第24.5話「二人だけの雪」
それに気づいたのは、放課後の、教室だった。
僕は、忘れ物を、取りに、戻った。
誰も、いないと、思っていた。
ドアの、ガラス越しに。
二人が、見えた。
シルフィと、玲奈。
窓際の、シルフィの席。
玲奈が、その机に、腰かけていた。
シルフィは、座ったまま、玲奈を、見上げていた。
二人とも、何も、言わなかった。
ただ、近かった。
言葉が、いらないくらいに。
玲奈の、指が。
シルフィの、髪に、触れた。
雪を、払うみたいに。
でも、教室に、雪は、降っていない。
シルフィは、その手を、避けなかった。
いつも、僕が触れようとすると。
あんなに、冷たく、払いのけるのに。
シルフィは、目を、閉じた。
ほんの、少し。
甘えるように。
僕は、ドアを、開けられなかった。
忘れ物のことなど、どうでも、よくなっていた。
僕は、知らなかった。
二人が、いつから、そうだったのか。
シルフィが、いなくなる、前から、なのか。
それとも、帰ってきて、から、なのか。
分からなかった。
でも、一つだけ、分かったことが、あった。
シルフィが、僕に、冷たかった、理由。
ずっと、分からなかった、それが。
今、ガラス一枚、隔てた、向こうに、あった。
僕は、そっと、踵を、返した。
廊下は、静かだった。
窓の外で、雪が、降り始めていた。
今日も。
二人を、包むように。
僕の、入れない場所に。
そっと、積もっていく。




