第21話 表面上の裏は空虚である
「今、シードルでは亜人は捉えられて牢屋へと閉じ込められている、その中にみんなもいるだろう、助けるには...襲撃か...?」
キールはボソッとつぶやくがリドルが止める。
「今までのことを考えて、俺たちは今まで戦闘を避け、争いを避けた、それは変わらない、必要なのは民意だよ」
リドルは冷静に言うがキールは顔を顰める。
「確かにそうだが...また仲間を殺す気か?」
その言葉はリドルの心臓に深々と刺さるような痛みが現れる、だがリドルは罪悪感を押し殺し真剣な表情で言う。
「そうだね、みんなを犠牲にして、俺は自由を手に入れる」
「後悔しても知らないぞ?」
キール達はは教会の大扉を押し開け、堂々と前へ出る。
「私は——!」
キールが声を発した瞬間に銃弾がリドルの頬を掠り、後ろのジート人が倒れ伏す。
「降伏しろ! さもなければ発砲する!」
一つの銃声が響く中、大衆と軍兵の中でキールは両手を上げる。
「争う気はありません、私は交渉に参りました」
「いくらなんでも危険すぎるだろ...」
キールはボソッとつぶやくがすぐに気を取り直し話を続ける。
「私たちの望みは一つ 捕まった亜人たちの解放を求めます」
「最後の警告だ! 降伏しろ! さもなくば撃つ!」
キール達は動かない、両手を上げ、ただただ立っていると、その瞬間に銃弾がリドルの指が数本吹き飛ぶ。
そしてそれを皮切りに次々と銃弾が亜人達を襲う。
銃声と共に命が散る、それでも動かない、次々と倒れ伏し、死ぬ、死の先にあるものは何もなく土に還帰るだけ、だがそれ以上に次のものに託す意思、そのための死の正義であった。
撃たれ、撃たれ、撃たれる、降伏の余地を与えてくれるのはわからない、皆が死を恐れ、涙を流しながら死ぬもの、最後まで耐え続けて死ぬ者、人に恨みを持って死ぬ者、様々な感情を持ち、死にゆく亜人達をみて、大衆は思う、彼らは獣に過ぎないのだろうかと、そう思った時、大衆だけではない、感情を殺し、任務に集中し続けた軍兵の引き金を引く指すら止まる、半数も死んだその時、とうとう銃声は止まる。
「止まった...」
リドルが息を呑んだその時、アルドが現れ、亜人たちの所へとゆっくりと歩いて向かう。
「あれは...」
皆がその男に意識を向ける中でアルドが対抗するそこちょうど中央で止まる。
「代表者、一人来ていただけないでしょうか?」
柔和なその声はあまりにも恐怖心をそそられる、キールは慎重にゆっくりと前へと出る。
「大丈夫ですよ、大衆の目もありますし、こんなところで撃つ気は毛頭ないです」
アルドは微笑みながら言うが目が全くと言っていいほど笑っていない、キールはアルドの目を見ると言う。
「亜人の即時解放を要求します」
「そうですか、しかしですね、この状況はあまりにも貴方方が不利でしょう、降伏しませんか?そうすれば命は助かります」
アルドの言葉にキールは睨みつける。
「仲間を裏切るようなことを俺はしません、私たちの要求を飲んでいただけないと?」
「...ではそうですね...あなたの所にいる[魔法破壊]のスキルを持った者を差し出していただけないでしょうか? 一人の命で救えるのですよ?」
「仲間を売るようなことはしませんよ」
キールはそう啖呵を吐くとアルドは笑う。
「そう、仲間は犠牲にするがその一人は保持する、それは駒としての利用価値か、それとも個人として見ているからか? どちらなのでしょうね?」
アルドは一言つぶやくと後ろを振り返り歩く。
「仲間と話をしてもいいのではないのでしょうか? 5分あげましょう、それまでに降伏しなかったら、わかってますね?」
キールも皆の元へ戻る。
「交渉は決裂だ、降伏しろとよ」
キールの言葉に亜人達は憤慨する。
「どうせ生かす気もねえくせに!」
「俺らをなんだと思ってるんだ!」
「ここで死ぬことになったとしても!」
それぞれが怒りを表す中でリドルは発する。
「どうする? 流石にここまでくるとまずい」
「...奴らは攻めるタイミング、その隙に王城に襲撃する」
キールの言葉に皆が賛成し、立ち上がる、キールは暗い表情をしながらも地図を取り出す。
「正面に俺たちが向かう、リドル達は王城へ裏から向かってくれ、互いに死を覚悟しろ」
「了解」
そうして作戦の火蓋は切られる。




