第30話 全てはこの時に
「止まれ....! 止まれ!」
キールの手は既に感覚が無くなり始めるほどに力を込めており、コールも呼吸が危ういはずである、理性と呼べるものは既になく、執念のみでコールはルイーゼを殺そうとしている、何度もナイフを突き立て、何度も突こうとする、獣のように怒号を上げ続ける、そして次の瞬間、キールの手から縄が外れる。
「危ない!!」
キールが叫ぶがナイフはルイーゼの元へ一直線に向かい、ルイーゼは死を覚悟し、目を閉じる。
「な....!?」
ルイーゼは思わず声を上げる、目を開いて映ったその光景に不快感を覚える、血の臭いと赤い滴る液体、キールの腹に根元まで深々と刺さったナイフであった。
「ぐ...! 痛え.....」
キールはフラフラとしながら自身に刺さったナイフ掴むがそのまま地面へと倒れ、それと同時にコールも倒れる。
「キール!」
ルイーゼはキールの元へ駆け寄るがルイーゼはそこで硬直する、何をすればいいのかわからない、ナイフを抜けばいいのか、意識を保たせれば良いのか、ルイーゼは自身への無力感、止まらない血、目の前の死に対して耐えキレず呼吸が荒くなり、涙が止まらない、視界が暗くなる。
どうすればいい?どうすればいい?どうすればいい?どうすればいい?どうすればいい?どうすれ———
その時、鈍くなった感覚の中で右手に温もりを感じた、ルイーゼが右手を見た時、キールに握られていた、弱く、静かで、だがとても心強い。
「落ち...つけ...俺は....死なな...い...」
キールのか細い声に思わず声を荒げながらルイーゼは言う。
「今は....! 喋ら....ないほうが...!!」
泣きながら息を切らしながら、ルイーゼの声は震える。
「うっ.....!!」
キールはナイフを勢いよく引き抜くとそのまま投げ飛ばし、キールは布を傷に押し当てる。
「いやあ....すげえ....痛え.......」
キールはゆっくりと身体を起こすと背を壁に寄せ、少し微笑むと目を瞑る。
「待って...キール....!」
ルイーゼの言葉でキールは目をゆっくりと開け、ルイーゼの方に視線を移すとため息をつく。
「...俺たちは...自由のために戦ったんだ...今までたくさんの仲間を犠牲にして...今度は俺だったに...すぎないんだ....」
「キール....」
既にキールは動かなかった、瞳孔が開き、そこには死体があっただけであった、ルイーゼはゆっくりと立ち上がると皆がいる教会中央へとゆっくりと戻る、その時の顔は誰も、ルイーゼ自身もわからなかった。
二人は集合住宅の屋上にいた、教会の様子を確認する中で男がリドルに声をかける。
「リドル! 追ってきてる! あいつらに触れれば!」
男の言葉にリドルは暗くなりながらも答える。
「そうだね...でも俺は最低だからさ使うんだよ....」
「でもここからどうするんだよ...もうここからは...」
「わからないよ、わからないことだらけだよ、だけど俺はもう...これを利用する」
後ろからの足跡と共に、怪物達はこちらに走って近づくその瞬間に二人は屋上から教会前、軍人たちのいる場所に向かい、飛び降り、怪物たちも後を追って飛び降りる。
怪物達は軍人達の中へと飛び込む、一方リドル達は住宅の窓からその状態をのぞいていた。
「ここからどうするんだ...例え軍人を追い払えたとして、仲間が無事で済むのか?」
「わからない、だけどもしかしたらこの状況を変えられるかもしれない」




