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アニメの主人公じゃない俺が婚約破棄された令嬢を助けることになった  作者: 霜月風炉


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3/12

3:やっぱり主人公の姿は拝んでおきたい

「……原作通りかどうかがわからねぇ」


 城下町の中央に位置する広場のベンチで項垂れながら、俺は頭を抱える。

 それもそのはず、そもそもアニメは婚約破棄から始まり、そこから主人公アステリアの物語が紡がれるのだ。

 裏設定などあるのだろうがあくまでも妹が大ファンであり、俺は見せられていただけ。アニメで描かれた内容はわかるが、それ以外はお手上げだ。

 それに怪しい男から貰った日本刀っぽい剣だが、鞘から引き抜けない。これではただの細い鈍器である。


「剣のことは一旦置いておくとして、今夜の婚約パーティーが物語のスタートだとして、流れとしてはどうなるんだっけ?」


 腕を組みながらエピソードを思い出す。

 アベル皇子に婚約破棄を告げられる。その理由はアベル皇子を寝取ったサレンディア・ルナン侯爵令嬢による濡れ衣。確か王妃の所有するブローチの窃盗だ。


「全部サレンディアによる企て。アベル皇子と共謀して盗んだブローチをプレゼントだと手渡して、恥ずかしげもなく『私は見たのです』って告発するんだったよな? 性格が悪いどころの話じゃねぇよ」


 弁明をしようとするアステリアだったが、『盗人の言葉を誰が信じるのか?』というアベル皇子の一声により、その機会さえ与えられなかった。そして、『せめてもの情けだ』と罪には問わないから直ぐに出て行けと勧告され、城を後にする流れだ。


「城を追い出されて、夜の城下町を彷徨っている最中に暴漢から襲われそうになるんだったか?」


 アステリアの絶体絶命の危機に、通りがかりの青年——アステリアと共に行動することになるサイファが助けに入って事なきを得たはず。

 今のところ俺の介入する余地は微塵もない。それどころか今後も無いまである。

 しかし、折角アニメの世界に来たのなら、その出会いのシーンをこの目で見たいのは必然ではないだろうか。

 それに——、

 

「アステリアの姿も一度は拝んでおきたいよなぁ」


 妹ほどではなくとも、全話視聴した身からすれば主人公の姿を見ておきたい。何よりも美少女であるなら猶更だ。


「よーし、そうと決まれば現場を探さないとな」


 記憶が正しければ大通りではなく、どこかの路地裏。そして、アニメで描かれていた現場の傍には水路が流れていた。


「水路がある場所でそれっぽいところを行けば良い——と、思ったけど普通に出待ちで良くないか?」


 城から出入りする場所は一ヶ所のみ。その辺りで待てば、確実にアステリアと遭遇できる。あとは適当に後を付けてサイファとの出会いを鑑賞して終わりだ。


「……でも、これじゃストーカーだぁ」


 我ながら気持ち悪い動きである。

 例の一幕さえ見たら立ち去るので、一度くらいは許してほしい。


「じゃ、その間までに…………寝床どうすっかねぇ」


 衣はともかく、食住が欠如している俺。

 どちらにしてもお金は必要だが、どうしたものか。

 野宿をしても季節的に凍死はない。ただ、アステリアが暴漢に襲われることを考えれば、極力避けたい。


「日雇いしかねぇ」


 陽の位置から察するに、今の時間は正午前後。

 俺は片っ端から日雇い仕事を探して、町中を駆け回るのだった。

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