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アニメの主人公じゃない俺が婚約破棄された令嬢を助けることになった  作者: 霜月風炉


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12/13

12︰私はアオさんが良いんです

 目の前にいる二人の反応はどうなのか——ジッと待っていると、はじめに口を開いたのはアステリアだった。


「私は信じますよ」


 真っ直ぐな眼差しを向けるその表情は一切の曇りもない。ただ、俺の言葉を肯定していた。


「なるほど、実に面白い。異世界からの来訪者とは……その与太話を信じろと言うのかい?」


 コランダム侯爵は問う。

 俺にとっては真実であっても、こちらの世界の者が聞けば与太話と言われても仕方ない。

 だからこそ、全肯定の雰囲気を醸し出しているアステリアについては、俺としても疑問符を浮かべたい。

 そもそもアステリアって、こんなにも人の話をすんなり信じるようなキャラクターだったか?


「お父様、アオさんは嘘を吐いていませんよ」

「……しかしだな、常識的に考えると異世界という話は荒唐無稽が過ぎる」

「ですが、その『すまーとふぉん』は間違いない証拠だと思います。それ以外のモノについても、見たことのない文字が記されています」


 アステリアがこれでもか——と援護射撃を撃つ。


「……まあ、娘を助けた者が偽りを語るとは思わんよ。しかし、仮に異世界人としたならば、なぜ君はこの世界にやって来たんだい?」


 その疑問は尤もだが、そんなことは俺も知りたい。

 どのような力が働いて、俺はこの世界に迷い込んだのか?


「わかりません」


 こう答えるしかない。


「ふむ、わからないのかい?」

「はい。気がついたらこの世界にいたんです」

「……ならば、君には行く宛がないということかな?」


 俺はコクリと頷いた。

 家無し、金無し、戸籍無し。衣食住もままならない俺は全てを正直に曝け出した。

 暫しの沈黙が場に満ちた時、アステリアがコランダム侯爵へ告げた。


「彼を——アオさんを私の守護騎士(シュヴァリエ)にします」


 コランダム侯爵が「ふむ……」と考え込む。

 いや、ちょっと待て。そもそも守護騎士(シュヴァリエ)は本来サイファの役割だ。

 その役を俺が担うことになってしまえば、全てが大きく変わってしまう。

 ただでさえ本来の道筋と異なっている中で、守護騎士(シュヴァリエ)に俺がなってしまうと——アステリアとサイファが引っ付く未来が完全に消滅しかねない。

 本当ならサイファがアステリアを助けて、守護騎士(シュヴァリエ)になる。多くの困難の中で絆を育んだ先で二人は結ばれる——それが俺の知る結末だ。

 今更、アニメの道筋云々を気にするだけ無駄だと思うかも知れないが、俺はまだ軌道修正ができると思っていただけに、その提案には大いに慌てる。


「お、俺に騎士なんて務まりません」


 これは本音。暴漢からアステリアを助けることができたのも偶然でしかない。

 だが、そんな俺の心境なぞ知る由もないコランダム侯爵が「ふむ」と頷いた。


「アステリアが望むのなら、是非もない。いや、身を挺して護った功績を考慮するなら相応しいか」


 ……相応しくないと思います。


「いやいや、冷静に考えてください。侯爵家の娘の守護騎士(シュヴァリエ)がどこの馬の骨ともわからない、貴族出身でもない男がなるなんて変な話ですよ!?」

「実績はあるじゃないか」

「いや、本当に運が良かっただけです。俺は剣の振り方なんて知らないんです」

「ならば、我が家の騎士に鍛錬を任せよう」


 おかしい流れだ。

 何か作為的なものを感じる。まるで俺がサイファの代わりに充てがわれているような気がする。

 ……いや、待て待て。


「私はアオさんが良いんです」


 脳裏に投映されるアニメ本編の映像。


『私はサイファさんが良いんです』


 俺は眉間を摘み、下を向いて小さく息を吐く。


「マジかよ……」


 二人に聞こえないように、俺は呟いた。

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