ!? なんだ!?』

ギアンが目を見開く先。

そこには、純白の手袋をはめ、完璧な所作で一礼をする人狼族の男——ポポロ村宰相・リバロンが立っていた。

「ポポロ村の住人に手を出すことは、このリバロンが許可いたしません。……『名刺刃キリング・カード』」

リバロンが懐から取り出した数枚の名刺。そこに人狼族の爆発的な闘気を圧縮し、ダーツのように投擲する。

シュパパパパッ!!

時速300kmで放たれた名刺は、死蟲機たちの関節の隙間に正確に突き刺さり、その駆動を次々と停止させていく。

「な、なんじゃあの執事……! 紙切れで装甲車サイズのバケモノを止めおったぞ!」

信長が驚愕する。

「皆さん、ご安心を! 村人たちの地下シェルターへの避難は、ルナちゃんとリーザちゃんが完了させました!」

村長・キャルルが、特注の安全靴をバチバチと鳴らしながら駆けつけてきた。

「お怪我はありませんか!? 今すぐ回復魔法を——」

『ヒャハハハハ! 泣かせるじゃねぇか! 村長自ら前線に出てくるとはな! なら、お前から絶望の淵に沈めてやるよ!』

ギアンが狂笑し、自らの背後に潜ませていた最大級の死蟲機——『死王蟻しおうぎ型』を呼び寄せた。

ズズズズズ……ッ!

広場の地面がさらに大きく陥没し、巨大なダンプカーほどもある蟻の怪物が姿を現す。その腹部からは、無数の小型の死蟲機が次々と産み落とされ、黒い津波のように村を埋め尽くそうとしていた。

「マズい……! 弾薬が足りん! あの数を相手にしたら、村が沈むぞ!」

信長が顔面を蒼白にさせる。

ニャングルから半額で買い叩いたとはいえ、数千、数万と増殖する蟲の群れを前にしては、日米の弾薬はあまりにも少なすぎた。

『さぁ、絶望しろ! お前らの命も、この村も、全て俺の手のひらの上——』

ギアンが勝利を確信し、鎌を振り上げた、その瞬間。

「——誰が、誰の村をどうするってぇ?」

ドォォォォォンッ!!!

死王蟻型の巨大な頭部に、高威力の『魔導誘導バズーカ』の砲弾が直撃し、爆炎が空高く舞い上がった。

『ギャアアアアッ!?』

『な、何ィ!?』

ギアンが驚愕して爆煙の先を見る。

そこには、真紅のクリムゾンアーマーを身に纏い、肩に巨大なバズーカを担ぎ、両腰にガトリングガンを装備した『紅蓮の戦乙女』——自警団リーダーのダイヤ・マーキスが、マジギレの表情で立っていた。

「あんたたちねぇ……!」

ダイヤはバズーカを投げ捨て、魔法ポーチから神滅剣『天魔竜聖剣』をズバッと引き抜いた。

「うちの村の! 中央広場の石畳を一枚修復するのに! ドワーフの石工職人にどれだけ『PGポポロゴールド』を払わなきゃいけないか、分かってて穴開けてんでしょうねェェェッ!?」

命の危機に対する怒りではない。

**『村のインフラ維持費(修繕コスト)』**に対する、極貧賞金稼ぎとしての絶対的な怒りだった。

「ダイヤさん! 激おこです!!」キャルルが拍手喝采する。

「……キャプテン・サカガミ」

エリアスが、冷や汗を流しながら信長に耳打ちする。

「……あの女、前回の配達の時よりキレてないか?」

「当たり前じゃ! 今回は道路工事レベルの破壊じゃからな! 巻き込まれたらワシらもチリになるぞ!」

「払え! 修繕費! そして迷惑料をォォッ!!」

ダイヤの全身から、紅蓮の闘気と炎魔法が混ざり合ったオーラが火柱のように立ち上がる。

「消えなさい! 『大斬撃バーニング・オーラ・ブレイク』ッ!!」

振り下ろされた天魔竜聖剣から、地形をも両断する超質量の炎の刃が放たれる。

ズバァァァァァァァァァァンッ!!!!

産み落とされたばかりの何千という死蟲機の群れが、そして巨大な死王蟻型の巨体が、ダイヤのたった一振りの剣圧によって、文字通りチリも残さず「蒸発」した。

『な……ば、馬鹿な……!? 俺の可愛い死蟲軍が……たった一撃で……!?』

ギアンが仮面の奥の目を見開き、ガクガクと震え出す。

圧倒的な絶望を与えるはずが、逆に**「修繕費にキレた村の自警団員」**という理不尽な暴力の前に、一瞬で戦力を粉砕されてしまったのだ。

「……すげえ。俺たちの戦術がバカバカしくなるほどの火力だ……」

赤城が、50kgの旗を抱えたままポカンと口を開ける。

「……見とる場合か赤城! 敵の親玉ギアンに隙ができとる! このまま制圧するぞ!」

信長が気を取り直し、夕日丸を構えて地を蹴る。

「了解だ! 義正、援護しろ!」

エリアスもまた、TAC-338を構えて義正と共に展開する。

『ヒィッ!? クソッ、クソッ! 覚えてろよイカれ村人ども! 今に、サルバロス様が完全復活して——』

ギアンが捨て台詞を吐き、空間転移魔法で逃亡を図ろうとした。

——だが。

その転移の魔法陣が発動するより早く。

カチッ。

戦場の喧騒を切り裂いて。

絶対に聞いてはならない、真鍮製のオイルライターが弾ける音が、ギアンの背後から響いた。

「……ッ!?」

信長とエリアスの足が、本能的な恐怖でピタリと止まる。

ギアンが恐る恐る背後を振り返る。

そこには、黒いレザージャケットを着たBAR『鬼龍』のマスター、龍魔呂が、虚無の瞳で煙草をふかしながら立っていた。

「……お前ら」

龍魔呂の口から、絶対零度の声が漏れる。

その背後には、死蟷螂に襲われかけ、恐怖で大泣きしている犬耳族の少年の姿があった。

「……俺の村で、子供を泣かせたな」

ゴゴゴゴゴゴォォォッ!!

龍魔呂の指にはめられた『鬼王の指輪』から、空を黒く染め上げるほどの赤黒い闘気が爆発的に噴き出した。

『ヒッ……な、なんだテメェは!? 俺は死蟲王サルバロス様の——』

「……消えろ」

龍魔呂が、親指に小さな小石をセットする。

『鬼神流 指弾』。

ピィィンッ!

放たれた小石は、空間そのものを歪めるほどの赤黒い闘気を纏い、ギアンの胴体を——仮面ごと、後ろの森の木々数百本を巻き込んで、完全な真空のトンネルへと消し飛ばした。

「…………」

「…………」

上半身が消滅し、ゆっくりと崩れ落ちるギアンの残骸。

広場には、圧倒的な静寂が訪れた。

「……終わった」

龍魔呂はタバコの火を揉み消すと、泣いている少年の頭をポンと撫で、「怪我はないか」とだけ言い残し、何事もなかったかのように『鬼龍』の方向へと歩き去っていった。

圧倒的すぎる蹂躙劇。

ポポロ村の住民たち(ダイヤ、リバロン、龍魔呂)の桁違いの実力を前に、日米のエリート軍人たちは、完全に言葉を失っていた。

「……エリアス。ワシら、なんでこんな化け物だらけの村で、旗の取り合いなんかやっとるんじゃろうな」

「……考えるな、キャプテン・サカガミ。思考を放棄しないと、我々の精神が壊れる」

彼らの背中には、未だに50kgの『黄金の旗』が重くのしかかっている。

防衛戦のタイムリミットまで、あと19時間。

国家の威信とオーパーツを懸けた戦いは、死蟲軍という世界の危機すらも「村の日常トラブル」として片付けてしまうポポロ村の狂気の中で、まだまだ続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ