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アニメの主人公じゃない俺が婚約破棄された令嬢を助けることになった  作者: 霜月風炉


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22/26

22:踏ん張っていけ

 なぜ一教育機関に決闘場があるのか疑問ではあるが、これはファンタジー世界観におけるお約束的なこともあるので。きっと気にするだけ無駄なのかもしれない。

 さて、今俺は決闘場へ続く通路にアステリアと共にいた。


「無理はしなくて大丈夫ですからね。危なくなったら棄権してください」

「わかってるよ。俺もこんなことで重傷は負いたくないんで……」


 鞘に納められたままの白刀を腰に差し、決闘場へ向かってと足を踏み出す。


「頑張ってくださいね」

「……善処するよ」

 

 アステリアはサレンディアたちがいるであろう貴賓席へと向かう。

 その背中を見届けて、俺は決闘場へ足を踏み出した。

 中央には既にサイファの姿が在った。


「……なるほど、体のいい見世物か」


 決闘場と物々しい名称ではあるが、学院イベントでも頻繁に使用される場所。そのため観客席も設けられいる。

 どこで聞きつけたのか、観客はそれなりにおり、アニメで見覚えのある教員の姿も在った。


「待たせて申し訳ないっすね」


 中央で待つサイファの前に立ち、俺は言う。

 薄く青みのある髪の毛と澄み渡る蒼穹の瞳。身体の肉付きを言ってしまえば細マッチョであり、俺よりも明らかに整っている。

 容姿良し、技術良し、知力も良し——この男は一体何なら持ち得ていないんだ?


「待ってはいない。しかし、素人に毛が生えた程度の実力と見える。実力差もわからない間抜けなのか?」


 なんて辛辣なヤツだ。

 いや、アニメでも口の悪さは目立っていたが、いざそれを向けられると心底イラっとするものだ。

 だが、言っていることは正しい。

 訂正するのなら、実力差があることを理解していることくらいだろう。


「それにお前……魔力が無いな?」

「わかるのか?」

「一定の実力があれば、その程度誰にでもわかる。しかし、なおさら解せないな」


 サイファが腰の鞘から剣を抜く。


「アステリア・コランダムはなぜお前を守護騎士(シュヴァリエ)に添えた?」

「それは俺も疑問だよ。ああ、俺もひとつ聞きたい。アンタはどうしてサレンディアの守護騎士(シュヴァリエ)になったんだ?」

「愚問だな。俺の仕える主はサレンディア・ルナン様だからだ」


 その忠誠心は主が変わろうと、アニメから一切変わらない。

 そんな彼の様子に俺は口元を緩めてしまう。


「……何がおかしい?」

「いや、アンタは……変わらないな」

「お前と俺は初対面のはずだが?」

「気にしなくていいよ。俺がアンタのことを一方的に知っているだけだからな」


 俺が鞘に納められたままの白刀を構えると、サイファが怪訝な表情を浮かべた。


「なぜ抜かない?」

「さあ? どうしてだと思う?」

「…………」


 サイファの視線が鋭くなる。

 内心で俺は震えながらも、身体は一切の震えなく普通だった。これもハレンのスパルタ教育のお陰かもしれない。

 と————、


『お互いに準備が整ったようですので、間もなく決闘を開始します! 今回の決闘につきましてはアベル皇子の承認、及び魔法学院学生会の承認の下実施されます。審判は魔法歴史学担当のフィラー・アナベル先生が担います』


 俺とサイファの傍に眼鏡をかけた男性が一礼しながら立つ。


『実況は魔法学院三年、放送部所属のネルネ・セイレンスが務めさせていただきます!』


 ネルネ・セイレンスの名前は俺も知っている。

 アニメにおいて、魔法学院魔法戦術競技大会において実況を務めていたキャラクターだ。

 しかし、アニメにおける初回の決闘では実況はされなかったし、観客もこんなに多くなかったはず。

 審判を含めて、あまりにも準備が良い。


「……初めからこのつもりだったのか」


 俺は呟く。

 サレンディアの狙いは明確だ。

 大衆の前で俺がボロ負けする姿を見せるつもりだったのだろう。

 しかし——アステリアが俺を守護騎士(シュヴァリエ)に任命しなければ、この催しは不発だったはずだが……。

 まあ、良い。細かいことは後にしよう。

 俺はサイファへ視線を向ける。


「お手柔らかにお願いしたい限りだよ」

「悪いが全力で行かせてもらおう」

「ま、アンタはそういうヤツだよな」


 手加減できるようなヤツではないことは重々承知している。

 良くも悪くもサイファという男は手抜きが下手なのだ。


『これよりカウントを始めます! 3カウントで0になりましたら始めてください!』


 審判であるフィラーが場を離れる。

 そして——、


『カウントダウン! 3、2、1————』


 さあ、踏ん張っていけ俺。

 勝ち目は薄いかもしれないが、悪役令嬢の思惑を叩き潰せ。


『0!』


 ダンッ——大地を踏み砕いた音共に、俺の眼前にサイファが迫る。

 咄嗟に俺は後ろへ跳び、その初撃を辛うじて回避してみせる。


「……少しはできるみたいだな?」


 剣を片手にサイファは俺へ向かってそう言い放った。

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