第19話 破壊はより破壊を生み出すことにしかならない
[模倣の精霊ミメーシス]
模倣の力を持つ精霊、運動、発声などの模倣をするがあり、筋力の上乗せや声を真似することができる。
かつてシードルで一時的に普及した精霊であるが現在では3割ほどである。
私が軍人となり4年目の頃、一人の獣人が目についた。
獣人は身体能力の高さから軍人として育てられるものもおり、訓練場で見たそいつもその一人であった。
〜訓練場〜
「あれはまたすごいな...」
私がその獣人の動きに感心していると同期がこちらに話しかける。
「あいつは獣人の中でも成績じゃダントツで高いぜ? 俺らもウカウカしてられねえよ」
同期の男はいつもヘラヘラとして私に話しかけてきた、悪い気分ではなかったが少しうざい部分もあった。
「次はお前の番だぜ? あいつの相手か、まあ頑張ってこい! 負けたら大爆笑してやるから!」
「野郎...」
私は男を睨みつけながらも壇上に立つと姿勢を正し、礼をする。
「「お願いします」」
結果は惨敗だった、純粋格闘において奴には敵わなかった、戦闘センスと技量では奴には敵わない、そして今、なんでもありのこの戦場にて使えるものは全て使う。
「倒してやるよ」
フランクはそう一言発すると距離を詰め、ハルクの顔面へと蹴り上げる。
ハルクはその蹴りを軽く避けると拳の三撃を胸に当てるがフランクはその巨体でタックルを行う。
「ぐあ!」
ハルクは体にその一撃を喰らうが地面に倒れるとそのままフランクの脚を掴むと逆さになり、フランクの首元を脚で締め上げる。
フランクはナイフを抜くとハルクの足を刺そうとするがハルクはその切先を手の甲で弾くと同時にフランクを押し倒すと立ち上がり跳ぶと踵落としを顔面に当てようとするが蓮義手でその足を掴むと上へ持ち上げるその瞬間にハルクは関節部に指を入れると回転させ破壊する。
しかしその瞬間にフランクは手のひらをハルクに向け、詠唱する。
「ファイアボルト!」
炎の矢がハルクの毛先を微かに燃やすがハルクは攻撃の手を緩めることなくフランクの目玉を掴むと力を入れて引き抜く。
「がああああああ!!」
フランクは右目のとんでもない激痛に耐えながらもハルクの首に手を掛けると蓮義手の力を模倣し、骨を折る勢いで力を入れる。
「模倣!!」
ハルクは呼吸ができず、死に物狂いでフランクを殴り続ける。
走馬灯すらない、ハルクは抵抗し続けるがやがて力が入らなくなり、ハルクの手は止まる。
しばらく力を入れ続け、フランクは一分ほど閉めるとゆっくりと力を抜く。
「....ようやく...殺せた...」
フランクが膝を立て、立ちあがろうとしたその瞬間にハルクの足がフランクの腰を囲み、ハルクは手榴弾を出すとピンを抜く。
「模倣」
ハルクは魔力結石に向かって詠唱すると魔力結石を火薬へと投げとばす。フランクは逃れようとするがハルクは離すことはなく、そのまま二人は爆発する。
そこに置かれた魔力結石から微かに声が聞こえる、その言葉は誰一人として聞いてはいなかった。
(声の認識、ファイア、五分後に発動)
「リドル! こっちだ!」
レイド人の男が鉄扉の向こうから声をかける。その方向へリドルが走っているとその瞬間に床が軋み、リドルはフィリアを前に投げ飛ばす。
「頼みます!」
足場は崩壊し、リドルは体勢を崩し落ちるが、なんとか鉄パイプを掴み取る。
「まずい....落ちる...」
リドルが死を覚悟するがレイド人の男はリドルの腕を掴むと必死に引き上げようとする。
「くっそ...他に誰かいねえのかよ...」
無情にも汗のせいか滑り、手でなんとか引き留めるが、それでも既に限界が来ていた。
「離してください....もうこれは...」
その時、キールがリドルの腕を掴む。
「諦めるな! 一気に引き上げるぞ!」
二人は腕に力を込めるとリドルを引き上げ、すぐさま走る。
「早く行くぞ!」
そうして4人は外へと出るのであった。




