24:頑張ってください side.アステリア
今世紀最強の守護騎士と謳われるサイファ・クルルシファー。彼こそが私の「本来の守護騎士」とアオは言っていた。
どうしてアオがそんなことを確信を持って言えるのかはわからない。だけど、嘘を吐いているようには思えなかった。
学院に到着と同時に、アオの予想通りサレンディアより守護騎士同士の決闘を申し込まれた。
私は今、その二人の戦いを貴賓席でその光景を見ていた。
私でもわかってしまうほどに、アオとサイファの実力差は大きい。
聞こえる周囲の声は圧倒的に「サイファの勝利を確信する」ものばかり。
婚約破棄の噂も重なって、私に対する視線も厳しいものがある。その影響も少なからずあるのだろう。
「あらあら、貴方の守護騎士は防戦一方ですわねぇ?」
こちらを見下すように、サレンディアは口元を歪めながら言う。
隣に立つアベル皇子とその取り巻きも似たようなものだ。
私は表情を変えない。
「まだ、負けたワケではありません」
「強がりはみっともないですわ? 私の守護騎士であるサイファは今世紀最強なんですから。あんな有象無象では足元にも及ばないことは明白ですわよねぇ?」
「……それでも、私は信じていますので」
「信じるだけで勝てるのなら苦労なんてしませんわ。まあ、良いでしょう。ここで無様に痛めつけられる姿を焼き付けるといいでしょう」
サイファによる早すぎる動きに、アオは何とか喰らいつけている程度。攻めに転じることはできていない。
それでも私は信じている。
「あらあら、サイファが魔法を使い始めましたわね? 閃光の魔法——英雄の末裔としての魔法に彼は耐えられるのかしら?」
アオには魔力が無い。
魔法を対処する方法として魔法を用いることは、この世界において常識として存在している。
攻撃魔法には、防御魔法で。
防御魔法を貫くために、より強力な攻撃魔法を。
魔力の保有量、魔法の威力——魔法の才が尊重されるのは、魔法という力が軍事力そのものの指標になるからだ。
「貴方の守護騎士は魔法を使う素振りを見せませんね? もしかして——魔法が使えないのかしら?」
「はっはは! そうかもしれないぞ、サレンディア。あの動きを見てみろ。防御魔法を使おうともしていない」
サレンディアの言葉に同調するように、アベル皇子が声を上げて嘲笑する。
それでも私は表情を変えない。
「……貴方、どうして表情を変えないのかしら? ご自慢の守護騎士が追い詰められているのですよ?」
私の態度に、苛立ち交じりにサレンディアが問う。
きっと私が想定通りの様子を見せないことを怪訝に思っているのかもしれない。
それはアベル皇子も同じようだ。私の表情を見て、眉を顰めている。
「追い詰められている——そうですね。ですが、私は彼を……アオを信じています。それに、何よりも————」
その時、決闘場全体に金色の炎が灯った。
「——ここからが正念場ですから」
残念ながら『魔力殺しの魔眼』を発動と同時に放った不意打ちは防がれてしまった。
だけど、一矢報いることはできるはずだ。
「頑張ってください、アオ」
金色の揺らめく戦いを見つめながら、私は両手を握りしめた。




