11:私の騎士 side.アステリア
ここで私の純潔は奪われる——そう、思っていた。
アベル皇子に婚約破棄され、冤罪の濡れ衣を着せられた私が城を飛び出した先で、私は暴漢に襲われた。
護身のために——と身に着けた魔法を動揺から使うことができず、瞬く間に組み伏せられ、股下を弄られ、胸元を破かれた絶望は筆舌に尽くし難かった。
我欲に塗れた暴漢の力は強く、私のような非力な腕では振りほどくこともできない。
なんでこんな不幸に見舞われるのか。
私は心の底から女神を呪った。
いくら叫んでも、暴漢は「助けは来ない」と言う。
嫌だ、嫌だ——必死の抵抗も空しく、私がその現実を覚悟した時に彼は現れた。
「そこまでだ」
そんな言葉と共に現れた彼は、とても珍しい装いだった。
黒髪に黒い瞳の少年。
飄々としつつも、どこか意志のある眼差しに私は釘付けになった。
なぜ彼が私を助けようとしたのかはわからない。
だけど、それだけで私は救われた。
暴漢が怒りを顕わにし、彼へと向かって拳を振るう。
それはあまりにも一方的な光景だった。
思わず目を逸らしてしまう。同時に彼へ対して申し訳ない気持ちを抱く。
ふと、今なら逃げ出せることに気づいた。
でも——と、私は逃げなかった。
彼が負けてしまえば、私はまた襲われるだろう。それでも私は彼を置いて逃げようとは思わなかった。理由は——特にない。
何度も響く重く鈍い音。
一度は倒れ伏した彼だったが、不屈の精神で立ち上がる。
どうして彼は立ったのか?
私にはわからなかった。
同時に逃げるチャンスを捨ててまで、動こうとしない私の感情もわからなかった。
その後は目まぐるしいまでの展開だった。
黄金の炎が世界を燃やした。
何が起こったのかはわからなかった。
ただ——彼の双眸が金色に輝いていたことは印象に残っている。
暴漢の魔法を燃やし、彼が持つ剣の鞘はいつの間にか無くなっており、その美しい白い刃が露わになっていた。
劇的な逆転劇。
逆境からの一刀が、私の心を奪い去っていたと思う。
今、ベッドで上半身を起こす彼——アオ・ロクジョウさんは、自身のことを「別の世界からやって来た人間」と告げた。
だけど、その言葉を私は疑う気はない。
彼がそう言うのなら、きっとそうなのだ。
疑う理由はなにひとつない。
暴漢から私を救った彼のことを好ましく思っている。
吊り橋効果かもしれない。だけど、それでも良い。
だって、彼は私の騎士になれる人だから。
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