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アニメの主人公じゃない俺が婚約破棄された令嬢を助けることになった  作者: 霜月風炉


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13/16

13:歪む物語

 俺の知るアニメの内容から逸れていく。

 その要因が俺にあるのか、或いは別のものなのかはわからない。

 結局、俺はアステリアの執念じみた強い要望により、彼女の守護騎士(シュヴァリエ)となることが決まってしまった。

 いくら娘を溺愛しているコランダム侯爵とはいえ、流石に不用心がすぎる。

 もしかすると俺の知らないだけで、何かしらの思惑があるのかもしれないが、それを知る術はない。

 ただ、メリットもある。

 俺の衣食住が保証されたこと。これは大きい。

 仮に守護騎士(シュヴァリエ)になれない、ならなかった場合、俺は家なき子として異世界放浪者になり、最悪野垂れ死にもあっただろう。

 これからどうなるのかは不透明ではあるが、なるようにしかならない。


「……目下の謎は、今のところサイファの存在がまったく感じられないことだな」


 部屋の中には俺ひとり。ベッドで寝たまま、呟く。

 アステリアにとって、最重要人物であるはずのサイファ。今のところ、その存在が感じられない状況は、俺の知る物語からの大きな歪みだ。

 今後、アステリアの身に降りかかるはずの事件。それらを共に解決する役割を担っていたのがサイファだった。しかし、その役割を担う者が不在となれば、誰がその穴埋めをすることになるのか——。


「俺、だよなぁ……」


 暴漢からアステリアを助けたこと、守護騎士《シュヴァリエ》になったこと——認めたくないが、サイファの代わりとして明らかに俺が当てはまっているように思う。

 これからのイベントは、なかなかにハードなものがばかりだ。

 直近の大きなイベントは魔法学院内で起こる派閥抗争。所詮は学生間の小競り合いなのだが、貴族同士の面倒な問題も合わさって、なかなか厄介なものになる。

 アニメとして見る分には戦闘描写など見応えがあるのだが、俺が当事者となるなら話は別だ。

 残念ながら俺には、サイファのようなスパダリにしてチート染みた剣術と魔法の技術と才能はない。

 あの暴漢に勝てたことすら奇跡の産物でしかない。

 

「……アステリアが学院に戻るのは一週間後。アニメ通りなら、その際に守護騎士(シュヴァリエ)となった俺も同行せざるを得ない」


 一応、明日から剣術の指南を受ける予定にはなっているが、どこまで身に着けることができるのか——前途多難だ。

 切り札となり得るのは、相変わらず鞘から引き抜くことのできない刀。そして、俺自身が有していると思われる魔力を燃やす異能。なお、その異能の使い方がまったくわからない。


「あの胡散臭いワテクシ男と話ができれば良いんだが……」


 結局、あの男が何者なのか何ひとつわからない。

 恐らく鞘から抜けない刀と関係があるのだろう。


「とりあえずできることを熟すしかないか。こんなことになるんだったら、何かしらの武道を修めときゃよかったな」


 今更でしかない。

 ひとまず、剣術の指南を真面目に受け、最低限の動きだけでも身に着けるしかない。

 流れとはいえ、アステリアの守護騎士(シュヴァリエ)となった以上、彼女を脅威から護る役割がある。そして、守護騎士(シュヴァリエ)の実力は、仕える主の立場にも関わってくる。

 要するに、責任重大ということである。

 既に吐いてしまいそうな気分ではあるが、なってしまったのだから仕方ない。


「本当にサイファはどこに行ったんだよ? 仮にいないってなると、物語が歪んだとかそんな話じゃ済まないぞ」


 嫌な予感はずっとしている。

 それでも俺はサイファが存在していることを信じたい。

読了ありがとうございます。

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