江戸時代に転移したくない理由、みっつ
ようこそのお運びをありがとうございます。
※ R15程度の範囲内におさめていますが、女性の売春に関する話題があります。
こんにちは。狸です。
月の裏でぽんぽこしてます。
今回は、私が江戸時代に転生なり転移なりしたくない理由みっつについて語らせていただきます。
【ひとつめ、コン○ームが無い!】
えーと、仮に私が十八歳の女性に変化して、文化文政期にでも転移したといたしましょう。吉原の公娼に限らず湯屋の女性も茶屋の女性も旅籠の女性もみんな売春していたこの時代。縁故も無く過去に飛ばされた若い女がなんらかの性産業に従事する可能性は高いです。まあいいです。生きるためならそこはしょうがない。割り切ったとしましょう。
ですが! この時代の避妊法は濡らした紙を固く絞って丸めたヤツを中に詰めるだけだっ!
当然遊女たちはバンバン妊娠して、水銀など使った大変危険な方法(私と読者さま双方のトラウマになるため描写はいたしません)でバンバン中絶するか、間に合わなくて産んでいました。そら、遊女の平均寿命ハタチになりますがな。
おまけに上は花魁、下は一発六百円の夜鷹まで、フーゾクが充実しすぎているせいで梅毒が蔓延しとる! この時代、ペニシリンなんかありません。命がいくつあっても足りません。
【ふたつめ、氷がほぼ使えない!】
私が月の裏で連載していた文化文政モノの主人公は、鮮魚の行商人とお惣菜の煮売屋さんの兼業です。が、当時は氷が貴重であるため、生魚を常温管理させざるを得なかったことは、作者として本当にストレスでございました。
たとえば、葛飾北斎の神奈川沖浪裏って浮世絵がありますね。小田原沖で漁獲されたカツオを一晩かけて江戸の日本橋まで運んでくる船が描かれています。だが、もちろん氷なんて使えないから、漁獲物は常温管理だっ。カツオってのは、ジタバタ暴れるもんでね。たぶん、船倉に海水はって漁獲物ぶち込んでるんだと思うけど。釣り上げたカツオ、ポイポイ放り込んだら最後、あっという間に船倉の水温上がっちゃうよ? 大丈夫そ?
で? 小田原沖から一晩かけて持ってきたカツオを日本橋の魚市場に並べて? そこから新暦五、六月の陽気のなか、棒手振りが天秤棒にぶら下げた平べったい桶にビターンと入れて、お江戸の街中を威勢よく売り歩くの? しつこいようだけど、氷もナシで? 初夏の太陽がさんさんと降り注ぐなか? 食中毒が続出するわっ! ありえへんっ。
ということで。拙作の主人公くんの作る惣菜は徹底的に火を通すか酢でシメるかさせ、砂糖と醤油をふんだんに使わせることで、とにかく惣菜中の水分活性を下げて菌の繁殖を抑える方向にしておりました。そうしないと、令和の衛生観念が狸の中で火を吹く。耐えられない。
そんなロクに氷も使えない時代に脆弱な現代人が転移したらねぇ。いつものノリで「わぁ、江戸時代のお寿司って大きいんだぁ♡」って生魚食べて、速攻で腹こわすよっ! この時代には漢方薬くらいしかありません。命がいくつあっても足りません。
【みっつめ、文字が読めねえ!】
江戸期のくずし字は凶悪です。私も読めるようになりたくて、アダム・カバット先生の「妖怪草紙 くずし字入門」などで勉強したりしてみましたが、正直、なかなか厳しいです。なので、もしも私が江戸時代に転移したら、知識無双どころか看板や書状の文字が読めなさすぎて速攻で詰むんじゃねえのかな、と思っております。
あと、江戸人に言いたいんだけどさあ、助詞だけいきなりカタカナにしたり、ひらがなで書くべきところをテキトーな漢字で代用すんの、マジで止めて? 難読性に拍車がかかるんだわ、ホント……。
ちなみにカバット先生のこの御本。黄表紙や合巻から例文が取られており、挿絵もたっぷり。眺めているだけでも超楽しいので、オススメでございます。
以上、私が江戸時代に転移したくない理由みっつでした。




