表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【資金ショート即敗北】陸自エリートと米軍SEALsの異世界代理戦争。絶対不可侵のボッタクリ村で日雇い農業から始める極限サバイバル  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/25

EP 19

50kgの呪いと、尊厳を奪う豆(ダイズラ豆収穫戦)

「……そぉい! いっち、にっ! いっち、にっ!」

「……隊長、もう無理っす。膝の軟骨がすり減る音が聞こえます……」

月曜日の午前8時。ポポロ村の広大な農地。

陸上自衛隊・レンジャー部隊の精鋭たちは、完全武装のまま『50kgの純金製の旗』を交代で担ぎ上げ、泥に足を取られながらタバコ葉の収穫を行っていた。

本来なら、旗を陣地に持ち帰って強固な防衛線を敷くのがセオリーだ。

だが、彼らには「資金」がなかった。陣地に引きこもれば、夕方にはニャングルの店で弾薬とメシを買う金が尽き、飢えと弾切れで敗北する。

結果として、彼らは「50kgの旗を抱えたまま、日雇いバイトで時給を稼ぐ」という、世界軍事史上に類を見ない狂気のミッションを強要されていた。

「泣き言を言うな赤城! この旗は我が祖国、日本の未来そのものじゃ! 落としたら切腹じゃぞ!」

「なら隊長が変わってくださいよ! っていうか、なんでアメ公どもがすぐ横で涼しい顔して農作業してんすか!」

赤城が血走った目で睨みつける先。

隣のうねでは、エリアスと義正率いるSEALsの面々が、黙々とタバコ葉を摘んでいた。

「……計算通りだ、エリアス。奴らは50kgのデバフ(重量制限)により、作業効率が通常の30%にまで落ちている。対して我々は身軽だ」

義正が魔導タブレットで収穫量のグラフを弾き出す。

「このままバイトの収穫量で圧倒的差をつけ、我々は夕方に極上の『PRO型弁当』で完全回復する。逆に奴らは資金難でメシが食えず、体力が尽きる。……奴らが疲労で旗を落とした瞬間、かっさらう」

「……完璧な兵站ロジスティクス包囲網だな、義正。だが、隙を見せるな。あのサカガミの根性はロジックを超えてくる」

敵であるSEALsが、味方のような顔をして真横で一緒にバイトをしている。

監視とプレッシャー。絶対に隙を見せられない精神的重圧に、陸自の隊員たちの体力はゴリゴリと削られていった。

「お疲れ様でーす! ルナミス軍さん、レオンハート軍さん! タバコ葉の収穫、いいペースですね!」

そこへ、麦わら帽子を被った村長・キャルルとエルフのルナが、笑顔でやってきた。

「あ、そうだ! 今日は特別ボーナスミッションがあります! あっちの畑の『ダイズラ豆』がちょうど収穫時期を迎えたので、そっちもお願いしますね! 単価、弾みますよ♡」

「単価が弾む……!? やるっす! やらせてください!」

資金難にあえぐ赤城が、飛びついた。

「よし、全隊、ダイズラ豆の区画へ移動じゃ! アメ公どもに時給で負けるな!」

信長が号令をかけ、50kgの旗を担いだ陸自と、それを追うSEALsが揃って新たな畑へと向かった。

だが、彼らはまだ知らなかった。

『ダイズラ豆』という作物が、ポポロ村の農産物の中でも一、二を争う**「精神的ブラビティ(重力)兵器」**であることを。

◆ ◆ ◆

「おお、これがダイズラ豆か。大豆みたいじゃが、さやがデカいのう」

信長が、たわわに実った緑色の豆のさやに手を伸ばし、ブチッと収穫した。

その瞬間。

ズルゥゥゥッ……!

「……ん?」

信長が違和感を覚えたのと同時。

後ろで旗を背負っていた赤城の、迷彩ズボンとタクティカルベルトが、何の予兆もなく一気に足首までズリ下がった。

「…………へ?」

秋の涼しい風が、赤城のトランクス(OD色)を撫でる。

「うわああああっ!? な、なんすかこれ! ズボンが! 俺のズボンがァァァッ!!」

「アホ! 旗から手を離すな! 重みで落とすぞ!!」

パニックになった赤城がズボンを上げようと両手を離しかけ、50kgの純金旗がグラリと傾く。信長が慌てて支えに入った。

「……隙ありだ!」

その混乱を見逃さず、エリアスが神速のCQCで踏み込み、旗を奪取しようと手を伸ばした。

そして、エリアスが横を通り抜けざまに、ダイズラ豆を一つ引っこ抜いた、その刹那。

ズルルゥゥゥッ!!

「——ッ!?」

今度は、突進してきたエリアスのズボンと、後方で指示を出していた義正のズボンが、同時に足元までズリ下がった。

「な、なんだこれは……!? ベルトのバックルは外れていないのに、なぜズボンが重力グラビティを無視して下がるんだ!?」

義正が魔導タブレットを落とし、慌ててトランクス姿の足元を押さえる。

常に冷静沈着なエリアスでさえ、星条旗柄のアンダーウェアを晒したまま、片手でズボンを掴んで硬直していた。

「あははっ、言い忘れてました!」

キャルルが、少し離れた安全圏からメガホンで呼びかける。

「『ダイズラ豆』は、畑の肉とも呼ばれる栄養満点の豆なんですけど……収穫の刺激に反応して、半径10メートル以内の人の『カツラ』や『ズボン』を強制的にズラすっていう、ちょっとお茶目な防衛本能(?)があるんです! 気をつけてくださいねー!」

「「「お茶目じゃねええええええッ!!!」」」

日米のエリート軍人たちの悲鳴が、ポポロ村の空に木霊した。

「いかん! 旗を持っとる連中は両手が塞がっとる! ズボンを上げられんぞ!!」

信長が絶叫する。

ダイズラ豆の収穫を続ければ続けるほど、隊員たちのズボンは無限にズリ下がっていく。しかし、収穫の手を止めればバイト代が稼げず、飯が食えない。

そして何より、50kgの旗を支えている者は、絶対に手を離せないのだ。

「隊長ぉぉ! もうダメっす、社会の窓全開で農作業なんて、俺の尊厳が死にます!」

「耐えい赤城! お前の下半身の尊厳か、国家の威信(旗)か! どっちが重いか考えろ!!」

「そんな究極の選択ありますか!?」

「……義正、どうする」

ズボンを片手で押さえながら、エリアスが冷や汗を流して問う。

「……ダメだ、エリアス。このダイズラ豆の単価は異常に高い。ここで収穫を放棄すれば、資金繰りが悪化する。……プライドを捨てろ。片手でズボンを抑え、もう片手で豆を収穫するんだ!!」

「……イエス、サー」

かくして、人類最強の軍事組織による、かつてない地獄の防衛戦が始まった。

「そぉい!(ブチッ)」

ズルゥゥッ!

「ああっ、第3班のズボンが全滅っす!」

「構わん、パンツ一丁になろうが旗は死守せい! ダイズラ豆を引っこ抜けェェッ!」

「U.S.A! U.S.A! 負けるな、片手で収穫スピードを上げろ!!」

半裸の屈強な男たちが、パンツ一丁でズボンを引きずりながら、必死の形相で豆を収穫し、50kgの純金の旗をリレーしていく。

もはや、どちらが勝っているのか、何のために戦っているのかすら分からない、カオス極まる光景だった。

◆ ◆ ◆

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

正午。

お昼のチャイムが鳴り響いた時、農地にはおびただしい数のダイズラ豆の山と……魂が抜け殻のようになり、ズボンの裾を握りしめて倒れ込む日米100名のエリートたちの姿があった。

「お疲れ様でーす! はい、午前の部のお給料です!」

キャルルから手渡された、ずっしりと重い金貨の袋。

その金貨の重みを感じながら、信長とエリアスは、互いのボロボロ(下半身は特に)の姿を見て、乾いた笑いを漏らした。

「……大尉。お前さん、意外と派手なパンツ履いとるんじゃな」

「……キャプテン・サカガミこそ。純白のブリーフとは、クラシックで悪くない」

もはや、殺し合う敵同士という感覚すら麻痺しつつあった。

彼らは共に「下半身の尊厳を失う」という、戦場よりも恐ろしいトラウマを共有してしまったのだから。

「まいどおおきに〜! お昼の移動販売車キッチンカーやで〜!」

そこへ、軽快な音楽と共に、ニャングルの運転する魔導トラックがやってきた。

荷台には、ホカホカの『PRO型弁当』と、各種弾薬が積まれている。

「よし、メシじゃ! 赤城、稼いだ金でPRO型を——」

信長が指示を出そうとした、その時。

ニャングルが、ニヤニヤと笑いながらトラックの側面を開けた。

「あ、言うとくけどな。今日の『PRO型弁当』は、おでんの牛すじが倍増しの大サービスや! せやけど……お値段は昨日の2倍、金貨6枚になりまっせ♡」

「「……は?」」

「需要と供給や! アンタら、朝からズボンずり下げて激しい運動しとったんやから、腹ペコペコやろ? 腹減ってる時のメシは、高くても売れるんやでぇ!」

資本主義の悪魔が、容赦なく牙を剥く。

ダイズラ豆の収穫で稼いだ金貨は、一人当たり金貨4枚。

——足りない。

あと金貨2枚足りず、最高級の疲労回復弁当(PRO型)が買えないのだ。

「……クソ猫がァァァッ! 足元見やがって!!」

赤城がブチギレる。

「……計算外だ。このまま昼食を抜けば、午後の部で体力が尽き、確実に旗を落とす」

義正もまた、歯を食いしばった。

50kgの旗の防衛時間は、残りあと20時間。

肉体と精神の限界が近づく中、彼らは究極の「兵站メシの危機」をどう乗り越えるのか。

ポポロ村の理不尽な1日は、まだ半分も終わっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ