表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/10

第6話 投薬と水分補給の注意点

 

 介護現場での投薬は、ただ薬を渡せば終わる仕事ではない。


 薬を配る。

 薬を口に入れてもらう。

 水を飲んでもらう。

 飲み込んだように見える。


 それだけなら、簡単な作業に見えるかもしれない。


 しかし、現場ではそれで終わらない。


 本当に飲めたのか。

 口の中に薬が残っていないか。

 むせていないか。

 吐き出していないか。

 吹き出していないか。

 服用を拒否していないか。

 飲んだ後に異変はないか。


 そこまで確認して、初めて投薬業務として成立する。


 投薬は、介護職にとってかなり注意が必要な業務である。


 薬は利用者の体調管理に関わる。

 飲めていなければ問題になる。

 飲み間違いがあっても問題になる。

 むせ込みや誤嚥につながる可能性もある。

 服用拒否が続けば、看護師や医師への報告が必要になる。


 だから、投薬を軽く見てはいけない。


 まず大事なのは、利用者ごとの飲み方を知ることである。


 薬を自分で手のひらに乗せて飲める人もいる。

 しかし、そういう人ばかりではない。

 むしろ、自分だけで安全に服用できる人は限られる。


 薬を手に乗せてもこぼしてしまう人がいる。

 口に入れる動作がうまくできない人がいる。

 薬を口に入れても、飲み込まずに残してしまう人がいる。

 水だけ飲んで、薬が口の中に残る人がいる。

 薬を嫌がって口を開けない人がいる。

 飲んだふりをして後で吐き出そうとする人がいる。

 むせやすい人がいる。

 水分をうまく飲み込めない人もいる。


 だから、利用者ごとの特徴を覚える必要がある。


 この人は水が多めに必要。

 この人は一錠ずつの方が飲みやすい。

 この人は口の中に薬が残りやすい。

 この人は飲んだ後に確認が必要。

 この人は服用拒否が出やすい。

 この人はむせ込みやすい。

 この人は水ではなく、とろみのついた水分の方が安全な場合がある。


 こうした特徴を知らずに、全員に同じように薬を渡すと危険である。


 投薬では、まず薬を間違えないことが大前提である。


 誰の薬か。

 いつ飲む薬か。

 今飲ませてよい薬か。

 すでに飲んでいないか。

 他の利用者の薬と混ざっていないか。


 これは当然確認するべきことである。


 ただし、薬の管理方法や確認手順は施設によって違う。

 そのため、必ず施設の手順に従う必要がある。

 介護職が自己流で判断してよいものではない。


 看護師の指示や施設のマニュアルがあるなら、それに従う。

 分からないことがあれば確認する。

 少しでも不安があるなら、勝手に進めない。


 投薬で勝手な判断は危険である。


 次に重要なのは、服用できたかの確認である。


 薬を口に入れた。

 水を飲んだ。

 だから飲めた。


 そう思い込むのは危ない。


 口の中に残っていることがある。

 頬の内側に残っていることがある。

 舌の上に残っていることがある。

 入れ歯の隙間や口腔内に残ることもある。

 本人が飲んだつもりでも、実際には残っていることがある。


 そのままにしておくと、後で吐き出してしまう場合がある。

 薬が正しく服用できていないことになる。

 口の中で溶けて不快感につながることもある。


 だから、飲み込めたかを見る。


 口を動かしているか。

 水分を飲み込んだか。

 口の中に薬が残っていないか。

 むせていないか。

 表情に違和感はないか。


 必要に応じて確認する。


 もちろん、利用者の尊厳への配慮は必要である。

 無神経に口の中を見ればよいという話ではない。

 声をかけ、確認の必要性を伝え、その人に合った方法で確認する。


「飲み込めましたか」

「お口の中に残っていないか、少し確認しますね」

「もう一口だけ飲んでおきましょうか」


 こうした声かけで、自然に確認する。


 服用拒否への対応も重要である。


 薬を飲みたくない利用者はいる。

 苦いから嫌。

 何の薬か分からないから不安。

 飲んだつもりになっている。

 薬を飲まされることに抵抗がある。

 認知症症状や精神症状によって拒否が出る。

 体調が悪くて飲みにくい。


 理由はさまざまである。


 この時、無理やり飲ませようとするのは危険である。


 本人が強く拒否しているのに、力で口に入れる。

 怒りながら飲ませる。

 急がせる。

 説明せずに押し切る。


 こういう対応は、不信感や拒否を強めることがある。

 場合によっては、むせ込みや吐き出しにつながることもある。


 服用拒否がある時は、まず理由を見る。


 薬が多すぎて嫌なのか。

 水が飲みにくいのか。

 口の中が乾いているのか。

 苦味が嫌なのか。

 不安があるのか。

 その職員の声かけが合っていないのか。

 時間を置けば飲めるのか。

 別の職員なら飲めるのか。


 現場では、職員によって服用状況が変わることもある。


 ある職員の声かけなら飲む。

 別の職員だと拒否する。

 特定の言い方なら受け入れる。

 少し時間を置けば飲める。


 こういうことはある。


 だから、無理に一人で押し切らず、他職員に相談することも技術である。


 服用拒否が続く場合や、飲めなかった場合は、看護師に報告する。

 これは非常に重要である。


 飲めなかった薬を、飲めたことにしてはいけない。

 飲めたか分からないのに、飲めたと記録してはいけない。

 自己判断で放置してはいけない。


 薬は体調に関わる。


 飲めなかったなら、飲めなかった事実を伝える。

 どの薬を拒否したのか。

 どのような様子だったのか。

 むせ込みはあったのか。

 吐き出したのか。

 口内に残っていたのか。

 どのように対応したのか。


 必要な情報を報告する。


 介護職は医療判断をする立場ではない。

 だからこそ、異常や拒否があれば、看護師や責任者へつなぐ必要がある。


 むせ込みへの注意も重要である。


 高齢者の中には、水分でむせやすい人がいる。

 嚥下機能が低下している人もいる。

 薬と水を一緒に飲む時に、むせ込みが出る人もいる。


 むせるということは、単なる咳では済まない場合がある。

 誤嚥のリスクにも関わる。


 だから、むせやすい人には注意が必要である。


 水で飲むとむせる利用者には、とろみをつけた水やジュースを使用することもある。

 ただし、これは施設の手順や看護師の指示に従う必要がある。

 職員が勝手に水分形態を変えてよいわけではない。


 大切なのは、利用者ごとの安全な飲み方を把握しておくことである。


 この人は普通の水でよいのか。

 この人はとろみが必要なのか。

 この人は一気に飲ませるとむせるのか。

 この人は少量ずつの方がよいのか。

 この人は座位姿勢を整えないと危ないのか。

 この人は飲んだ後の様子観察が必要なのか。


 こうした確認が必要である。


 水分補給も同じである。


 水分を出せば終わりではない。


 本当に飲んだのか。

 どれくらい飲んだのか。

 むせていないか。

 拒否はないか。

 水分量が足りているか。

 体調や不穏に影響していないか。


 そこを見る必要がある。


 介護現場では、水分補給が軽視されると問題につながることがある。


 脱水気味になる。

 便秘につながる。

 体調不良につながる。

 不穏が強くなることもある。

 発熱時には特に注意が必要になる。


 もちろん、必要な水分量や制限の有無は利用者ごとに違う。

 心疾患や腎疾患などで水分制限がある場合もある。

 だから、これも施設の方針や看護師の指示に従う必要がある。


 ただ、現場の介護職としては、飲めているかを見ることが重要である。


 コップを置いた。

 だから飲んだ。


 これは違う。


 コップに水分が残っていることがある。

 飲む動作ができていないことがある。

 声かけしないと飲まない人がいる。

 手に持っても口まで運べない人がいる。

 飲み込むのが遅い人がいる。

 むせやすい人がいる。


 だから、ただ置くだけでは水分補給にならない場合がある。


 必要なら声かけをする。

 少しずつ促す。

 飲みやすい姿勢にする。

 飲み込めたか見る。

 むせたら無理に続けない。

 異変があれば報告する。


 これも介護技術である。


 投薬や水分補給では、姿勢も大事である。


 寝たまま、首が反った状態、不安定な姿勢で飲ませると危ない場合がある。

 できるだけ安全な姿勢を整える。

 座位が保てるなら姿勢を整える。

 車いす上でも、身体が傾いていないか見る。

 顎の位置や飲み込みやすさにも注意する。


 もちろん、専門的な嚥下判断は医療職の領域である。

 しかし、介護職も現場で見えることがある。


 いつもよりむせる。

 飲み込みが遅い。

 口からこぼれる。

 声が湿ったように感じる。

 飲んだ後に咳が続く。

 食事や水分を嫌がる。


 こうした変化があれば、報告する必要がある。


 介護技術とは、異常に気づき、つなぐ技術でもある。


 自分で判断して終わらせるのではない。

 気づいたことを報告し、必要な対応につなげる。


 これが大事である。


 新人が投薬や水分補給で気をつけるべきことは、勝手に判断しないことである。


 飲まないからそのままにする。

 むせたけれど大丈夫だと思う。

 口に残っているかもしれないが確認しない。

 拒否されたが報告しない。

 水分量が少ないが気にしない。


 これは危ない。


 分からないことがあれば、他の職員に聞く。

 服用拒否があれば報告する。

 むせ込みがあれば伝える。

 飲めたか怪しい時は確認する。

 いつもと違う時は相談する。


 新人に必要なのは、完璧な判断ではない。

 報告、連絡、相談である。


 投薬と水分補給は、地味に見える業務である。


 しかし、利用者の体調に直結する。

 飲み込み、拒否、むせ込み、口内残留、吐き出し、水分不足。

 どれも放置すれば問題につながる可能性がある。


 だから、雑に扱ってはいけない。


 投薬は、薬を渡す仕事ではない。

 飲めたかを確認する仕事である。


 水分補給は、飲み物を置く仕事ではない。

 実際に飲めているか、安全に飲めているかを見る仕事である。


 介護技術とは、このような小さな確認の積み重ねである。


 薬を飲めたか。

 水分を取れたか。

 むせていないか。

 口に残っていないか。

 拒否はないか。

 異変はないか。

 必要な報告はしたか。


 この確認が、利用者を守る。


 投薬と水分補給は、単純作業ではない。


 安全に飲んでもらい、飲めたことを確認し、異常があれば報告する。

 そこまで含めて、介護現場の大切な技術である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ