第24話 未知とは恐怖であり蛇だ
リドルは両腕を壁に拘束された少女に近づこうと牢屋の扉を開こうとする。
「開かない....すぐに助けるから...!」
リドルは格子扉を蹴り開こうとするがびくともしない、リドルが諦めようとしたその時、レイド人の男はリドルの手を錠前へ持っていく。
「何を...」
リドルが疑問を飛ばす、触れた錠前に変化はない。
「いや、魔法だったら壊れるかもしれないと思ってな、俺が渡した銃があったはず、使えないか?」
「わかった」
リドルは手袋を両手にはめると拳銃を取り出して錠前に銃口を向けると引き金を引き詠唱する。
「...ファイア」
銃弾が飛び出し、掛金に命中しひしゃげる。
「なんとか...いけないかな...?」
リドルは必死に壊そうと引っ張ると少しだが掛金が動く
「このままなんとか...!」
リドルが更に力を入れようとしたその時、男は止める。
「それ以上はやめておけ」
リドルは男を睨むと言う。
「目の前に困ってる奴がいるのにどうして...!」
男は冷静にリドルの指を指し、リドルは自身の指を見る、その指は青紫になっており、リドルはその時までその違和感に全く気づいていなかった。
「ほら、青くなってる、それ以上やったらどうなるかわかんない、鍵を探す方が早いはずだ」
リドルはゆっくりと掛金から指を外すとコクリと頷く。
「....そうだね」
「お前自身は気づいていないのかもしれないけど...疲れてるし、怒ってるんだよ、自暴自棄になるな、急がば回れって奴だ」
男はため息をつくと手招きをする。
「今ここで立ち止まってる暇はないんだ、みんなのために行くぞ」
「うん....ごめん、ありがとう」
リドルはしゅんとしながら男に言うと二人は走り出すのであった。
走り続けるたびに臭う、汚物や死臭、埃っぽさと腐敗臭、全てが不快に満ちていた、そして痩せ細った亜人、血まみれの亜人、正気を失った亜人、奇形になっている亜人、その全てをその目に焼き付けることとなった。
そして走り続けて10分ほどであろうか、息切れをし始めて、ペースが落ち始めたその時、開きっぱなしの格子扉を見つける。
「あそこ....空いてる...ぞ...!」
「そのようだね....いこう」
二人は恐る恐るその格子へ近づくとそこにはレイド人の女がへたり込むようにしていた。
「ねえ...大丈夫ですか...?」
リドルが女の肩を揺さぶりながら問うが女は放心しているのか反応がない、リドルはとりあえず抱えようとしたその時、女は耳が引き裂けるほどの甲高い声で叫び出す。
「......!?」
二人は思わず耳を塞ぐ、その絶叫はまさに狂気、そしてそれと同時に、女の服が裂け、トンボの頭が至る所から生え出し、肉体は肥大化し始める。
「ああ...あああ....!」
尻餅をついてしまったリドルは情けない声を上げながらその悍ましい光景を目の前で体感する、吐き気を催すほどに悪趣味なそれはゆっくりと立ち上がると虫達の顔は一斉にリドルの方をギョロっと向く。
「リドル!!」
男はすぐさまリドルに向かって体当たりをし、それとほぼ同時のタイミングで化け物はリドルがいたところへ突っ込む。
リドルの心臓の鼓動が、動悸が、止まらない、視界がぼやける、平衡感覚さえも、涙さえ流しその恐怖を実感する。
「リドル! 立て!!」
男の言葉にリドルは立ちあがろうとするが指が動かない、それは縄を指一本ずつに拘束されているように、体勢を崩しながらも化け物はリドルの方を向くとゆっくりと立ち上がり、トンボの顔達は一斉に口を開く
死ぬ
そう思った時であった、突然に化け物は苦しみだし、全ての頭が破裂し、緑色の体液を溢しながら地面へと倒れる。
「.....死........死.....死ん...死...」
{死んだ?}その一言を口にしようとするリドルであったが呼吸が荒くまともに口に出せない、リドルが硬直する中で男はリドルを抱きしめる。
「目を閉じて落ち着け、息を調えろ、ゆっくりと息を吐け、ゆっくりでいい」
リドルは酷く動揺しながらも呼吸を整えようと必死になる、息を吐きたいのに、吸ってしまう、呼吸が整わない、そう感じたときに、フィリアの言葉を思い出す。
(難しいことは考えないでいいよ! 頑張ろう!)
そうだ、落ち着け、息を吐き続けろ、鼓動も整ってないんだ、ゆっくりでいい、普通にしてろ、難しいことなんて考えるな。
「落ち着いたようだな」
男はリドルからゆっくりと離れると立つ上がる。
「ああ....ごめん、こんな所で...」
「誰だって失敗はあるんだ、気にしてる必要はないぞ」




