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【資金ショート即敗北】陸自エリートと米軍SEALsの異世界代理戦争。絶対不可侵のボッタクリ村で日雇い農業から始める極限サバイバル  作者: 月神世一


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EP 19

野戦錬金術と市場のハッキング(独占崩壊)

「需要と供給や! アンタら、朝からズボンずり下げて激しい運動しとったんやから、腹ペコペコやろ? 腹減ってる時のメシは、高くても売れるんやでぇ!」

ポポロ村の農地。

ニャングルの運転する移動販売車キッチンカーの前で、坂上信長とエリアス・ソーンは絶望の淵に立たされていた。

荷台に積まれた極上の回復アイテム『PRO型弁当』。

おでんの牛すじが倍増しされたその弁当から漂う暴力的な美味の匂いが、限界まで酷使された彼らの胃袋を無慈悲に刺激する。

だが、その価格「金貨6枚」。彼らが午前中、尊厳ズボンを犠牲にしてダイズラ豆の収穫で稼いだバイト代は「金貨4枚」しかない。

「……クソ猫がァァァッ!! 足元見やがって!!」

赤城鷹人が激昂し、20式小銃のストックを握りしめる。

「よせ、赤城。ここで発砲すればルール違反レッドカードだ」

エリアスが冷たく制止するが、その彼自身も、極限の空腹により心拍数のコントロールが乱れ始めていた。

50kgの『黄金の旗』の防衛時間は、残りあと20時間。

ここで昼飯を抜き、カロリーと闘気が枯渇すれば、午後の労働(防衛)に耐えきれず、確実に旗を落としてしまう。

「……アカン。ワシの親父は『飯は兵士の弾丸じゃ』と教えとった。ここで飯が食えんのは、死を意味する……」

信長が、泥だらけの膝を折ろうとした、その時だった。

「……隊長、泣き寝入りすることはないっす。メシは買えねえなら、創るもんすよ」

赤城が、ニヤリと野獣のように笑いながら一歩前に出た。

それと同時に、東側の陣営からも、眼鏡を中指で押し上げながら力武義正が進み出た。

「そして、市場マーケットとは独占されるものではない。流動させてこそ利益が出る」

義正は魔導タブレットの算盤アプリを弾き、冷徹な笑みを浮かべる。

「ニャングルの『ここでしか飯が買えない』という前提条件(独占販売)を破壊しよう。……赤城、例のブツは揃っているか?」

「おうよ、エリートさん。ストリートの『野戦錬金術』を見せてやる」

赤城は地面に、両軍が「ハズレ」として持て余していた最低のレーションを放り出した。

一つは、SEALsが保有するMRE型メニュー24。味も食感もタイヤと言われる『黄色いゴム(トライバード卵粉末の擬似オムレツ)』。

もう一つは、陸自が保有するL缶メニュー04。補給ミスで届けられた『凍死缶(マイ茄子と太陽芋のペースト)』。

「赤城、義正! お前ら、まさかその『廃棄物』を食う気か!? 胃が死ぬぞ!」

信長が叫ぶが、二人は止まらない。

「そして、メインのタンパク質はこれだ」

義正が指差したのは、午前中に彼らが身を削って収穫した『ダイズラ豆』の山だった。

「待て! その豆は食えば『ズボンがずり下がる』バグがある! 戦場でズボンが落ちたら隙だらけだ!」

エリアスが警告するが、赤城は愛用のガスバーナーと鋼鉄のスチールケース(即席魔導圧力釜)を取り出した。

「Lパウチの教範を思い出してくださいよ。ダイズラ豆のバグは『加工時の熱処理が甘い』から残存するんです。俺の圧力釜で摂氏200度・50気圧の限界突破オーバーリミットで煮込めば、バグは完全に死滅して極上の『大豆ミート』に化けます!」

シュゥゥゥゥッ!!!

赤城の工作スキルが爆発する。

圧力釜の中でダイズラ豆の組織が完全に破壊・再構築され、ホロホロの肉塊へと変わっていく。

さらに赤城は、MREの『黄色いゴム』をナイフで極細の麺状に切り刻み、それをL缶の『マイ茄子のペースト』にぶち込んだ。

「黄色いゴムの弾力を逆利用して『コシの強い麺』にする! そしてマイ茄子の冷却効果で、炎天下にぴったりのキンキンに冷えた麺に仕上げる!」

仕上げに、L缶の底に張り付いていた『粉末豚神スープの素』と、MREのアクセサリーパックに入っていた『醤油草パウダー』、さらに義正がこっそり隠し持っていた『アブラマシ・スプレッド』を全量投入。

「完成だ! ——『日米合同・冷製ダイズラ肉の豚神まぜそば』!!」

ボウルに盛られたそれは、マイ茄子の冷気で涼しげな白い湯気を立て、醤油草とニンニク、そして背脂の暴力的な香りを周囲100メートルに撒き散らした。

「……な、なんちゅう匂いじゃ……ッ!」

信長とエリアスが、理性を吹き飛ばされてボウルに食らいつく。

「美味えェェェェッ!!」

「……オーマイガッ。黄色いゴムが、信じられないほどコシのある極太麺に……! ダイズラ豆の旨味が、豚神のアブラと完璧に絡み合っている!」

致死量のカロリーと塩分、そして冷気が、炎天下で枯渇しかけていた彼らの闘気を『二郎覚醒』の初期段階まで一気に引き上げた。

ズボンがずり下がる気配も一切ない。完璧な無毒化ハックだ。

◆ ◆ ◆

「……なんや、あの匂い。ワイのPRO型弁当のおでんの出汁の匂いが、完全に掻き消されとるやんけ……!?」

移動販売車の中で、ニャングルが嫌な汗を流した。

野戦まぜそばの破壊的な香りは、両軍の兵士だけでなく、ポポロ村の住民をも引き寄せていた。

「モギュ……クンクン……ああっ! なんですかその美味しそうな匂いはぁぁっ!」

パンの耳をかじっていたリーザが、よだれを滝のように流して駆け寄ってくる。

その後ろには、農作業を終えたおばちゃんたちも「美味しそうねぇ!」と群がってきた。

ここで、義正の「商社マン」としての本領が発揮された。

「リーザ君。この極上まぜそば、君にも一杯ご馳走しよう」

義正は悪魔のような笑みを浮かべ、ボウルを一つ差し出した。

「だが、条件がある。……今すぐ、上空で配信しているキュララのカメラに向かって、このメシの『食レポ』を全力で歌いながらやってくれ。Love & Moneyのメロディでな」

「やりますぅぅぅっ!!」

リーザはまぜそばを受け取るや否や、上空のドローンカメラに向かって絶叫した。

「All: 愛! アイ! ラ〜ブラブ! マネー! マネー! 豚神まぜそば最っ高〜!! ニンニクとアブラが細胞に染み渡るわぁぁ♡(ズズズッ!)」

『あーっと! レオンハート軍の義正さんが、謎の絶品料理を錬成しましたぁ! リスナーさんからのスパチャが止まりませーん!』

上空のキュララが実況し、T-TUBEのコメント欄が「美味そう!」「レシピ教えろ!」「タロウ・ペイで投銭する!」と大炎上する。

「よし。これで『宣伝プロモーション』は完了だ」

義正は眼鏡をギラリと光らせ、集まったおばちゃんたちと、スマホを見ているリスナーに向かって宣言した。

「皆様! この『日米合同・豚神まぜそば』、一杯『銀貨5枚』で提供します! ただし、現金(PG)は不要! ニャングル氏の店で使える『弁当引換券』や『物資』との物々交換バーター、あるいはタロウ・ペイでの直接送金でも構いません!」

「買うわ! アタシ、引換券持ってるから一杯ちょうだい!」

「こっちもタロウ・ペイで送金するから、レシピの権利売って!」

一瞬にして、赤城の即席厨房の前に長蛇の列ができた。

義正が構築した『市場を通さない独自の経済圏ブラックマーケット』が、ポポロ村の広場に誕生した瞬間だった。

「……ウ、ウソやろ……」

ニャングルは、自らの移動販売車の前が完全に「もぬけの殻」になったのを見て、持っていた算盤を落とした。

弁当(とくに生鮮食品であるおでんやサラダ)は、時間が経てば価値がゼロになる。

しかも、義正が「引換券」を大量に回収してしまったため、ニャングルは後日、義正に対して莫大な違約金や現金を払わなければならなくなる。

経済を支配していたはずの資本主義の猫が、完全なる『空売り』と『独自市場の構築』によって、たった30分で破産寸前に追い込まれたのだ。

「……負けや。ワイの、完全な負けや……!」

ニャングルはフラフラと車から降りると、義正と赤城の前に土下座した。

「堪忍してぇや! ワイのPRO型弁当、全部『金貨1枚(原価)』でええから買うてくれ! このままやと大赤字で首くくらなアカンようになる!」

「……商談成立だな、ニャングル氏」

義正が、勝利の飴玉をガリッと噛み砕いた。

「俺たちの集めた引換券と、お前の在庫のPRO型弁当・全100食分を等価交換トレードしよう。……次からは、独占市場で足元を見ないことだな」

「おおきに……ホンマにおおきに……(血涙)」

◆ ◆ ◆

午後1時。

「……そぉい! いっち、にっ! いっち、にっ!」

50kgの『黄金の旗』を担いだままの防衛戦は、まだ続いている。

しかし、信長とエリアス、そして両軍の兵士たちの足取りは、午前中とは比べ物にならないほど力強く、満ち足りていた。

赤城の『野戦錬金術』で極限まで闘気を高め、義正の『経済ハック』によって大量のPRO型弁当(夕食と明日の朝食分)を格安で確保した彼ら。

理不尽な異世界のルールと経済的絶望を、現代地球の軍人が誇る「現場力エンジニアリング」と「知略ビジネス」で完全にねじ伏せたのだ。

「……義正、赤城。見事な作戦だった」

エリアスが、背中の旗の重みを感じながらも、かすかに口角を上げる。

「ヘッ、当然っすよ。俺たちをただの駒だと思ったら大間違いだってことを、この村の連中に教えてやっただけっす」

赤城が誇らしげに鼻をこする。

だが、彼らが勝利の余韻に浸っていた、その時。

——ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!

突然、ポポロ村の地下深くから、巨大な地鳴りが響き渡った。

ただの地震ではない。地の底から湧き上がるような、おぞましく、冷たい『死の気配』。

「な、なんじゃ!? 地震か!?」

信長が旗を抱えたまま、足を踏ん張る。

「……違う。何かが、下から『登って』くる……!」

エリアスの心拍数が、警鐘を鳴らして跳ね上がった。

村の中央広場。その地面が突如としてドーム状に隆起し、爆発音と共に弾け飛んだ。

もうもうと立ち上る土煙の中から現れたのは、巨大なカマキリの刃と、無数の蜘蛛の脚を継ぎ接ぎにしたような、悍ましい金属と生肉のキメラ——『死蟷螂しとうろう型・死蟲機』の群れだった。

「キィィィィィィィッ!!」

金属が軋むような咆哮が、平和な村の空気を一瞬にして凍りつかせる。

『ヒャハハハハッ! 見つけたぞォ、新鮮な「魂」の匂いがするなぁ!』

死蟲機の群れの後方、抉れた大地の穴の底から、道化師の仮面を被り、巨大な鎌を持った男がゆっくりと浮かび上がってきた。

死蟲軍の指揮官、魔人ギアンである。

「な……なんじゃあいつらは! ルナミスの兵器か!? いや、違う!」

信長が目を見開く。

『さぁ、最高の手品ショーの始まりだ! 村の連中も、そこの迷彩服の猿どもも、みーんな絶望の顔をして死んでくれよぉ!』

ポポロ村の緩衝地帯という絶対の平和を破り、天魔窟に封じられていたはずの『死蟲王サルバロス』の軍勢が、突如として侵攻を開始した。

「……総員、戦闘態勢ッ!! 旗を死守しつつ、村人を護衛しろ!!」

信長が叫び、エリアスがライフルを構える。

軍人同士の代理戦争は、ここに一時凍結。

黄金の旗を背負ったまま、日米の精鋭たちは、世界を滅ぼさんとする真の脅威『死蟲軍』との、絶望的な防衛戦へと突入していく。

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