17:魔法殺しの悪魔
剣と魔法による連携——それがハレンを若くして騎士団長まで押し上げた技術の結晶なのだろう。
斬撃を辛うじて防ぎ、魔法は避けられるものを避け、無理なものは受ける。
足掻けば足掻くほどに攻撃の手は激しくなる。
間違いなくハレンはわざと調整している。
「どうした、終わりか?」
挑発じみた言葉を投げつけられる。
終わりもなにも、始まってすらいない。俺から攻めるターンは訪れず、常に防戦一方で、身体には傷だけが増えていく。
それでも手加減がされていることはわかる。
「お嬢様の守護騎士となるのならば、貴様の意地を見せてみろ!」
わかっている、わかっているさ。
抜けない刀を握り、ハレンを睨みつける。
足りないことは理解している。
届かないことも理解している。
それに不服があることも重々理解している。
言い訳はしない。俺は弱いし、サイファの代わりにもなれない。
ただ——どうしてか、アステリアは「俺が良い」と言った。
守護騎士については成り行きだ。俺の意思ではない。それでも彼女の思いには答えないといけない。
なぜならば、成り行きとはいえ、最終的に守護騎士になることを決めたのは俺自身だからだ。
「…………」
思い出せ、あの夜のことを。
あの日、あの夜、あの男の言葉を——。
——既にお兄さんとワテクシは繋がっておりますので、あとはスイッチを入れるだけです——
頭の中で、カチンという音が鳴った気がした。
瞬間、世界に金色の炎が上がった。
「これが、そうなのか……」
ハレンが呟く。
それはアステリアが暴漢に襲われていた時の再現。
俺の手に握っていた刀の鞘は無くなり、白い刀身が露わになっている。
「大気に漂う魔力すら燃やしてしまうのか。その現象が金色の炎。そして、その手の剣——なるほど、鞘すら魔力で作られていたワケか」
俺の状態を見て、ハレンは告げる。
「気づいているか? 今、貴様の両目は金瞳になっているぞ」
いや、知らん。鏡なんて見ていないからな。
だけど、身体が想像以上に軽い。
一歩——踏み出した。
風を巻き起こし、一瞬にして俺の姿はハレンの眼前に躍り出る。
「ッ————どんな手品だ? 身体能力が桁違いだ!」
俺の振るった斬撃を難なく防いだハレンは、俺を思いっきり蹴飛ばす。
少しだけ押し戻されたが、膝を着くことはない。
両手で正眼に刀を構え直す。
「魔法は……放った途端に燃えるのか」
ハレンは興味深そうに俺を見る。
「黒髪、金瞳、魔力を燃やす所業——まるで古い文献に書き記されたアレのようだ」
「……アレ?」
「そうだ。よもや伝承に語られるだけの存在かと思っていたが、この眼で見てしまったのなら、信じる他ないな」
ハレンのその姿はまるで子どものような無邪気さが表立っていた。
「魔力を燃やす者。その名は即ち——魔法殺しの悪魔だ」




